「楽しい」をつくるセブンルール【後編】
仕事の「楽しい」をつくるためのルール、残りの4つに迫ります
仕事がどうしたら楽しくなるのか悩む子羊、クリエイティブディレクター伊藤澪奈子と名川実里がお送りする「楽しい」をつくるセブンルール 。
楽しそうに仕事をしている人には、きっとルールがあるのかもしれないーーそんな予感のもと、ロフトワーク社内でも特に案件を「楽しんでいる」印象がある、京都オフィスの小島 和人(通称:ハモさん)・服部 木綿子(通称:もめさん)のお二人のお話を聞き、「楽しい」をつくるセブンルール を作りました。
前編に引き続き、ハモさんともめさんにお話を伺いました。
話した人たち
迷える子羊1
伊藤 澪奈子
仕事や生活を楽しくするコツ:自分の好きなものを纏う。
メイクや服、ネイルや香水など、なんでも良いんです。なるべく毎日、なるべく多く、自分の好きなものを纏うことでモチベーションを上げています。
Profile
迷える子羊2
名川 実里
仕事や生活を楽しくするコツ:ちょっとの変化を発見する。
毎日、同じように感じる風景でもちょっとした変化を発見すると嬉しくなって、その日が楽しくなります。生活においても、仕事においても、ちょっとした出来事を楽しんでます
Profile
くだらないこと愛好家
小島 和人(通称:ハモさん)
仕事や生活を楽しくするコツ:勝手に誰かの未来を妄想して、物語をつくる。
「この人(会社)が〇〇したら面白そう。それがあそこと結びついてー」みたいに、とにかくお節介に「勝手に妄想した未来」を提案するのが好きです。
Profile
ええ空気醸造家
服部 木綿子(通称:もめさん)
仕事や生活を楽しくするコツ:「これは、私のおまけの人生」が心のお守り。
一度エンドロールを迎えた物語のその後を演ってると思っています。その実、責任感強めの性質で自己犠牲感に陥りやすいので、これは力を抜く魔法の言葉。
Profile
企画:伊藤 澪奈子、名川 実里
執筆:伊藤 澪奈子
編集:鈴木真理子
楽しくないことをやり続けるなんて、そんな根性はもうないです
伊藤 ちょっと話が変わるんですが、楽しさって意識してつくるものなんですか。それとも無意識的なもの?
もめ 私は楽しくないことをやり続けるなんて、そんな根性はもうないです(笑)
楽しくなくなったら、辞めちゃうと思うので楽しくやろうとはしていますね。私が楽しいと思うのって、人との繋がりができていくことだったりするので、誰かと誰かの繋がりができていったり、一緒にプロジェクトに取り組んでいる人が楽しそうにしていたり、これまでの人生に出会ってきた人とまた一緒に仕事ができる瞬間とか、わりと私は楽しさの基準はそういうところにあるので、そういう風にもっていこうとはしますね。
伊藤 一緒にプロジェクトに取り組んでいる人が、楽しくなるようにしていることってありますか。
もめ すごい些細なことだけど、「ありがとう」とか感謝や喜びを伝えることは、ちゃんとしようとは思いますね。当たり前だけど、気持ちよく仕事してもらいたいんです。
例えばASNOVAさんのプロジェクトで「くらしを”軽やか”にするプロダクト」を開発していたんですが、クリエイターのみなさんが、お願いした以上に凄く高いクオリティで仕上げようとしてくれたんです。そこまでやってくれたことに対してほんとにおかげさまでこんなに素晴らしいものができたっていうのを、ちゃんと伝えたいっていうか。お金払ったんだから、ここまで仕上げて当たり前みたいな空気は絶対にしたくないです。
ハモ 善意を搾取したくないですよね。
