創業220年の働き方改革。
静岡の物流大手、鈴与が取り組む磁場づくり。
Outline
1801年、静岡県清水港で廻船問屋として創業した鈴与株式会社。創業以来物流事業を核としながらエネルギー・環境対応商材、建設・ビルメンテナンス・警備、食品、情報、航空、地域開発・その他サービス分野に至るまで、多岐に渡る価値提供で社会に貢献しています。
時代の変化を読み取りながら220年にわたり事業を拡大してきた同社は、さらなる自己変革にむけ、集まって働きたいと思えるオフィス空間を含む働く環境と、コミュニケーションを通して新しいことを自発的に生み出すための働き方の2つのアップデートに着手。ロフトワークでは2018年5月よりイベント会場として使われていた本社屋5Fの講堂のリノベーション及び、本社別館を新築。加えて社員の働く意識を変えるための仕組み作りを支援しています。
本記事では、プロジェクトの概要と共に、アウトプットの一部をご紹介。ビジネス環境が急激に、大きく変化する中で、鈴与株式会社は何を変え、何を変えないのか。創業220年の老舗企業がハード・ソフト両面から挑戦した働き方改革です。
- 課題
・ 社員⼀⼈ひとりがクリエイティビティを発揮し、考え⾏動できるオフィス空間を整備したい
・ 社員が自発的に思い、考えたことをアクションとして実行する仕組みが欲しい - プロジェクト期間
・ オフィスリニューアル:2018年5月-2019年9月(16カ月)
・ 社員の意識改革:2019年5月-2019年11月(7ヶ月) - 体制
クライアント:鈴与株式会社
-オフィスリニューアル-
・プロデュース:松井 創 高橋 卓
・プロジェクトマネジメント:高橋 卓
・クリエイティブディレクション:
コンセプト策定:高橋 卓 松本 亮平 岩倉 慧
空間デザイン:高橋 卓 宮本 明里
空間実装:高橋 卓 宮本 明里 河合 美咲
-社員の意識改革支援-
・プロデュース:柳川 雄飛
・プロジェクトマネジメント:長島 絵未
・クリエイティブディレクション:上村 直人
・ウェブサイトディレション:岩倉 慧
・プロジェクトディレクションサポート:小山 さくら 黒田 晃佑(Hidakuma)
Background
経済を回す大動脈であり続けるための挑戦
代表取締役社長の鈴木健一郎氏は、働き方改革プロジェクトにかける思いを以下のように語っています。
いまオフィスを改革するということ
ワークライフバランス、リモートワーク、フリーアドレス。 「働き方」に関するトピックで溢れる現代において、
鈴与はなにを守り、なにを変えていくべきか。これからも決して変わらないことは、
当社で脈々と受け継がれている「共生(ともいき)の精神」。
それは、社員一人一人が自立した上で協力し合い、
お客様とその先にある社会に貢献し、価値を提供し続けること。その為には、物流や商流が大きく変化し、
新たな枠組みが求められる時代を、
一人ひとりがクリエイティビティを発揮し、
考え行動していかなければならない。働く空間を大胆に変えることで、行動や思考さえも変わる。
CODOの完成は、変革のスタート。
鈴与のパートナーであるお客様と、
それを支えるすべての社員の本拠地として。新たに生まれ変わったCODOで、
これまでにない挑戦を始めよう。代表取締役社⻑
鈴⽊ 健⼀郎
Approach
環境づくり(オフィスリニューアル)
働く環境を⼤胆に変えることが、そこで働く人の⾏動や思考さえも変える
本社5Fのイベント会場である「講堂」。これまでの呼び方はそのままに、「CODO」に名称を変更。経営理念である「共生(ともいき)」の精神を引き継ぐ、「共に生きる CO-DOing」になぞらえた想いを込めました。
地域、お客様、パートナー、鈴与を取り巻くすべての人々を「温かく迎え入れる」母港のような拠点であり、鈴与のすべての社員が最大限のパフォーマンスと誇りをもって、安心して挑戦できる“本拠地”=ホームグラウンドのような存在です。
300名規模のイベントホールや、小規模セミナー、または食品の新製品発表会など、用途ごとに自由に場所を使える設計に。家具や植栽などには車輪をつけ、可変性・可動性の高い空間になっています。
新しい発想が生まれるための余白を、場所の意味やそこでの過ごし方を曖昧にすることで創り出すために、大きなワンスペースに様々な居場所のグラデーションをデザインしています。
CODO と同じコンセプトが反映されている新築した別館(Photo by Kenta Hasegawa)
⾏動や思考さえも変えるためのプロジェクトデザイン
