近畿大学 PROJECT

施設と連動するWebサイトを再構築
近畿大学の実学教育施設「アカデミックシアター」

Outline

検索機能の拡充ではなく、図書館に足を運ばせるWeb設計

近畿大学が2017年に設立した実学教育のハブとなる施設「アカデミックシアター」。日本語で「知の劇場」と訳されるこの施設のミッションは、学生、企業、地域が交わり、新しい実学を実践すること。ロフトワークは2018年から、パートナーとして、施設の目的実現に向けて、リアルの場のデザインとオンラインコミュニケーションの両面から、仕組みのデザインや情報設計を支援しています。第1弾として実施したのが、「ACT EX」という、学生たちがプロジェクトを自走させるための仕組み作り。ACT EXのWebサイトは閲覧数がリニューアル前の10倍に上昇。学生たちが実学を実践するためのプラットフォームとして育っています。

第2弾となる今回は、それまで別々に作られていたWebサイトをひとつに集約・リニューアルするとともに、「近大INDEX」という、書籍検索サイトのあり方を情報設計から見直しました。施設の目的に立ち返ることで、機能拡充ではなく、実際の施設と連動した情報設計を行うとともに、回遊性の向上と、運用負荷の軽減を実現しました。

プロジェクト概要

  • 支援内容
    要件定義、情報設計、デザイン、コーディング、開発、コンテンツ制作、コンテンツ移行
  • プロジェクト期間
    2020年3月〜2020年9月
  • プロジェクトメンバー
    クライアント:近畿大学アカデミックシアター
    プロデューサー:藤原 里美
    プロジェクトマネージャー:国広 信哉
    ディレクター:長野 彩乃、南歩実
    テクニカルディレクター:伊藤 友美
    Webデザイン:鈴木 人詩(ADRIATIC)
    コーディング:坂田 一馬(タクマデザイン)
    CMS開発:ネクストページ
    移行:ソフトネクスト
    校正:村上 大輔、原田 美穂子
    写真撮影:小椋 雄太(あかつき写房)

Outputs

近大アカデミックシアター

アカデミックシアターの機能ごとに別々に作られていたWebサイトをひとつに集約。アカデミックシアターの目的や今どんな活動が行われているのかが一眼でわかるデザインにするとともに、回遊性の向上と、運用負荷の軽減を実現しました。

近大INDEX

近大INDEXの思想である、学生と本の偶然の出会いを実現するWebサイトを設計・デザイン・構築しました。

Points

分散したWebサイトを統合し、効果を最適化する

近大アカデミックシアターでは、学生たちが地域や企業と関わりながら実学を実践していくため、3つの施設を中心に構成されています。まず、興味の入り口として本と出会う「BIBLIO THEATER」(以下ビブリオシアター)という図書館。そして、それぞれの興味関心をきっかけに仲間を集めプロジェクトを作るスペースとしてACT、そして、それらを実験・実装する場所としてものづくりスペース(2021年春頃公開予定)です。

当初、これらの施設に付随して2つのWebサイトが運営されていました。学生と書籍の出会いを生み出す「近大INDEX」と、学生たちのプロジェクトを可視化し、繋がりを生む「ACT EX」です。2018年、学生たちが自走できる仕組みとして「ACT EX」のWebサイトをリニューアルしたことで、学生たちの活用が広がり、閲覧数も10倍に伸びましたが、近大INDEXもACT EXも、アカデミックシアターのメインサイトとは別に単独で作られていたため、アカデミックシアターのWebサイトの閲覧には繋がらず、効果を最大化できていませんでした。

そこで今回、施設のミッションに基づいてWebサイト全体の情報設計を見直し、分散していた3つのWebサイトをひとつに統合しました。まず、アカデミックシアターという場所自体の意義や目的を棚卸しし、それぞれの機能がどう関わることが必要か、そのためにWebサイトをどう設計する必要があるかを定義しました。その上で、分散していたWebを統合することで回遊性を高め、アカデミックシアターの認知度向上を目指しました。

ビブリオシアター

"偶然の出会い"は検索では生まれない

アカデミックシアターの主な施設のひとつにビブリオシアターと名付けられた図書館があります。「近大INDEX」という、近大独自の分類法によって7万冊の書籍がタイトリング・選書されています。

しかし、「近大INDEX」のWebサイトについては、かねてより学生たちにコンセプトを理解してもらえていないという課題がありました。(実際、本プロジェクトの事前リサーチで、学生が「近大INDEX」を使っていない実態やその理由も明らかになりました)そこで、学生たちと本との「出会い」をどうデザインするか再検討し、「Webで検索できる」ことではなく、「ビブリオシアターへ誘導する」という役割を明確化、その目的に応じた機能とデザインを実装しました。

