第3回:プロジェクトコンパス ~プロジェクトの羅針盤を作る~ [9つの知識エリア編]
第3回:プロジェクトコンパス ~プロジェクトの羅針盤を作る~ [9つの知識エリア編]
2012年7月11日、「Tokyo Art Research Lab 実践!プロジェクトデザイン」第3回講座が開催されました。(レポート:第1回 / 第2回)今回のテーマは、「プロジェクトコンパス ~プロジェクトの羅針盤を作る~」。プロジェクトの方向性を高い精度で「共有」するための、非常に重要なドキュメント作成のフェーズです。
プロジェクトマネージャーに学ぶ「羅針盤」
プロジェクトの航海図を描いてから、冒険に出よう
今回の課題は、「プロジェクトコンパスシート」を使って、チームのプロジェクト内容をフレームワークに落としこんでいくこと。プロジェクトコンパスシートは、ロフトワークのクリエイティブワークでも実際に使用している「プロジェクトマネジメント計画書」をベースにしたドキュメントです。
◎お題:プロジェクトの方向性を具体化するプロジェクトコンパスシートを作成する
◎ポイント:
・ 小さなことから具体的に決めていくこと
・ 想定されることはすべて書き出していくこと
プロジェクトを定義する「9つの知識エリア」で全容を把握
プロジェクト・デザインは、世界的なプロジェクトマネジメントの知識体系「PMBOK(ピンボック)」をベースとした手法です。プロジェクトコンパスシートの項目は、このPMBOKで定義されている「9つの知識エリア」を網羅しており、全てを埋めることでプロジェクトの方向性からリスクまで、全容を把握できるようになっています。
1.プロジェクト統合マネジメント:
達成したい目的と、目的到達するための目標を決める
2.プロジェクト・スコープ・マネジメント:成果物や作業範囲の定義
……前提条件や制約条件を洗い出す、「やらなくていいこと」も見える化すること
3.プロジェクト・タイム・マネジメント:スケジュールの作成・管理を定義
……マイルストーンの設定、クリティカルパスの認識、全体スケジュールをすり合わせる
4.プロジェクト・コスト・マネジメント:関連費用を見積もる
……見積りの方法・精度に注意し、リスクに備えたバッファもあらかじめ用意する
5.プロジェクト品質マネジメント:成果物の完成度設定、達成するための手法を計画
……ベンチマークの設定、計画により達成される品質レベルも定義する
6.プロジェクト人的資源マネジメント:チーム体制の計画
……プロジェクトマネージャーの人脈力、メンバーの役割と責任を可視化
7.プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント:チーム内のコミュニケーション計画を定義
……ステークホルダーの分析、コミュニケーション手法やルートを整理する
8.プロジェクト・リスク・マネジメント:想定されるリスクと対処方法を明文化
……既知/未知のリスクを可能な限り洗い出す、リスクに優先順位をつける
9.プロジェクト調達マネジメント:外部発注や契約に関わる事項を定義
……契約書の重要性を再確認
(参考:PMBOKガイド- Wikipedia[英] )
第3回:プロジェクトコンパス ~プロジェクトの羅針盤を作る~ [ワークショップ編]
ワークショップ:具体化したアイデアから、イメージを統一していく
前回の講座ではチームごとにブレストを通じ、企画アイデアを具体化していきました。(第2回のレポートはこちら)まずは宿題を振り返ります。様々な「観察」の手法を用いながら、プロジェクトに関わる具体的なイメージに近いものを探してくること。ワーク前半では、各チーム持ち寄ったものをボードに集約し、イメージのすり合わせを行いました。
自分たちのアイデアに似た具体的事例を集めてきているチームや、キーワードを検索して一覧で画像を印刷してくるチーム、ターゲットのペルソナをイメージして作ってくるチームなど、さまざまな「イメージ」の形がありました。言葉だけでは人によって捉え方が違うもの。イメージを共有することで方向性が定まってきます。
順調なチーム、停滞中のチームの違いとは?
全6回の講座も折り返し地点にきて、チームによってワークの進み具合に差が出てきたようです。ここで進捗に違いがでつつある、2タイプのチームについてまとめてみました。
*ディスカッションがうまく進んでいくチームの特徴
1. チームビルディング
メンバーそれぞれが積極的に発言し、ちょっとした意見でも言いやすいチーム作りに成功している
2. ターゲット
やりたいプロジェクトのターゲットが明確で、具体的なのでテーマがぶれない
3. アイデアの粒度
課題を細分化して小さなところから考え始め、アイデアの詳細化・具体化まで進められている
*ワークがあまり進まなかったチームの特徴
1. チームビルディング
発言のタイミングに躊躇してしまったり、発言する人に偏りが見られる
2. ターゲット
具体的なターゲットイメージがまだぼんやりしているので、目的が明文化しづらい
3. アイデアの粒度
目標が上位概念の位置にあり、そこに至るプロセスが抜けてしまう。収束のフェーズに入っていない。 やはり、プロジェクトの肝はチームビルディングにあります。土台がしっかりしていると、ブレインストーミングの質が高まり、プロジェクトコンパスへの落とし込みもスムーズなようです。
大きなプロジェクトこそ、小さなことから考える。次回テーマは「MVP」!
講師からヒントとして提供したのは、議論の大きさに変化をつけてみること。例えば、いきなり壮大なプロジェクト全ての問題にとりかかるのではなく、「50万円の予算で2週間後にスタートする場合、何からはじめるべきか」など、具体的で手の届く範囲から全体像を固めて行く方法もあります。 今回、プロジェクトコンパスシートが埋められなかったチームは、シートを持ち帰り、ミニマムな単位を設定することが宿題となりました。そして、次回はまさに”ミニマム”がテーマです。
*MVPの考え方
- 荒くてもよいのでコアを体感できる”モノ”(プロトタイプ)を作ること
- 小さなことの積重ねの方が、常に軌道修正しやすい
- 完璧でなくてもいいから、早く動き出すプロダクト
- 「あぁ、まだこれ出したくない…」というぐらいの状態での提出
次回はMVPを重視し、『ラピッドプロトタイプ』を実践していきます!