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松本 亮平 2019.03.06

抽象度の高い「香り」にどう挑む?
ロジカルなステップで言語化するアロマワークショップ

昨今、ストレスを軽減したり、パフォーマンスを効率化するため、ひとが本来持つ五感の性質を利用した、複合的な機能を持つ空間づくりが行われています。

嗅覚、味覚、触覚など抽象度の高い「感覚」をいかに言語化し、可能性を引き出すのか。街づくりからオフィス空間のプロデュースまで手がけるLayout unitが企画したアロマワークショップから、その方法を「へいへい」こと、松本亮平がお伝えします。

Layout unitの松本です。その空間に適した香りは「コレだ」と相手に伝えたいとき、あなたならどんな言葉で伝えますか?

「自分たちが働く空間をアロマでデザインする」というチャレンジを、アロマ空間デザインを得意とする@aromaさんとコラボレーションして3/18に「クリエイティブミーティング」という社内イベントで実験しました。

自分の直感や感性を大切にし、表現する

嗅覚はひとの記憶や感情に働きかける影響度が、視覚にの次に大きい重要な感覚と言われています。1つ目のワークでは、あらかじめブレンドされたオイルを4種類嗅いでそれぞれの香りの名前を考えて言葉にすることに挑戦しました。ワークシートを活用しながら、自分の直感に従って同じチームのメンバーにその香りの印象、機能、カラーイメージを伝えます。

ここはロフトワーカーの腕の見せどころ。各々が持つあらゆるイマジネーションの引き出しを駆使して、抽象的な香りのイメージを言語化して相手に伝えます。ディレクターがコンセプトづくりでよく駆使するメタファー(隠喩表現)をたくさん繰り出します。

「貴婦人ぽいかな。メリル・ストリープのイメージ!」

「これは青いっていうか、若い男の子だね。1度失恋経験していると思う」

「新宿3丁目19時」

会場で注目を集めたアロマのネーミングは、自分の生活の身近なシーンを切り取った表現や、誰もが知る固有名詞を活用したものが多かったです。「あ〜わかるわかる!」。どうやら、香りの印象から連想するシーンが「自分ごと化」しやすいと、皆しっくりくるようです。

もう一つ言語化のうまいチームの特徴は、出すキーワードの量です。ワークシートの中に、香りから連想するキーワードを書き込む欄があり、内容が非常に豊かでした。

たくさんキーワード出すことは、伝えづらいものを言語化する際のもっともシンプルな方法ですね。一人ひとりが考えるメタファーが、キーワードとしてたくさん出揃ってそれぞれのキーワードとキーワードの間に共通項が見えてくる。それをさらに文章に統合したり、キャッチコピーとして魅せる表現を考えることで、伝えたい内容の本質が凝縮されていきます。

コンセプトをロジカルに組み立て、語り、相手をワクワクさせる

2つ目の実験は、実際に空間に合う香りを考えるワークです。ロフトワークは、1Fのものづくりカフェ「FabCafe」、2Fの素材をテーマにしたワーキングスペース「MTRL」、3Fのプロジェクトルーム「COOOP3」など、機能が違うフロアで構成されています。各チームに違うフロアを割り当て、それぞれの空間に合う香りのコンセプトを考え、アロマオイルの調合していきました。

ワークは5つのステップで進めました。

  1. その空間にはどんな特徴があるのかリサーチする
  2. 使用するオイルの香りとその効果をインプットする
  3. 作りたい香りのコンセプトを整理する
  4. ブレンドする香りを決めて、レシピを検討する
  5. 香りの印象を検証しながら調整する

あれ?これどこかで聞いたことがあるようなステップ……。ロフトワークとプロジェクトをご一緒した方は、お気づきかもしれません。

このステップ、ロフトワークのディレクターがプロジェクトを進行する基本的な流れと非常に似ています。ロフトワーク的にすごく簡単に翻訳するとこんな感じでしょうか。

  1. 与件を整理する(+フィールドリサーチ)
  2. 専門領域の知見をインプットしてトレンドをリサーチする
  3. コンセプトを策定する(目指すゴールの意識合わせ)
  4. 制作物を定めて骨子(設計書)を作成する
  5. 素早くプロトタイプを作って、試して、検証のサイクルを高速で回す

「香り」という抽象度の高いものであっても、論理的なステップを踏むことでより「納得感」と「説得力」のあるコンセプトが出来上がります。

ワーク中の1コマ。写真奥の白衣を着ている方が@aromaのアロマ空間デザイナーさんです。ロフトワークのメンバーが積極的にアロマの情報を聞きに言っていることがわかります。

人に響くコンセプトとブレンドアロマを調合するためには、調合する前の情報のインプットが欠かせません。その道のエキスパートに直接教えを請うことは成功の近道ですね。

最後はそれぞれのチームで調合したアロマオイルを並べて嗅ぎ比べ。同じ空間をテーマに取り組んだチームでも、コンセプトと香りがまったく違う点が今回の実験の面白いところです。違っていることよりも、その空間に合わせて考えたコンセプトと、それに対応する香りが「最適だ」「確かにこれは空間とマッチしそう」と感じられるかどうかが評価のポイントです。

いかがでしたか?

ロフトワークは、こうして「表現の難しい価値」や「世の中の認識されていない価値」、に着目して、それを言葉にすることに日々チャレンジしています。言語化とコンセプトづくりまでの道のりは険しいですが、人に伝えられたときの感動と共感はひとしおです。

Layout unit では、こうした空間デザインへの多角的なアプローチを日々実験しながら取り入れています。「まだ世に出るまえなんだけど……実験できないかな?」とお考えの方はぜひLayout unit までご相談ください。

Credits

アロマワークショップ監修:

@aroma
https://www.at-aroma.com/

ドリンク:

Cafe Company x 100 BANCH Projects
100BANCHのプロジェクトより

shiitake matsuriのお出汁 meets 焼酎
http://100banch.com/projects/shiitake/

The Herbal Hub
http://100banch.com/projects/the-herbal-hub-to-nourish-our-life/

フードケータリング:

Food Waste Chopping Partyを主宰するEarthommUnity 大山貴子さん
http://100banch.com/projects/food-waste-chopping-party/

松本 亮平

Author松本 亮平(Layout Unit シニアディレクター)

関西学院大学卒。学生時代には途上国開発や国際問題を学びながら、アメリカのNGOの海外住居建設プログラムに参加し東南アジアを歴訪。卒業後は大手オフィス家具メーカーに就職し、オフィスワーカーの働く環境改善や提案に奮闘。クリエイティブが生まれる環境を自ら創造していきたいと、2014年ロフトワークに入社。Webディレクションで培ったプロジェクトマネージメントの力を基盤に、共創空間、クリエイティブ空間のプロデュースに従事。国内外問わず、あだ名は「へいへい」。

Keywords

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複雑な世界で未来をかたちづくるために。
いま、デザインリサーチに求められる「切実さ」を問い直す