ポイントは、近大INDEXの役割や意義を「検索力」ではなく、「ビブリオシアターへの誘導」にシフトさせたことです。

リニューアル前の近大INDEXには、偶発的な出会いをデザインするための仕掛けとして、AIが本を推薦してくれるコンテンツがありましたが、アプリ内で完結してしまい、学生たちもビブリオシアターに足を運んでくれないという悩みがありました。そこで、検索の機能を高めることで、効果を上げたいという相談をいただきました。

リサーチや対話の中でロフトワークが提案したことは、「近大が目的としている“本との偶然の出会い”は検索ではなく、実際に図書館に学生を行かせることで実現するのではないか?」ということでした。なぜなら、検索をするためにはすでに目的があるはずで、本との偶然の出会いとは矛盾してしまうからです。また、Webサイトだけで機能を完結させてしまうと、合理的ですが、偶然に本と出会うということが起きにくくなってしまいます。そこで、近大INDEXの1番の目的を「学生を本棚の前に行かせる」に置き、学生たちにとって何かしらピンとくる言葉が目につくようにすることが最も必要な要素だということを明らかにしました。

Point 1:写真の撮り下ろし

Webと施設を連動させるため、現地への誘導として、ビブリオシアターのサインの写真を全部取り直して各ページに掲載。図書館内のどこにあるか、場所についても詳しく記載することで、実際に学生たちがビブリオシアターに足を運びやすくなるよう設計しました。

Point2:回遊性を向上させるカテゴリー

近大INDEXの分類は、実学的・文理融合的な文脈によって分類されたNOAH33(ノア33)と、マンガを中心に新書・文庫によって構成されたDONDENという、大きく2つの分類があり、それぞれの大分類ごとに細かく書籍が分類されています。それぞれ、前後の項目とも関連があるため、各詳細ページからも前後のカテゴリーにいけるよう、導線設計がされています。

Point3:二重運用の負荷を下げる

今回のリニューアルまで、本が追加されるタイミングで近畿大学中央図書館のデータベースとと近大INDEXの2箇所を更新するというタスクが発生していました。今回、近大INDEXの目的を「本当との偶然の出会い」という役割に絞ることができたため、検索と借りる機能は近畿大学の中央図書館のデータベースに集約させることに。運用的にもシンプルになり、ミスが起こる可能性を回避すると共に、運用負荷も大幅に軽減することができました。

Member

寺本 大修

寺本 大修

学校法人近畿大学
アカデミックシアター事務室

平山 奈央

平山 奈央

学校法人近畿大学
アカデミックシアター事務室

藤原 里美

株式会社ロフトワーク
シニアプロデューサー

Profile

長野 彩乃

株式会社ロフトワーク
マーケティング

Profile

国広 信哉

株式会社ロフトワーク
シニアディレクター / なはれ

Profile

南 歩実

南 歩実

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

伊藤 友美

株式会社ロフトワーク
テクニカルグループ テクニカルディレクター

Profile

メンバーズボイス

“施設のWEBを作るということは、施設の特徴だけでなく、価値を対外的に言語化して説明することだと再認識しました。今回のWEB再構築を進める中で、アカデミックシアターが学生、教職員、関連企業の皆様に何を価値として提示するのかを、もう一度深く見直すことが出来ました。”

学校法人近畿大学 アカデミックシアター事務室 寺本 大修

“今回WEBサイトをリニューアルすることで、アカデミックシアターの機能、目的を見つめ直し、実際の施設と連動したサイトができました。
アカデミックシアターがもつ機能、そこで生まれる熱い思いが多くの人に届き、新たな価値を創出できる場、学生のやってみたい!を応援できる場でありたいと思っています。 ”

学校法人近畿大学 アカデミックシアター事務室 平山 奈央

“今回のWebサイトでは、学生が「本との偶然の出会い」を果たすために、「学生を本棚の前に行かせる」という方針のもと、リニューアルを行いました。Webサイトや各施設や特徴を考え、それぞれの役割を発揮するためにどうしていくのかをWebサイトで表現していきました。
学生の持つ熱い想いを、様々な形で発散することのできるアカデミックシアターの3つの機能。横断的に各機能を利用できることを、Webサイトを通して学内に認知してもらうことで、より素敵なプロジェクトが生まれ、発展していくことを楽しみにしていきます。”

株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター 長野 彩乃

“「Webサイトのリニューアル」というご相談をいただくと、「機能強化」という側面がついてくることが多くあります。もちろん運用負荷軽減やユーザーの利便性向上は重要な視点ですが、これだけに囚われると、本来の目的を見失ってしまうこともあります。今回のプロジェクトでは、前段で「アカデミックシアターの価値をどう伝えるか」を議論できたことで、機能強化だけではないアプローチにたどり着けたと思っています。
今回の複数サイトの統合リニューアルで、情報発信の基盤が整いました。今後は、さらに加速していく産官学連携プロジェクトでもご一緒できることを楽しみにしています。”

株式会社ロフトワーク プロデューサー 藤原 里美

Keywords

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学生が自走する仕組みをデザイン
実学教育のプラットフォーム「ACT EX」