一般社団法人広島県観光連盟 PROJECT

3つの観光Webサイト統合を通じて「リピータブルな観光」につなげる
ひろしま公式観光Webサイト「Dive! Hiroshima」

2022年3月、一般社団法人広島県観光連盟(以下、HIT)と広島市は観光Webサイト「Dive! Hiroshima」を新たに公開、共同運営をスタートしました。「Dive! Hiroshima」というサイト名には、「国内外の多くの方々に、広島の多様な(Diversity)魅力をより深く知ってもらい、期待感を持って広島にDiveしてもらいたい!」という想いが込められています。
ロフトワークは本Webサイトの全体プロデュースから構築までを一貫して伴走しました。

Outline

広島は国際的な観光地でありながら、原爆ドーム、嚴島神社など有名な観光地以外のスポットにはなかなか光が当たらず、一度訪れた観光客のリピートにつながりづらいことが課題でした。
県内の観光WebサイトにはHITが運営する「ひろしま観光ナビ」、海外向けの「VISIT HIROSHIMA」、広島市が運営する「ひろたび」等複数が存在していましたが、それぞれ発信内容が重複していたり、多様化する観光客のニーズに対応したコンテンツを効果的に提供できていませんでした。
新しい観光Webサイト構築において重要だった課題は、これまで3つのWebサイトからばらばらに発信されていた広島県及び周辺地域の観光情報を一元化することで、国内外の観光客にとっての利便性を向上させること。さらに、ユーザーがWebサイト上で自分好みの観光情報と出会う体験を提供することで旅の前に広島に対するポジティブな印象を醸成することでした。

また、インフラ、コンテンツマネジメントシステム(以下、CMS)、および運用プロセス全体を見直し、多人数が継続的に改善・運用できる基盤を構築しました。

執筆・編集:岩崎 諒子(loftwork.com編集部)

おもな実施内容

  • HITが運営する「ひろしま観光ナビ」と海外向けの「VISIT HIROSHIMA」、広島市の「ひろたび」という、3つのWebサイトを統合し、周辺地域の情報も含む観光Webサイトを構築した。
  • 新しいWebサイトのブランディング。ALL広島で一つの目的、ミッションを共有する旗印としてのロゴ、コンセプトを策定した。
  • 「モデルコース」や「旬情報」などの提案型コンテンツや、自由探索型の体験設計、「旅のしおり」機能によって多様化する観光客のニーズに応えるとともに、広島とその広域エリアの多様な観光体験・スポットに出会えるプラットフォームを構築した。
  • 拡張性の高さと安全性・安定性を両立するために、WordPressベースのヘッドレスCMSを構築し、Webコンテンツだけではなく、アプリやサイネージ等のデバイスにも発信できる素地をつくった。プラグインを活かした自動翻訳機能を実装し、8言語への翻訳対応を行った。
  • HITと広島市を中心に、広島県内と周辺の都市が参画する「ALL広島」の体制で、国内と海外の観光客に向けて、広島の多様な魅力を発信する体制をサポート。
  • 旅行代理店などの観光事業者と修学旅行を計画する学校関係者を「広島の観光を一緒に盛り上げていくステークホルダー」として位置付け、事業者向けのWebサイトを新たに開設した。

プロジェクト概要

*肩書きはプロジェクト実施当時

  • プロジェクト名:広島周辺地域観光情報Webサイト構築プロジェクト
  • クライアント:一般社団法人広島県観光連盟
  • プロジェクト期間:2021年5月〜2022年3月
  • 体制
    • 全体統括/プロジェクトマネジメント:菊地 充(株式会社ロフトワーク)
    • プロデュース:井田 幸希(株式会社ロフトワーク)
    • クリエイティブディレクション:山田 麗音(株式会社ロフトワーク)
    • コンテンツディレクション:飯島 拓郎、菅沼 遥(株式会社ロフトワーク)
    • デザイン、アートディレクション:柳澤 友己、土合 彩夏(株式会社パノラマ)
    • テクニカルディレクション:大森 誠(株式会社ロフトワーク)
    • REST API制作 / フロントエンド実装全般:村野 勝哉(k28)

Output

本プロジェクトでは、デザインにおける課題として、従来のステレオタイプな広島観光のイメージにとどまらない、「リピータブルな観光」にふさわしい広島の魅力を表現することに焦点を当てました。

プロジェクトチームはHITのメンバーらとともに、2泊3日に及ぶフィールドリサーチを実施。リサーチを通じて、まだ光が当たっていない県内の観光スポットを巡りながら、クリエイティブコンセプトとWebサイトの制作方針を決定しました。