変化が早く不確実な時代において、⼀⼈ひとりが主体的に捉えた「働き⽅」を取り⼊れ、⼈も組織も変化し成⻑しながら、⼤胆に⾏動できる環境。
鈴木社長の目指すビジョンをどのように社員一人ひとりに浸透させていくか。単純にオフィスをリニューアルするだけでは、すぐに実現はできるものではありません。注力したのは、全社をまきこみ、様々な部署の社員と一緒に考えるプロセスです。
働き方に関する全社アンケートや、一日の過ごし方、デスクまわりの環境などからまずは社員が各自の状況と課題を把握。どのような働き方や空間の使い方で改善できるかをアイディエーションしました。行動や思考に変化を促すため、オフィスのリニューアルを自分ごととして、捉えます。
未来の働き方を考えるワークショップでは、創造性と⽣産性を⾼める、新しいオフィスに必要な「働き⽅・過ごし⽅のシーン」を抽出。職場でも自分らしく過ごすためのアイデアや鈴与で働くことをもっと誇りに思うために何ができるかを議論しました。さらにプロジェクトの進捗を全社に共有するために、誰でも入室可能なプロジェクトルームも設置しました。
空間の方針は社長から、使い勝手やディテールは社員と共に考え、コンセプトと6つのキーワードができあがりました。
鈴与オフィスプロジェクトのグランドコンセプト:安心して挑戦できる本拠地
鈴与オフィスプロジェクトで大切にする6つのキーワード
①豊かな表情|これまでとこれからの鈴与の顔
②集中と発散|働くスタイルに合った居場所が見つかる
③安⼼感|地域と働く人に安⼼と安全を提供
④時代への応答|社会の変化に応じたアップデートを想定
⑤可変性可動性|ひとりで動かして変えられる手軽さ
⑥寛容さ|実験してもいい。「やってみたい」が実現できる空間
ホームグラウンドの詳細はこちらから
行動づくり(社員の意識改革)
鈴与の理念に共感し、新たな取り組みを主体的に自創するプロジェクトチームを創る
働き方の変革を促すうえで環境作りと並行して発足した採用施策プロジェクトは、鈴与を自分事として捉え、新たな取り組みを自ら率先して提案・行動する人を創ることを目的にスタートしました。
社員からの能動的なアクションを引き出すために、ボトムアップ型のアプローチを採用。これからの鈴与をつくるメンバーをグループ内から公募しました。活動を自分ごと化し、社内外にアピール、発信していくためにコンセプトやチーム名、VIを策定。主体的に自創するためのチーム・枠組みを作り上げていきました。
SIP(Suzuyo In Progress)は「鈴与進行中」の意。ゴールに向かって進んでいるという意味を込めています。
2019年12月現在もプロジェクトは進行中。「新しい働き方」を体現するためのアクションとして「“働き方”をテーマとしたイベントの企画」「情報発信用Webサイトの制作と企画運用」などが予定されています。働く環境の変化を、社員の意識改革により一層繋げていくため、新しい働き方を率先して実行し、その活動を社内外に広く発信していくことを計画しています。
Member
高橋 卓
株式会社ロフトワーク
Layout Unit ディレクター
柳川 雄飛
上村 直人
株式会社ロフトワーク
クリエイティブDiv. シニアディレクター
松本 亮平
株式会社ロフトワーク
Layout Unit シニアディレクター
小山 さくら
株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター
メンバーズボイス
“鈴与の皆さんにとっては、見たことも体験したことも無い空間をつくることは、想像し難く大変なチャレンジだったと思います。それでも、私たちロフトワークの無謀ともいえる提案を社長はじめ皆さんが拒否することなく受け入れ、共に創造してくれました。本プロジェクトは多様なクリエイター連携のもと、総務部や経営企画部、鈴与建設など、鈴与グループが連携してできた正真正銘「ともいき」を象徴したプロジェクトとなりました。”
株式会社ロフトワーク:Layout Unit CLO(Chief Layout Officer) 松井 創
Service
未来を起点組織・事業の 変革を推進する『デザイン経営導入プログラム』
企業 の「ありたい未来」を描きながら、現状の課題に応じて デザインの力を活かした複数のアプローチを掛け合わせ、
施策をくりかえしめぐらせていくことで、組織・事業を未来に向けて変革します。
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