次の時代の「潮目」をつくる共創型R&Dを推進
パナソニックEW社 新拠点「SHIOMER」
Outline
多様な価値がぶつかり、新事業を生み出すR&D拠点「SHIOMER」
パナソニック株式会社エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW)は、電気設備の分野で住宅、オフィス、ホテル、商業施設、スポーツ施設など社会を構成するあらゆる“くらしの空間”で事業を展開。同社が掲げる事業スローガン「いい今日と、いい未来を電気設備から。」の実現を目指し、様々な取り組みを推進しています。
同社は2024年12月、東京都・田町エリアに企業の価値創造の新たな舞台として、多様なステークホルダーとの共創によって社会に新しいソリューションを提案するR&Dの共創拠点「SHIOMER(シオメル)」をオープンしました。
SHIOMERは多様な価値観を持った人がぶつかり合うさまを「潮目」に例え、コンセプトの軸に据えています。共創による新たな価値創出を行う拠点として従来の枠に囚われない脱自前の“新しいR&Dのカタチ“を模索します。
ロフトワークはプロジェクト全体企画、空間設計ディレクション、共創計画設計、コミュニケーションツール制作を担当。ハード面とソフト面の両軸から「共創」の実現をサポートしました。
Project Scope
Outputs
R&D新拠点「SHIOMER(シオメル)」
<施設内エリアゾーニング>
- OCEAN / co-creation:異なる潮が混ざり合う共創エリア。訪れる人がそれぞれの個性を持って、出会い、意見や思いをぶつけ合い、課題を発見し、解決策を考えていく。
- PORT / lounge:SHIOMERのエントランスエリア。参加者との待ち合わせや、カウンターで気軽に立ち話など。
- BEACH / insight:洞察に適した静かなエリア。さまざまな調査結果やデータを分析などに適した場所。
- CAPE / chill:ちょっとした休憩や心を休ませるリフレッシュエリア。
- COVE / focus・CAVE / zone:集中エリア。集中度合いによって使い分けることができる。
- room1~3:用途ごとに合わせた会議室。最大16名収容可能。大型ディスプレイやオンライン会議に対応するカメラやマイクも完備。
- DOCK / development:ソリューション事業の実現・実装に向けたソフトウェア開発を行うエリア。(※社員以外は出入不可)
<拠点ネーミング・ステートメント・ロゴデザインディレクション>
キャッチーな合言葉とロゴデザインで、愛着が湧く新拠点へ
新しい拠点で、パナソニックEWが実践していきたい共創のかたちを検討、言語化する中で、同社のアイデンティティ、新拠点が社会に対して与えたい印象、新拠点のロケーションが持つ個性の3つの視点を統合し導き出したコンセプトが「潮目」です。潮目のように異なる文化や背景、技術を持った方が訪れ、それぞれが抱える課題を解決するための共創が生まれ、広がり、社会に実装されていくための拠点との意味を込めています。
このキーワードに基づき、“潮目を創る”という意味を込めたキャッチーな造語「潮目る(しおめる)」からSHIOMERが誕生しました。従来のパナソニックEWのイメージからは脱したいというメンバーからの言葉から、全体的にポップさを意識したアイコニックなデザインに繋がっています。
ロゴ
ステートメント
<コミュニケーションツール ディレクション>
多様な人が集まる「自由さ」を、遊び心を持って表現
広報ツールは、Webサイト、リーフレット、ステッカー、スタッフジャンパー、スライドフォーマット、コンセプトムービーを制作。デザインは基本レギュレーションを守りながらも多様な表現が可能です。運用していくなかで、広報ツールは変化していくことを前提に、今ある情報を端的にわかりやすく伝えること、そしてSHIOMERの世界観の土台を策定していくように制作を行いました。各種ツールでは様々な表現でデザインを展開しています。
Webサイト
Web制作では、異なる海流を意味するSHIOMERのデザインをアニメーションで表現し、より印象的かつ意図が伝わりやすいサイトにしました。またコンセプトから活動内容、概要まで一貫した世界観を保ちつつ、リズム感を重視しました。
「SHIOMER」Webサイト:https://shiomer.com/
コンセプトムービー
各種コミュニケーションツール
撮影:Takuya Yamauchi/VIGNETTE
Approach
社会の未来像、目指す共創の姿を言語化
新拠点立ち上げに際し、パナソニックEWが実現したい共創の姿を明らかにする必要がありました。そこで、プロジェクト初期にプロジェクトメンバーが終結し、合宿形式でロジックモデル作成ワークを実施。チームらしさ、社会の未来像、目指す共創の姿の3つの要素に分解してワークを設計し、それらを素材として新拠点が創出するインパクトとそこまでのプロセスをロジックモデルに落とし込みました。この過程を通じて、未来社会や、新拠点の場に対する想像を膨らませると同時に、プロジェクトメンバー同士の関係性を深めることを可能にしました。
また、世にある共創施設の視察ツアーを実施。現場に触れることを通じて、彼らが目指す場の解像度を高めながら、言葉に落とし込んでいきました。大きく分けて、パナソニックEWのアイデンティティ、社会に与えたい印象、空間的特徴の3つの視点を統合し、パナソニックEWの新拠点だからこそ掲げることのできるメッセージを言葉として紡いでいきました。
結果、辿りついたコンセプトは「潮目」です。その言葉から得られるインスピレーションを元に活動イメージや空間設計、コミュニケーションツールの検討を展開していきました。
共創の実践から逆算し、導入プログラムを設計
社外との共創を促進し、脱自前の“新しいR&D”を実践していくために、SHIOMERにおいてどのようなプログラムが必要か検討するために取り入れたのがトライアル形式のプログラムです。社外のメンバーとの共創とはどのようなことなのか、まずはプロジェクトメンバーがその感覚や課題を掴むことが重要だと考えました。トライアルプログラムにはロフトワークが主催するワークショップ「Service Design Scramble」のフォーマットをアレンジし活用。広く一般からも参加者を募り、公開イベントとしてアイディエーションワークショップを実施しました。(プログラム詳細>>)