その中で、新しい観光Webサイトのあるべき姿を「旅前から旅行を疑似体験でき、広島への期待感が一層高まるようなサイト」と定義。ビジュアル、体験設計、コンテンツ、機能へとそれぞれ丁寧に落とし込んでいきました。

Dive! Hiroshima ロゴ

広島の「広」の字をモチーフにしたロゴマークとタイポグラフィで構成されています。Webサイトにアクセスすると、ロゴマークの「広」の字が出現し、その中身が広島の観光スポットや体験にまつわるさまざまなモチーフや色に変化するアニメーションが表示されます。

この次々と姿を変えるロゴには、Webサイトの訪問者に「広島の多様な魅力を感じてほしい」という意図が込められています。また、ロゴには運用スタッフ一人ひとりの「広島の推しポイント」を反映できる仕組みとなっており、「広島の推しポイント」がロゴの中から飛び出していくようなアクティブなイメージを体現しています。

デザイン:株式会社パノラマ

デザイン:株式会社パノラマ

デザイン:株式会社パノラマ

デザイン:株式会社パノラマ

Topページ 

Topページは、ファーストビューから広島観光の最新の観光情報にアクセスできます。また、コンテンツのセクションごとにレイアウトやデザインのあしらいを変化させることで、長尺になりがちなTopページ上でも飽きさせない工夫をしています。

Topページ

モデルコースページ

HITがおすすめする公式モデルコースの他に、広島の多様な魅力を提案する「もしもトラベル」のコーナーを開設。また、エリアからおすすめコースを探すことも可能です。

スマートフォンからの閲覧をスムーズにできるよう設計にすることで、旅行中でもツアーの行程をストレスなく見渡せます。さらに、県の観光データベースと連携し、観光スポットの最新情報を参照できるようにしています。また、「もしもトラベル」では、さまざまな切り口から広島観光を楽しめる、10のモデルコースのコンテンツを新たに制作。

“もしも、平和活動に従事してきたスティーブン・リーパーさんが、海外から訪れる友人に広島の平和を体感するツアーを案内するなら”

“もしも、生粋の広島人の介護福祉士が車椅子ユーザーにも思いっきり観光を楽しめる場所を紹介するなら”

など、幅広い旅行者のニーズに応える、特色あるモデルコースを紹介しています。

モデルコースページ

Story: ファンとの共創の取り組み

HITは2020年より、「HITひろしま観光大使100万人PROJECT」と銘打ち、国内外の「広島ファン」と共に広島を盛り上げる取り組みを行なっています。本プロジェクトでは、新しいWebサイトを広島の熱いファンと共に創り上げるべく、さまざまな取り組みを行いました。

例えば、Webサイトの名称はプロジェクトチームだけで決めるのではなく、一般のひろしま観光大使からもアイデアを募集。HITとプロジェクトチームがアイデアを選定・ブラッシュアップした結果、「DIVE! 広島/Dive! Hiroshima」に決定しました。また、SNSを通じて広島通のファンがおすすめする「もしもの旅テーマ」を募集。選ばれたアイデアから実際のモデルコースを制作しました。

スポット・体験ページ、旬情報ページ

広島県内の2,500箇所以上の観光スポット・体験を紹介する「スポット・体験ページ」には、エリア別検索や条件検索、キーワード検索を実装。広島県の観光データベースと連携した幅広い情報の中から、ユーザーが主体的に自分好みの観光スポット・体験を探せます。

季節ごとの見どころや話題のイベント情報といったタイムリーな観光情報を紹介する「旬情報ページ」は、ページトップの「もうすぐ開催のイベント」から始まり、トレンドスポットや季節ならではの体験など、スクロールするごとに「今だから出会える」広島観光の魅力を多面的に紹介しています。

スポット・体験ページ
旬情報ページ

「旅のしおり」機能

Webサイトで見つけたお気に入りの観光スポット・体験をクリップしながら、自分で気軽にツアーを設計・シェアできる「旅のしおり」機能を実装。ユーザー自身が旅行体験をデザインすることを促します。

本機能はユーザーが個人情報を登録しなくても、パソコンやスマートフォン、タブレットからいつでも利用できます。

Story:細部までこだわった「ユーザー視点」

「Dive! Hiroshima」は、徹底したユーザー視点と最新の技術とを取り入れることによって、旅行者がほしい「リアルタイムの広島」、そして「多様な広島の魅力」を体感できる観光Webサイトを実現しました。

