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岩崎 諒子, 後閑 裕太朗, 宮崎 真衣, 守屋 あゆ佳 2024.08.22

はたらきがいと対話の場は、自分たちの手でつくる
私たちが「カイシャの編集」に向き合う理由

ボトムアップの活動で、仕事のやる気と効果・成果の両方を高められる?

突然ですがみなさん、お仕事楽しんでますか? 仕事にやりがいを感じている人もいれば、モヤモヤを抱えている人、あるいは今まさに大きな壁に直面している人もいるかもしれません。

改めまして、こんにちは。私たちは、今みなさんがご覧になっているWebサイト「Loftwork.com(ロフトワークドットコム)」を運営しているLoftwork.comの編集チームです。

実は、私たちは1年前から、自らの「仕事のモヤモヤ」を解消し、より良いはたらきかたや本質的な成果につなげるためのボトムアップの活動に取り組んでいます。企業の中で広報担当やマーケティング担当などの立場でコンテンツを手がける人と、編集者・ライターが集まり、「これからの企業のコミュニケーション」についてざっくばらんに語り合うミートアップ「カイシャの編集会議」です。

おかげさまで、1回目、2回目ともに満員御礼! 企業の方から、ライター・編集者のみなさんにたくさん参加いただきました。(撮影:左・川島彩美、右・永田 崚)

これまで、KPIの捉え方をリフレーミングするようなコンテンツ企画の実践や、面白いインタビュー記事を作るためのマインドセットを紹介したり、コクヨのヨコク研究所さんをゲストにパーパスを軸とした発信の先進的な事例を紹介してもらったりしながら、さまざまな方々とディスカッションをしてきました。

この「カイシャの編集会議」は、株式会社ロフトワークの社員と編集チームであるHuuuu、くいしん社が一緒に企画・運営をしています。これまで参加してくださった方々からは、「いつものロフトワークさんのイベントよりも、ちょっとくだけた雰囲気ですね」という感想をもらうことも。

それもそのはず。実は、このイベントは私たちロフトワークの社員の完全なる自主活動として運営しているんです。言ってみれば、本業の傍らでロフトワークを「間借り」しているような気持ちで、1年間続けてきました。

ここでは、本活動に対する私たちの考えや、目指していることなどを紹介していきます。少しでも「面白そう」と思う方は、どうかお付き合いいただけたら嬉しいです。

執筆:岩崎 諒子
編集:後閑 裕太朗、宮崎 真衣、守屋 あゆ佳

つくった先から流れていく? 私たちが抱えていた仕事へのモヤモヤ

「カイシャの編集会議」の企画・運営メンバー。右から、ロフトワーク 岩崎・後閑、Huuuu 藤原さん・友光さん、くいしんさん、ロフトワーク 宮崎。

「カイシャの編集会議」を企画・運営しているメンバー、岩崎、後閑、宮崎は、それぞれマーケティング担当者と広報担当者という立場で、ロフトワークという会社からの発信やコミュニケーションを担っています。具体的な業務内容は、コーポレートサイトで記事やイベントの企画・編集や、メールマガジンの編集、執筆などです。

はじめはこの3人で、自分たちの仕事や職能について言語化・発信しようという相談をしていました。その中で話題になったのは、「コンテンツの仕事って、面白いけどちょっとしんどい」という感情について。そのしんどさの正体を掘り下げてみると、3人とも「苦労してつくったコンテンツが、公開した先からどんどん流れて行ってしまうという状態」に対して、モヤモヤを抱えていたことがわかりました。

もしかすると、このモヤモヤは、私たちと近い立場で仕事をしている他の企業・組織の人たちと共有できるものではないか? これが、第1回目のイベントで提示した「どうすれば、価値のあるコンテンツをつくれるのだろう?」という問いへとつながっていきました。

参加者一人ひとりの問いが、ミートアップのディスカッションを深めます。(撮影:永田 崚)

2つの課題に焦点を当てる

モヤモヤの裏側には、さまざまな課題があるはずです。たとえば、担当者のリソースや予算の限界や他部署との連携ハードルといった組織・体制的な課題もあれば、トレンドの移り変わりの早さ、競合他社との差別化の難しさ、コンテンツで効果や成果を生むこと自体の難しさといった技術的な課題、等々。