このプロセスを通じて、運営メンバー間でプログラムの「良いところ/ そうでないところ」の目線を揃えることができました。
撮影:村上 大輔
Service Design Scrambleについて
「Service Design Scramble」は様々な業種や職種の参加者が一つのチームとなり、テーマオーナーに選ばれたチームメンバーの抱える課題をお題として、勝手に新サービスアイデアを考え合うワークプログラムです。
空間立ち上げに際する役割分担と活動の具体化を支援
SHIOMERオープンにあたって、共創活動に関わるメンバーの役割検討、どのような活動を行い、どうやって共創を生み出していくのか、という具体的な活動の検討を行いました。
ステートメントに含まれる、潮目を「読む」「産む」「変える」活動とは一体どういうものか、ここで産まれる共創はどんな人が関わるだろうか、といった問いから、短期・長期それぞれの視点で活動計画案を提案しました。
コアアクターマップ
プロジェクト概要
パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 共創空間活動設計 & クリエイティブ制作
- クライアント:パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社
- プロジェクト期間:2024年4月〜2024年10月
- ロフトワーク体制
- プロジェクトマネジメント:圓城 史也、笹島 啓久
- クリエイティブディレクション:村田 菜生、小林 奈都子、岩倉 慧、加藤 翼、加藤 あん
- テクニカルディレクション:川竹 敏晴
- プロジェクトサポート:国広 信哉
- プロデュース:藤原 里美
- 制作パートナー
- コピーライティング:かたちラボ 田中 裕一
- グラフィックデザイン:OUWN株式会社 石黒 篤史
- ウェブデザイン:neighby(望月 良輔、小野 愛実、廣瀬 涼、森 早苗、西村 乾、土屋 志野)
- コンセプトムービー:武居 泰平
- トライアルプログラム参加クリエイター
- 人間六度(小説家・漫画原作者)
- 河カタ ソウ(クリエイティブディレクター/プロデューサー/企画/脚本/コピーライター)
- 方山 れいこ(株式会社方角 代表取締役)
- さしみちゃん(CGOドットコム CGO / インフルエンサー・DJ)
- 大杉 和美(デザイナー)
Member
柳生 博之
パナソニック株式会社
エレクトリックワークス社 ソリューション開発本部 Home IoT新事業企画部 部長
吉原 孝明
パナソニック株式会社
エレクトリックワークス社 ソリューション開発本部 ソリューション・技術企画室 グローバルソリューション企画部 部長
福井 博
パナソニック株式会社
エレクトリックワークス社 技術本部 デザインセンター 空間デザイン部 ソリューションデザイン課 シニアデザイナー
遠藤 大輝
パナソニック株式会社
エレクトリックワークス社 技術本部 技術人材戦略部 人事課
有村 悠
パナソニック株式会社
EWエンジニアリング株式会社 施設システム営業部 コンセプトデザイングループ 課長
メンバーズボイス
“新しくR&D拠点を東京に開設するにあたり、ロフトワークさまとプロジェクトを組成して準備を進めてきました。電気設備の提供を通じてくらしの中に灯りを灯しつづけるお手伝いをしてきた当社のDNAをどのように拠点のミッションに反映させるのか?を考えた結果「潮目を灯す」というコンセプトが生まれ、さらに拠点名 ”SHIOMER”(潮目る)につながりました。お客様の価値やお困りごとが多様化・不確実化する中、ご満足いただけるソリューションをタイムリーにご提供するために、ここ ”SHIOMER” で社外の皆様とつながり、”ここで、潮目る?” を合言葉に共に価値を創り出していけたらこれ以上の喜びはありません。ロフトワークの皆さま、これからもよろしくお願いいたします!”
パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 ソリューション開発本部 柳生 博之
“多様な価値観や思いを持つ人同士がぶつかり、新しいソリューションを共創する「SHIOMER」。
フェーズ1で定めた「潮目」というコンセプトに沿って、ネーミングをはじめとする各種クリエイティブの制作、プログラム検討・トライアル実施に携わりました。
プロジェクトを進める中では、パナソニックEWの皆さまと議論し、ときにぶつかり、まさに潮目を感じながら、作り上げてきました。
SHIOMERはオープンしたばかり。これから多くの方々との共創が産まれていくことになります。社会の課題に向き合い、ワクワクする未来がこの場所から産まれていくことを楽しみにしていますし、私たちも引き続きお力添えしていきたいと思います。
最後に、このプロジェクトはパナソニックEWの皆さまをはじめ、クリエイターのみなさま、施設訪問にご協力いただいた皆さまなど、多くの方に関わっていただきました。ありがとうございました。”
ロフトワーク クリエイティブディレクター 笹島 啓久
“プロジェクトの初期段階で実施したワークショップの中で、皆さんの発言の端々から「パナソニックの水道哲学」を感じながら、それがコンセプトにつながっていったことがとても印象的でした。自分たちだけでできないのであれば、他者の力を借りてでも顧客課題を解決する!という強い意志と共に立ち上がったSHIOMERでの共創は、アイディエーションだけにとどまらず、R&Dの部門が牽引するからこその実装力が強みになっていくと感じています。
海を目の前にしたこの場所で、新たなうねりが生み出され、海流に乗って新たなうねりと出会い、新たな潮目を作っていく。我々も、一つのうねりとして、SHIOMERメンバーと共に新たなチャレンジを続けていきたいと思っています。”
ロフトワーク シニアプロデューサー 藤原 里美
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