例えば、モデルコースのページでは、王道の広島観光コースのみならず、地域の隠れた魅力や体験をキュレーションし紹介する「もしもトラベル」などの提案型コンテンツを充実させました。また、「旅のしおり」機能はユーザーが新しいスポットや体験を発見し、それらを能動的にコレクション・シェアすることで、旅行前のワクワク感を高めるねらいがあります。

提案型のコンテンツと、さまざま旅行者一人ひとりのニーズに対応できる機能。この両方を実装することで、ユーザーにとっての「旅の入り口」となる体験を提供しています。

事業者向けWebサイト

HITとともに広島観光を盛り上げる、事業者向けの発信整備

今回のプロジェクトでは事業者向けのWebサイトも新たに整備しました。旅行代理店やホテルなどの宿泊施設を対象とした観光事業者や修学旅行を計画する学校関係者は、地域観光を盛り上げていくための重要なステークホルダーです。

事業者向けのWebサイトでは、修学旅行向けのプランを紹介するコンテンツに加え、ロゴデータや写真素材を無料で配布するページを設置したほか、広島観光に関する統計データも公開。広島観光に関心のある全ての事業者に向けて、必要な情報がスムーズに手に入るWebサイトをつくりました。

事業者向けWebサイト
事業者向けWebサイト

Member

菊地 充

株式会社ロフトワーク

Profile

山田 麗音

株式会社ロフトワーク
Creative Executive/シニアディレクター

Profile

大森 誠

大森 誠

株式会社ロフトワーク
テクニカルグループ テクニカルディレクター

飯島 拓郎

飯島 拓郎

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

メンバーズボイス

“プロジェクトを通じて一貫していたのは、フラットなコミュニケーションと、圧倒的顧客志向でした。発注主であるHITや広島市のメンバーも、受託者であるロフトワークのメンバーも、互いの立場を超えて、お客様のことを第一に、皆が当事者となって議論を重ねてきました。
Dive!はそんな皆の思いと愛情がたっぷり詰まったWebサイトです。機能やサービスも盛りだくさんですが、何よりも関わった人の思いの量がハンパないくらいDive!してるんです。
歴史的なタッグを組んでくれた広島市の皆さん、難しいプロジェクトに最初から最後までお付き合いいただいたロフトワークの皆さん、そしてDive!オープンと同時に出向元の県庁に戻ってしまったメンバー含むHITのメンバーの皆さん、全ての皆さんに感謝!です。”

山邊 昌太郎/HIT (一般社団法人広島県観光連盟) チーフプロデューサー

“このプロジェクトが始まった頃はCOVID‑19が猛威を振るっていた時期で、広島の街中から観光客が殆どいなくなっていたことを思い出しました。
「公開するころにはにぎわっているかな」なんて話しながら実施した最初のフィールドワークで、これまでのステレオタイプな広島の印象が完全に払拭され、その勢いのまま全員でサイト名を検討し、ロゴデザインも一気に進めたことで、チームの一体感が高まったように思います。
全員が当事者としての意識を持ち「All 広島」として一丸となり公開まで駆け抜けた1年間でした。
よく宿泊していた宿からの夕日に映える平和記念公園の景色は今でもよく思い出します。
このプロジェクトの存在自体が広島に「リピート」する十分な理由なのです…。HIT/広島市のみなさんに改めて御礼申し上げます。”

菊地 充/株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター

“Dive Hiroshimaでは主にサイトのコンセプト、ロゴ、WEBデザインのディレクションを担当させていただきました。
今回の取り組みでデザインを担当いただいたパノラマさんへの最初のお願いは、ラップトップを置いて、広島の観光客になっていただくことでした。広島の雄大な自然や人のおおらかさ、若い人々のエネルギーなど、エンドユーザー視点で得た新鮮な感覚を丁寧にデザインに落とし込んでいただきました。ユーザーが楽しく目移りしていただけるよう「旅のマガジン」を意識し、四季に応じてサイトの色合いがガラッと変わることで、いつ見ても新鮮さを感じられる仕掛けもしてあります。
HITや広島市の皆さまの広島に対する熱い想いと素敵なおもてなし、固定観念に縛られないリスクを一緒に楽しんでいただけたことで、公式の観光サイトでは類を見ないユニークで挑戦的なWEBサイトになったと感じています。
ぜひ広島観光の際には、Dive Hiroshimaをご利用ください!!”

山田 麗音/株式会社ロフトワーク Creative Executive・クリエイティブディレクター

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