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伊藤 望, 小檜山 諒, 東郷 りん, 柳川 雄飛 2020.08.28

在宅ワークHackのアイデアで見えた
わたしたちが望む働く場と環境
(未来仮説レポート 無料公開)

コロナ禍をきっかけに在宅ワークやリモートワークなどを選択する人が増え、働く場所や働く環境に対する人々の考え方が大きな転換期を迎えています。今、ワークプレイスには何が求められており、今後どのように変化をしていくのでしょうか。

ロフトワークは、2020年4月に自宅での仕事を快適にするハックアイデアを募集するアワード「Work from Home Hack Award(WFHH)」を開催。集まったアイデアをもとに、アワードを企画した4名のロフトワーカーがディスカッションを行いました。そこで話し合われた、私たちの働く場所と環境に関する3つの「変化の兆し」を紹介します。

執筆:吉澤 瑠美
編集:loftwork.com編集部

 

お知らせ:自宅勤務のハックアイデアから見るこれからの働き方「未来仮説」レポート無料配布中

記事の後半で、在宅ワークが広がったことでどのような変化が起こるかを、クリエイターのアイデアから分析した「未来仮説」レポート(PDF)を無料ダウンロード配布しています。ぜひ、こちらもご覧ください。

WFHH 企画メンバー

左から順に、柳川 雄飛(プロデューサー)、東郷 りん (クリエイティブディレクター)、伊藤 望(クリエイティブディレクター)、小檜山 諒(AWRD CCO)

暮らすための空間をハックして、最適なワークスペースをつくりたい

アワードに応募されたアイデアの中でも複数応募されていたのが、暮らすための機能と長時間集中して作業するための機能を両立する空間ハックのアイデア。

たとえば、押入れをデスクにするというtakchasoさんのアイデアは、SNSでも話題になりました。日本の住居ならではの収納スペースを活用することで、いつもの住環境にワークスペースを生み出しました。また、三方を囲まれた薄暗い空間が集中力を高めるという点にメリットを感じる人も多かったようです。

takchaso「押入れをデスクとして使う」

U39さんからは、バスルームを仕事場としてハックする驚きのアイデアが。周囲では、家族やパートナーと共同生活を送る中で、自宅に個別の仕事場を複数設けることは難しく、気まずい思いをしたという声もちらほら。U39さんのアイデアは、どこの家にもあるバスルームの空間をワークスペースにすることで問題解決を図りました。

U39「WORK FROM BATH」

これらのアイデアの背景には、都市部の住宅事情ならではの課題が見えてきます。つまり、限られた面積に決められた間取りを当て込んだものが多く、柔軟性に乏しい空間であること。それゆえに、これからはだれもが自宅スペースをハックし、既存の空間のカスタマイズが容易にできるようなプロダクトやサービスに注目が集まりそうです。

仕事とプライベートがシームレスに繋がる場所で、オン・オフのスイッチを切り替えたい

在宅ワークへの対応を半強制的に迫られた結果、多くの人が仕事とプライベートの境界が曖昧になることを経験したのではないでしょうか。このことにストレスを感じたクリエイターたちから、仕事のオン・オフを切り替えるための工夫が多く提示されました。

たとえば、簡易的な屏風で空間を仕切り、仕事とプライベートを切り離すアイデア。仕事が終われば屏風を畳んで、すぐにいつもの生活空間に戻すことができます。

「テレワーク屏風」

クリエイティブスタジオ Whatever Inc.が手掛けた『WFH Jammies』のバストアップだけシャツに切り替えられている部屋着というアイデアは、自宅で仕事着を着る窮屈さから開放されつつ、オンラインミーティングの最にはビジネス仕様で参加できるという「都合の良さ」に注目が集まりました。

なお同社は、WFH Jammie の商品化に向けて、Kickstarterでクラウドファウンディングを実施したところ、80人を越えるバッカー(支援者)によって目標金額を達成。現在、同社がWTFC Inc.、fermata Inc.と共に運営する未来の日用品店「NEW STAND TOKYO」で販売しています

Whatever Inc,「WFH Jammies」

これらのアイデアからロフトワーカーが議論を深めるうちに、仕事とプライベートのオン・オフをきっちり分けたいタイプと、特に切り替えをせず流動的な状態を良しとするタイプが存在するのではないかという視点が出てきました。前者にとっては、在宅ワークには多くの課題がありそうです。また、何によってスイッチが切り替えられるかは、さらに個人差があるでしょう。

