
アワードとスクールを通じて、世界のVR/AR新潮流をリード
NEWVIEWのグローバル戦略
Outline
現在、世界の拡張現実(AR)と仮想現実(VR)市場は200億米ドル近くと推定されており、xR領域は、今後ますます拡大し続けることが見込まれています。さらに、2020年からの世界的なコロナウイルス感染拡大も影響し、xR技術の活用機会は従来のエンターテイメント領域を超えて、教育やビジネスソリューションまで急速に広がっています。
VR/AR/MRクリエイティブプラットフォーム『STYLY(スタイリー)』を開発する株式会社Psychic VR Labは、xRコンテンツ市場の拡大とプラットフォームの世界シェア獲得を目指し、2017年に株式会社パルコとロフトワークとの共同プロジェクト『NEWVIEW(ニュービュー)』をローンチ。xR表現に特化したグローバル・クリエイティブアワードを起点として、イベントや展示などを通じてコンテンツの作り手となるアーティストのネットワークを広げてきました。
2019年、NEWVIEWプロジェクトはさらなる展開として、新しいxR表現を生み出すアーティスト育成事業『NEWVIEW SCHOOL(ニュービュースクール)』とアワードを掛け合わせた施策を実施。アジア、アメリカのローカルコミュニティから、その取り組みの根を世界へと着実に広げています。
企画・執筆:Loftwork Global Team
Story
国産クリエイティブプラットフォームとして、世界市場を制するためのコミュニティ戦略
世界のアーティストを巻き込みながら、xRカルチャーの新潮流をリードする
新しい3次元体験を生み出すための実験プロジェクト/コミュニティとして誕生した、NEWVIEW。そのミッションは、グローバルアワード「NEWVIEW AWARDS」を起点に世界のアーティストと共にxR体験の可能性を拡張し、新しいムーブメントを創出することです。
NEWVIEWチームは、ロフトワークが運営するクリエイティブネットワーク「FabCafe(ファブカフェ)」と連携。アジアからヨーロッパ、アメリカ大陸まで広がるFabCafeのネットワークを通じて、世界にSTYLYコミュニティを根付かせながら、アート、カルチャー、ファッションの領域のxR表現を生み出しています。

「スクール」を通じて、新たな表現が生まれるエコシステムを形成
2019年、東京・京都で開講したNEWVIEW SCHOOLは、これまでにない体験をデザインする「総合芸術としてのxR」を学ぶ、新しい表現の学校です。xRの基礎技術や多様なアプローチを学ぶことができるほか、STYLYやUnity(ユニティ)*のトレーニングも行われています。
講師陣は、アート、音楽、建築、ファッションなどの業界でデジタル技術を取り入れてきたパイオニアたち。講義を行うだけでなく、実習として学生の制作物に対してフィードバックを行い、作品全体の質を高めるための指導を行いました。また、様々なジャンルのゲスト講師を招聘し、xRだけにとどまらない幅広い表現指導を行うことで、アーティストの育成に寄与しました。
*ユニティ・テクノロジーズが開発するゲームエンジン。モバイルゲームやパソコンゲーム、ブラウザゲーム製作などに用いる。

NEWVIEW SCHOOLプログラムの受講生は、その後ステップとしてNEWVIEW AWARDSへのエントリーへと進みました。結果として、受講生の中からファイナリストが選出されるなど好成績を収めたほか、アワード後もNEWVIEW コミュニティの一員として活躍を続けています。そして2020年、NEWVIEW SCHOOLは台北にも進出しました。

日本から台湾、そして世界のローカルコミュニティで活動の根を張る
NEWVIEWのコミュニティは業界横断的であるだけでなく、グローバルな観点からも多様性に富んでいます。2019年のNEWVIEW AWARDSの審査員は、アジア、アメリカ、カナダなど各国から集まったビジュアルアーティスト、映画監督、アニメーターなどで構成されました。
審査員のひとり、台湾のアートディレクター・映像ディレクターでクリエイティブスタジオ「Bito」代表のケン=ミン・リュー(Keng-Ming Liu)氏は、この多彩な審査員陣の顔ぶれについて「最先端のVR作品を審査するために、必要かつ最適なメンバー」だったと話しています。
リュー氏は、レッド・ドット・デザイン賞受賞経験を持つモーション・グラフィックス業界の先駆者です。彼が審査に参加したことで、日本と台湾のNEWVIEWコミュニティはさらに深く結びつきました。