私たちのボトムアップな活動のなかで、これらすべての課題に向き合うのは、とてもじゃないけど無理です。そこで、コンテンツづくりという終わらないリレーの行き着く先を考える上で、特に重要そうな2つの課題に焦点を当てました。

  • KPI設定の課題:コンテンツの成果・効果を測るKPIが固定的であることが、新しい発想や根本的な改善が生まれづらい状況を作っているのではないか
  • 時代変化の課題:社会の変化やトレンドの移り変わりがどんどん早くなっており、コンテンツ担当者を翻弄しているのではないか

これらをより長期的な目線から捉えなおすことが、モヤモヤを晴らすヒントになるのではないか、というアタリをつけたのです。同時に、この問いに対する解を企業の中の担当者だけで導くことは難しいのではないか、とも考えました。

そこでこの活動に、企業のコンテンツ担当者に伴走するパートナーとして編集者・ライターの方々にも参加してもらえるように、枠組みを建てつけました。ロフトワークの発信を担う私たち自身、日頃から編集者・ライターのみなさんと仕事に取り組んでいます。彼ら・彼女らがいることで、コンテンツによって表現できる可能性が拡張され、目指す効果や成果を形にできているのです。

イベントの様子(撮影:永田 崚)

コンテンツづくりで手を動かす人たち同士がフラットに、「どうすれば、価値のあるコンテンツをつくれるのだろう?」という大きな問いを、成果・効果と時代変化の両面から掘り下げる場をつくる。その場所では誰もが安心して本音を話せるように、仕事のコアタイムからちょっと外れた「社会人の放課後」のような雰囲気にしたい。

そうして始まったのが、「カイシャの編集会議」です。

飲み会など、オフの時間で仕事の話をする時の「うちのカイシャ」の言い回しは、漢字ではないんじゃないかと想像し、シリーズタイトルの「カイシャ」をカタカナ表記にしました。ロゴタイプをデザインしてくれたのは、デザイナーの王帕布さん。

「読まれること」にも、ちゃんと向き合う

コンテンツが私たちのコミュニケーション手段のひとつだとするならば、その先には必ず「人」がいます。ページビュー(PV)やコンバージョン(CV)といったKPIを追いかけながら仕事をすることは、確かに大変です。一方で、私たちのアウトプットは誰かに読まれて初めて価値が生まれるという事実も、また疑いようがありません。

だからこそ、「カイシャの編集会議」の活動には「読まれるための技術」を持っている編集のプロフェッショナルの視点が欠かせないはず。

そうして、この活動に一緒に取り組んでもらうことになったのが、「ジモコロ」や「Yahoo! Japan SDGs」、長野県の移住促進メディア「SuuHaa」など、さまざまなWebメディアのコンテンツを手がけてきた、Huuuuの友光だんごさん、藤原正賢さんと、くいしん社のくいしんさんでした。

くいしん社 代表で編集者・プロインタビュアーのくいしんさん(左)、Huuuu 取締役で『ジモコロ』編集長の友光だんごさん(右)(撮影:永田 崚)

このメンバーで活動することに至った経緯は、こちらのPodcastで詳しくお話しています。

Huuuuとくいしん社は、社会的に価値のある活動や取り組みを伝えるコンテンツを、多くの人にとって「面白いもの」「読みたくなるもの」として発信し続けてきました。

社会課題や環境課題という複雑なこと、わかりにくいことの中から、いかに読者の好奇心を刺激するもの・ことを引き出すのか。それらを伝えた結果、読者にどんな心の変化や行動が生まれたらいいのか。読者とどんな関係になることが望ましいのか。そもそも、コンテンツが「読まれる」とはどういう状態なのか。

それらの問いと日々真剣に向き合いながら、ネタへの目利きと読み手に対する想像力、テキストを編む力によって、世の中に「届く」コンテンツをつくり上げていくプロフェッショナル。この2社が「カイシャの編集会議」における思索と対話を共にすることで、私たちの問いはより現実的な解へと近づいていくはずです。