単一のプロダクトによって全員に向けた解決策を提示するのではなく、細分化されたニーズに個々に対応するサービスやプロダクトが必要とされそうです。また、自分のオン・オフ切り替えスイッチが何なのかユーザー自身が把握できる診断サービスのようなものがあれば、その結果からより具体的なニーズを発掘することができるかもしれません。

リモートでも、仲間と仕事へのモチベーションを共有したい

Work from Homeの期間中は、同僚とのコミュニケーション機会が失われたことで、仕事に対するモチベーションが低下したという方も多いのではないでしょうか。今回、オフィスにいるときのような何気ない雑談や、同僚と一緒にいる感覚を再現するアイデアについても議論が展開されました。

ロフトワークのメンバーが膝を打ったのは、MIKOARAさんが考案したフェイクの猫のしっぽ。オンラインミーティングは集中力が高まる反面、余白やあそびが生まれにくいもの。この猫のしっぽは、意識的に脱線を発生させることで、互いにとって想定外の「コミュニケーション」を生み出そうとする試みです。

MIKOARA「画面越しの猫」

さらに、ロフトワークのメンバーからも雑談や他者のざわめきが聞こえない在宅ワークに違和感を覚えたというエピソードが挙がりました。

ディレクターの伊藤は、喫煙者の立場から「喫煙所で人に会わなくなったことがつらかった」と振り返ります。喫煙所で会った人とちょっとした雑談をすることが、仕事をする上での刺激になっていたのだと理解したのです。そこで、伊藤はボイスチャットツール「Discordを使用。同僚と音声をつないだ環境で業務に取り組むことで、少しずつ「つらさ」が解消されたといいます。

他方、ディレクターの東郷は、チーム内の進捗報告として始まった毎朝のビデオミーティングに雑談コーナーを設けたことで、お互いの関心事を共有する場が生まれたと話します。結果として、それが読書会や勉強会といった新しい課外活動に発展しました。東郷は、「以前より、チームメンバーの動きや個々人の強みを認識できている」と振り返りました。

私たちはオフィスで出会う同僚に対して、各々の職務上の役割だけでなく「同じ目的を共有する存在」という精神的なよりどころを求めていたのかもしれません。Work from Homeが常識となった世界では、働くモチベーションのよりどころとなる同僚とのつながりを、オンライン上で代替できるようなソリューションが求められるのではないでしょうか。

Work from Home Hack 未来仮説レポート(無料ダウンロード)

これら3つの「変化の兆し」について、コロナ禍以前からリモートワークを推進していたIT系企業やフリーランスなど、一部の人々にとってはすでに馴染みのあるテーマかもしれません。しかし、より幅広い業種において在宅ワークやリモートワークが浸透し、多くの人がこれらのテーマと向き合うことで、新しい市場が生まれる可能性があります。

ロフトワークのメンバーは、これらの議論をきっかけにさらに考察し、具体的に想定される新たな市場領域を解説する未来仮説レポートをまとめました。ぜひご一読ください。

未来仮説レポート報告会、9/29に開催!

9月29日、『FUTURE HYPOTHESIS REPORT by loftworkー「在宅ハックアイデアから考察するこれからの働き方」』に関わったリサーチメンバーが公開報告会を行います。

調査テーマの設定背景から全体のプロジェクトデザイン。アワードの仕組みを活用したアイデア公募から認知施策、審査、未来仮説の抽出までの一連のプロセス。抽出された3つの未来仮説にみるこれからの働き方と働く場の談義まで。参加者の皆さまとも議論します。ぜひご参加ください。

FUTURE HYPOTHESIS REPORT by loftwork ー「在宅ハックアイデアから考察するこれからの働き方」4つの未来仮説とプロセス紹介

開催日 2020年9月29日 14:00-16:30
定 員 第一部 トークセッション 100名
    第二部 ミニワーク参加 15人 
参加費 無料
配 信 Zoom
対 象 
・新規事業、新サービス創出の責任者及びご担当者
・オンラインを中心に機会領域の発掘や新規事業創出プロジェクトを進めていきたい方
詳 細 https://loftwork.com/jp/event/20200929wfhh

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対話を重ねる、外の世界に触れる。
空間に魂を吹き込む、オフィスリニューアルの軌跡