台湾にNEWVIEWコミュニティが存在しているのは、偶然ではありません。NEWVIEWチームはFabCafe Taipeiを拠点として、台湾のアーティストに向けた『STYLY』のハンズオンワークショップから作品展示会といった一連の施策を実施。現地のアーティストコミュニティに活動の根を広げてきました。
NEWVIEWは同様のアプローチで、FabCafeのネットワークを通じて世界にコミュニティを広げています。2019年はメキシコのFabCafe Monterrey(モントレー)でワークショップを開催。3Dモデリングや建築のバックグラウンドを持つアーティストたちが、STYLYに触れながら作品制作する機会を創出しました。
Outputs
NEWVIEW AWARDS 2019 受賞作品
2019年に開催したNEWVIEW AWARDSでは、8カ国より、前年を上回る254作品もの応募がありました。Silver Prize(準グランプリ)を受賞したのは、日本の漫画やアニメのカルチャーから影響を色濃く受けた小江華あき《VRマンガワールド for STYLY》。そして、ワイアット・ロイ《Piece of String》、オノ夏キ《ne.mui》といった、VR空間における感覚や記憶と身体性の間に生じる分離や違和感を生かした作品でした。
2019年のGold Prize(グランプリ)は、小さな子供のオブジェや記憶、想像力で作られたVRランドスケープ《たっくんミュージアム》。審査員の一人であるルー・ヤン氏は、この作品について次のように述べています。「この作品は、特定の分野のための技術だったxRを民主化した」と評価しています。
NEWVIEW以外の場でも成功を収めたファイナリストもいます。映画制作者である伊東ケイスケ氏は、今回の応募作で第76回ヴェネチア国際映画祭への出展を果たしました。




Impact
8ヵ国
作品応募があった国の数
254作品
アワードへの作品応募数
Voice
株式会社Psychic VR Lab 執行役員 / CMO 渡邊 遼平

NEWVIEW Projectは、まだ見ぬ次世代の3次元(XR)表現・体験を開拓・拡張していくプロジェクトとして発足しました。「まだ誰も見た事がない景色を探す壮大な旅」と言えば聞こえはいいですが、実際には社内外から理解を得ることは容易でなく、2018年のスタート期は毎日が不安との戦いでした。
そんな中、プロジェクトに参画してくれたロフトワークの浅見さんは、我々の作りたい未来をすぐに理解し、信じてくれました。また、原さんをはじめとしたNEWVIEW Teamのみなさんも同様で、全員がフロンティア精神を持ち、プロジェクト初期から前のめりに攻め続けてくれました。おかげで、今では9か国から約150点もの多彩な表現の作品が集まる、グローバルなプロジェクトへと成長しました。
クライアントと受託という関係を超え、1つのチームとしてご協力いただいたこと。また、プロジェクトをともに育ててくれたこと。ロフトワークのみなさんには、感謝してもしきれません。当初は「誰の力も借りず、全て自社の力でやればいい」と考えていましたが、今では欠かせない存在です。
ただ、まだ道半ばです。新しいライフスタイル・文化作りのために、引き続きご協力よろしくお願いします。
Member

渡邊 遼平
株式会社Psychic VR Lab
執行役員 / CMO

八幡純和
株式会社Psychic VR Lab
Creative Director, Senior Engineer

Discont
株式会社Psychic VR Lab
VR空間デザイナー

安藤 寿一
株式会社パルコ
デジタル推進部

冨田 真依子
プロデューサー

浅見 和彦
株式会社ロフトワーク
シニアプロデューサー

安藤 大海
株式会社ロフトワーク
テクニカルディレクター
Platform
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