沸騰都市展 Y/Our Climate Exhibition
Outline
FabCafe Tokyoで開催した「沸騰都市展」は、熱中症、猛暑、暑熱、気候リスクといった都市の喫緊の課題をテーマに、微気候(Microclimate)、都市気候、気候適応の視点からこれからの暮らしと都市のあり方を考える展示です。公園や建物のまわり、通勤路や商業施設など、都市に点在する小さな気候の差異に目を向けることで、気候変動を身体スケールから捉え直し、産業・社会レベルの実践へつなげることを試みました。
本展は、2025年夏に実施したビジネスプログラム「Y/Our Climate」の対話とリサーチの成果を公開する場として企画されたものです。企業、行政、研究者、アーティストが集い、講義やワークショップ、フィールドワークを通じて、変化する都市の気候にどう適応し、どんな未来を描けるのかを協働で探ってきました。
Heat is the New Normal
こうした問題意識の背景には、暑さへの向き合い方そのものを更新せざるを得ない、社会の大きな変化があります。熱中症や猛暑、暑熱による気候リスクは、もはや一時的な季節課題ではありません。40℃級の暑さを前提に、都市のあり方や住まい、働き方、事業の判断基準そのものが変わり始めています。ここでは、そうした変化を示す最近の動きを紹介します。
猛暑対策に「日陰戦略」策定へ 東京・品川区が来年度から、都内初(朝日新聞)
【2026年夏予報】40℃以上の「酷暑日」は何地点?企業が押さえるべき判断ポイント(酷暑レポート Vol.1)(Whether X)
暑すぎて「北向き住宅」の人気上昇 日当たり良すぎ「南向き」敬遠 家賃も安くてお得(テレ朝ニュース)
Concept
この展示の起点にあったのは、「今年も猛暑となるでしょう」という予報に、私たちはどう向き合えるのか、という素朴で切実な問いでした。けれど、私たちが目指したのは、暑さをただ耐えるもの、避けるものとして扱うことではありません。会場で掲げた問いは、「この暑さを、どうチャンスに変えるか?」です。
Y/Our Climate が着目した「微気候」は、公園や建物のまわり、通勤路、商業施設など、都市のなかの狭い範囲で生まれる小さな気候の違いを指します。日当たりや風通し、建物の配置によって変わるその差異に目を向けることで、気候変動をマクロな議論から引き寄せ、身体、住宅、移動、滞在といった都市生活の実感と接続することができます。
リサーチブック『沸騰都市』でも、都市の気候を「身体スケール」から捉え直し、それを産業・社会レベルのアクションへ接続することが、本プロジェクトの目的として整理されました。問題提起にとどまらず、多様な知見を持ち寄り、具体的なアクションを構想するためのプラットフォームをつくること。それが、Y/Our Climate を通じて実現したいことです。
『沸騰都市』書籍概要
発行・編集|株式会社ロフトワーク
発行日|2026年3月13日
デザイン|ampersands
イラスト|越井 隆
印刷・製本|inuuniq
発行部数|200冊(非売品)
Program
展示会場では、Y/Our Climate の成果を大きく2つの視点から共有しました。ひとつは、プログラムのプロセスを追体験するエリアです。ここでは、リサーチブックの試し読み、日陰ハントのフィールドノート、プログラムから導いたイシューマップ、フィールドワークやトークセッションの映像を通じて、どのように問いを立て、どのように議論を深めていったかを見せました。
もうひとつは、気候との関係性を捉えなおすためのツールエリアです。温湿度計やサーモカメラなどの計測器、京都大学防災研究所による豪雨制御プロジェクト、ゴールドウインの積層ハイロフトガーメント、土井樹氏の気象センサーデバイス、トロント市の熱快適性ガイドラインなどを通じて、都市の気候に対する適応を、観測、設計、装い、制度といった複数のレイヤーから考えられるように構成しました。
展示は、結論を示す場というよりも、都市の気候をめぐる複雑な問題を、来場者とともに見つめ直すための共有地として設計しています。
Process
Y/Our Climate は、2025年8月から10月にかけて実施したレクチャーとワークショップ、フィールドワークから成るビジネスプログラムです。テーマは、都市の気候に産業・社会レベルでどう適応していくか。その問いに対して、システム思考と微気候というフレームワークを用いながら、企業、行政、研究者、アーティストなど約30名の参加者とともに協働リサーチを行いました。
プログラムは、7人のゲストレクチャー、3回のワークショップ、Goldwin Tech Lab でのフィールドワークで構成され、都市の気候を多角的に捉えるための学びと実践を往復する設計になっていました。リサーチブックには、講義内容だけでなく、日陰を追いかけるワークショップ、自然を読む視点、遊びと妄想、イシューマップ、これからの展望までが章立てとして収録されています。
会場に展示したリサーチブックやイシューマップは、このプロセスの途中で生まれた思考の断片であり、同時に次の実装へ向かうための足場でもあります。
【Y/Our Climate】最終回 10月17日(金)Day 5(FabCafe Osaka)
Outcome
プログラムを通じて見えてきたのは、都市の気候の問題が、単に「暑い」「危険だ」という一言では済まされない複層的な課題であるということでした。イシューマップでは、都市熱を資源として捉える発想の欠如、暑さによる消費行動の予期せぬ変化、最新技術の膨大なエネルギー消費、気候適応型ウェアの開発要求、中規模オフィスビル群の気候適応の必要性、機能を超えた日陰の情緒的価値など、都市の局所に潜む複数の論点が可視化されました。
一方で、このリサーチは課題の列挙で終わっていません。イシューマップで明らかになった課題と、参加者が得た気づきをもとに、未来の都市に実装したい“新しいあたりまえ”も描かれています。たとえば、子どもたちの「日陰ハント」が未来の都市地図をつくること、遊休不動産が陰と風をデザインする実験区になること。そうした構想は、都市の気候に対する適応を、防御的な対策だけでなく、都市体験や地域の価値を更新する実践として捉え直すヒントを与えてくれます。
このページを時差で読んでくださる方とも、私たちはここから先を一緒に考えたいと思っています。都市の気候をテーマに、リサーチ、制度設計、空間活用、プロダクト開発、教育、コミュニティ形成など、それぞれの現場から協働できる余地がまだ多く残されています。展示を見逃した方にとっても、このアーカイブが次のプロジェクトの入口になればうれしいです。
沸騰都市展 Y/Our Climate Exhibition
会期:2026年3月25日(水)〜4月19日(日)
会場:FabCafe Tokyo(東京都渋谷区道玄坂 1-22-7 道玄坂ピア1F)
主催:株式会社ロフトワーク、FabCafe Tokyo
協力:株式会社ゴールドウイン、都市エコロジー観測所、京都大学防災研究所 豪雨制御プロジェクト、土井樹、ことの次第(GROUP)、NEW DOMAIN、ampersands