もめ そうです。そこは一歩間違えたら、搾取みたいな感じになってしまう。私自身、苦手なところを、色々な人にたくさん助けてもらってる。例えば手先が全然器用じゃないから、手先が器用なディレクターに制作を手伝ってもらったりする。でも手伝ってくれた人は、自分に関係ない仕事をしてくれてるわけじゃないですか。当たり前だけど本当にありがたいなって気持ちは伝えたいし、逆にお願いされたらちゃんと応えたい。そういう繋がりが一番楽しい。だからいつも気持ちを言葉にして伝えるようにはしています。
オフィスでは、1日のうちにアホなことを1時間くらい言わな耐えられへん
もめ 気持ちよく仕事してもらうには、話しかけやすい空気みたいなのは特に大事ですね。どんなに忙しくても、ハモさんは声をかけると、なんでも答えてくれるし、すごく話しやすい。それを見て私もいつ話しかけて大丈夫だよって雰囲気を心がけるようにしようと。ちょっと話せば一瞬で解決することなんか死ぬほどあるし。
伊藤 私も、ハモさんはすっごい声をかけやすいなと思ってました。ハモさんは、それって意識してるんですか。
ハモ これ僕が声をかけやすいんじゃなくて、僕自身が普段みんなにすごい声をかけるタイプだからだと思うんですよ。無意識に気楽に話しやすい人っていう印象がつくんじゃないかなって。渋谷オフィスに行ったら、目を合わす人を探してるんです。バーーーっと歩き回って、目合ったらワーーッと寄って行って雑談はじめちゃう感じ。オフィスでは、1日のうちにくだらない会話を1時間くらい言わないと耐えられないですね。
もめ リモートワークだと、チャットの雑談も自然と増えるんだけど、普通のチャットだと意識高い話題も多くて。そしたら、しょーもないことを言っても大丈夫なチャンネルをハモさんが作ってくれた。
ハモ 「kudaranai」っていうやつね。ここはくだらないことしかアップしちゃ駄目ってルール。
名川 真面目なことはNGなんですね。
伊藤 何ですか、それ。入りたい。
ハモ くだらないことばっかり。全然クリエイティブじゃない感じの面白い記事上げたり。僕はZoomで面白いシーンスクリーンショットして上げたりしてる。適当なものをアップしたくなるのは僕の病気みたいなかんじ(笑)
伊藤 めちゃめちゃいいですね。
ハモ クリエイティブを活かそうと思ったら、やっぱりそれ以外のことを知らないと活かしきれないと思う。賢いことばっかり言ってると人間ダメになる。
伊藤 わかります。最近仕事中に結構遠くまで散歩することがあるですが、そこでプロジェクトに使えるヒントがゴロゴロ転がっていて、今まで何でしてなかったんだろうって思うぐらい。一見くだらないことも大事ですよね。
くだらないトークから、だいたいプロジェクトは広がっていく
ハモ 僕は、クライアントともくだらない話をしたい。ワークショップの合間とかでくだらない話を振っていきまくったりしてます。くだらないトークから、結構プロジェクトって広がっていくんですよね。「こんなことしたいっすよね」ってセンスメイキング的な発想でパスがつながるタイミングなんですよ。
伊藤 くだらない話をすることでその人のパーソナルな部分がちょっと見えやすくなるのかな。その人の性格だとか、実はこういうことがしたいんだよねとかも。
ハモ 緊急事態宣言より前は、クライアントと飲みに行くメンバーも多かったですよね。週3ぐらい行ってたよね、多分。
もめ バンドー化学さんとのプロジェクトでは、めちゃくちゃ行ってたよ。昼ごはんも食べるし、夜も飲むし。未だにプロジェクト終わって1年経つけどまだ関係は続いてるから。それは多分相手のことを好きになって、受発注だけの関係性を超えた感じですよね。
伊藤 ご飯食べながらって意外と重要ですよね。社内イベント「スナックみなこ」を開催してるんですが、お酒片手に話す場って普段よりも打ち解けやすいというか。社内でスナックをすると仕事場からスナックまでの距離はめちゃめちゃ近いけど、仕事のときよりもプライベートな会話にすぐ入れる感じ。