みんなのモヤモヤと実践から、集合知をつくろう

「カイシャの編集会議」では、これまで2回、トークショーを開催してきました。毎回さまざまな企業の広報担当者・マーケティング担当者の方、そしてライター・編集者のみなさんとお話する機会につながっています。その中で、多くの方が共通する悩みや課題感を抱えており、またそれぞれが自分たちの場所で仮説を立て、よりよい仕事をするための試行錯誤をしていることが見えてきました。

また最近では、ロフトワーク社内からも企画・運営に参加するメンバーが増えており、少しずつではありますが、社内・社外に共感の輪が広がっていることを実感しています。

ロフトワークLayout事業部から、新しく守屋あゆ佳(右下)が「カイシャの編集会議」の企画・運営に加わりました。

そして改めて、来る9月12日、3回目のイベントとなる「カイシャの編集会議3〜コンテンツ多すぎ時代のぶっちゃけミートアップ」を開催します。

「どうすれば、価値のあるコンテンツをつくれるのだろう?」の問いを、今回は参加者の方々と一緒に、ポジティブに深めるための場をひらき、対話を通して組織や立場をこえた「カイシャの編集」の集合知を編み出すことに挑戦します。ただいま、イベントの開催に向けて鋭意準備中です。参加されるみなさん、当日はたくさん話しましょう! 

最後に:はたらきがいと生きがいの相互作用が生まれるように

おそらく、組織の中の「編集」としてのはたらきがいとは何かを最もよく理解しているのは、他ならぬ私たち自身であるはずです。

コンテンツの書き手や編集者がはたらきやすい環境をつくったり、成果・効果を生み出せる状況をつくるには、まず自分たち自身が学んだり実践を繰り返しながら仮説づくりの視点を磨き、経験値を増やしていくこと。その上で、組織や自社が属する業界などより大きなものに向けて、従来の価値基準のみにとどまらない新しい可能性を提示していく必要があるのではないでしょうか。

でも、個々人でそうした取り組みをストイックに続けるのは、孤独だし大変かもしれない。ならば、同じモヤモヤを抱えた人たちの小さなモチベーションを寄せ集め、掛け合わせながら、ボトムアップでもっと楽しく・面白く、オープンにできないだろうか?

何より、いち人間としてコンテンツをつくる仕事に愛情を傾けたい。そうでなければ、激しく変化する社会のなかで、「思わず読みたくなるような面白い情報」や「心を動かすメッセージ」を、ずっと形にし続けるのは難しいような気がします。

だから、私たちの仕事をより良くしていく「モチベーション」と「活動」を育てるための場所を、自分たちの手でつくってみよう。私たちは、さまざまなプレーヤーのみなさんと共有可能な対話と実験の場として、「カイシャの編集会議」をひらきます。本記事を読んでくださったみなさんが、この場に関わってくださることを心から願っています。

ロフトワークでは、一緒にはたらくメンバーを募集しています! 

「カイシャの編集会議」を運営している後閑、宮崎が所属しているマーケティングDiv.では、一緒にコンテンツマーケティングや広報の業務に取り組んでくれるメンバーを募集中です。ご興味のある方は、ぜひ採用ページもチェックしてみてください。

>>マーケティング職の採用情報  >>広報職の採用情報

岩崎 諒子

Author岩崎 諒子(ゆえん マーケティング/編集)

2006年入社。現AWRDの前身であるクリエイターコミュニティLoftwork.comで、企画・編集・コミュニティ運営を担当。「1万人のクリエイターミーツPASS THE BATON」や「Roooots 名産品リデザインプロジェクト」など、クリエイターと地域や企業との共創プロジェクトの設計・運営を手掛けた。2019年にマーケティングDivに異動し、組織体制変更に伴うリーダーインタビューシリーズ「Loftwork is...」をはじめ、マーケティングとブランディングを横断するさまざまなコンテンツの企画・編集に携わる。2024年から、地域共創専門ユニット ゆえんのマーケティングを担当。企業編集担当者のためのミートアップ「カイシャの編集会議」企画運営。二児の母。

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