もめ 一緒にプロジェクトをやっている社内メンバーと、そういう場があると、色々相手のことがわかるじゃないですか。私も今、渋谷と飛騨と京都の3拠点プロジェクトがあるんだけど、リアルに会ったことなかった人がほとんど。普段、どんな感じで生きているのか分からないから、まずは私から「自分はどういうスタンスの人か」っていうのをSlackに書いてオープンにしあえるようにしました。
私は子どもがおるから5時半までしか仕事できなくて、出張は絶対できひん。自分のプライベートなとこまで侵食されるような仕事の組み方はしたくない、ってことを分かってもらわへんと、気持ちよく働けない。でもそれって人それぞれじゃないですか。家庭の事情とか人生のフェーズとか。だからこそオープンにしたいっていうのはありますね。分かってもらった上で配慮しながらチームワークを作りたい。
ハモ いいですね。自分のスタンスをまず知って、自分から伝えるってやってそうでやってないですね。
伊藤 確かに、いつでも自分のスタンスを伝えられるようにしておくのも大事ですね。
決まったことをカッチリこなす以上の何か
伊藤 ハモさんともめさんが、特にこれは楽しかったというプロジェクトはありますか。
もめ バンドー化学さんは楽しかったね。とにかくハイボールが好きなメンバーがいたので、ワークショップをやったときも、完全に昼やけど振りでハイボール用意してたとか(笑)
ハモ ワークショップの設営も、もめさんがすごいパワー発揮してましたよね
もめ それが良かったかは分かんないけど、旅館でお客さんをお迎えするスタンスで、習字で「〇〇様御一行」みたいなやつを書いてみたりとか、エジソンってあだ名の人がいたらから、FabCafeの刺繍ミシンでエジソンののイラストを刺繍してオリジナルTシャツを作ってプレゼントしたりとか。これは完全に私の思いで勝手にやってました(笑)。あとは相手のコーポレートカラーの色の服を着て打ち合わせにいくとか。飲み会のときもそれぞれで盛り上がってるときに、お互いに熱くなって良いことを語り出してたから、こっそり私が付箋で書いて、後から共有してあげたり。
ハモ バンドー化学さんのワークショップにしても、ASNOVAのパルクールイベントにしても、面白がってノリでやるみたいなところが重要だったりしましたよね。
もめ 京都のマーケティングメンバーをちょっと巻き込んで、得意な手芸でポスターの中のキャラクターのぬいぐるみを作って当日イベント会場に持ってきたりとか、余計なことばっかりしてました(笑)
ハモ Slackに僕が適当なことを書いてたら、それをほんとに作っちゃってたみたいな。
伊藤 でもそういうものほどテンション上がりますよね。
もめ 単純に楽しいからやる。そういうちょっとくだらないことをやっていると、決まったことをカッチリこなす以上の何かが生まれてくるときがある。それがまた楽しいですね。
おわりに
- ルール1:ツッコんで良い弱みを見せる
- ルール2:完璧なリーダーを目指さない
- ルール3:「1人の人間」まで戻してみる
- ルール4:気持ちは言葉にして伝える
- ルール5:くだらないことこそ大事にする
- ルール6:自分のスタンスを伝える
- ルール7:ノリ(直感)を大切にする
実際の業務とは一見関係ないように見える、今回の7つのルール。
ただ、その「関係ない」と思っていることこそが、プロジェクトを進める上で重要な潤滑油になっていることが分かりました。「これ、業務と関係ないんだけど、やったら笑顔になるよなぁ」「冗談言ったら変な空気になるかな」そんな壁を乗り越えて「人間」と「人間」の関係をクライアントと築いていく。そこに楽しさの秘訣が潜んでいることを、ハモさんともめさんとお話して気づくことができました。
みなさんも是非、自分の仕事やプロジェクトに取り入れてみてください!
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