ロングセラー商品の魅力を“表現者”目線で発信
ぺんてる プラマン40周年記念Webサイト
2019年、発売から40周年を迎えたぺんてる社の樹脂万年筆『プラマン』。周年記念企画として、新色の発売や新製品展示会での特設ブース展示といった露出機会を計画していました。その流れをくんで、ぺんてる社は同製品ユーザーに向けたプロモーションはもちろん、国内外の販売パートナーや同社海外拠点に対しても販促活動の気運を高めるべく、ブランド40周年記念Webサイトの制作を決定しました。
ロフトワークは、本プロジェクトにおいてWebサイトの企画・制作を支援。国内・海外のエクストリームユーザーへのリサーチを通じてロングセラー商品の新しい魅力を再発見し、世界に向けて広くアピールするプロモーションWebサイトを制作しました。
Outline
ユーザーの視点から、製品の新しい魅力を発掘する
ぺんてるの樹脂万年筆『プラマン』は、サインペンやシャープペンシルと比べると「通好み」のニッチな製品。1本200円という手軽な価格でありながら表情豊かな線を描くことができるため、国内では建築家や作曲家、デザイナー、漫画家など多くの表現者が愛用しています。海外のファンも多く、特にイラストレーターやカリグラファーなどに人気です。
今回、プラマンシリーズ(『プラマン』、『トラディオ』、『Stylo』)のプロモーションWebサイトを制作した背景として、40周年のタイミングで販促活動をするうえで、改めて国内の小売店に向けた動機づけをしたいという狙いがありました。
また、ぺんてるは世界22カ国にまたがる海外拠点と、120以上の地域で商品が販売されているグローバルな文具メーカーです。プラマンの世界的な人気を強くアピールすることで、海外の拠点や小売店に向けて販促活動の波が広がるよう積極的に働きかけたいと考えていました。
ロフトワークはこれまで、『ぺんてるサインペン 55周年』『Orenz 知られざる0.2mmの世界』といった、ぺんてる社の人気ブランドのプロモーションWebサイトの企画・制作を担当。エクストリームユーザーを巻き込んだコンテンツ制作を通じて、まだ言語化されていない製品の魅力やユースケースを多面的に伝えてきました。
本プロジェクトでは、国内外のエクストリームユーザーへのインタビューによりプラマンの新しい魅力を再発見すると同時に、同製品が世界の表現者から愛され続けていることを発信。完成したプロモーションWebサイトを通じて、世界のファンと共に40周年を祝福しました。
Outputs
製品誕生40周年にちなんで、世界各国から様々な職業のプラマン/トラディオ愛用者40名をリサーチによって探し出し、インタビューを実施。プラマン「ならでは」の書き味を称賛するコメントからニッチな使い方まで、ユーザー視点からの製品の魅力と豊富なユースケースを伝えるプロモーションWebサイトへと落とし込みました。
Story
多彩なユーザーから、愛されつづける理由を紐解く
世界のプラマン愛用者へのインタビューを設計するにあたり、インタビュー対象となるエクストリームユーザー抽出のためのプレリサーチを実施。「日常生活や仕事において、いかにユニークな使い方をしているか」また、「プラマンにどのくらい魅力を感じてくれているのか」を基準に、Instagram、Twitterなどのつぶさなリサーチを通じて、対象ユーザーを調査・抽出していきました。
プロジェクトチームは幅広いユースケースをあぶりだすために、クリエイターからインフルエンサーまで多様な職業のユーザーを探し出しました。特に海外のユーザーは用途、国・エリア、アウトプットの軸からインタビュー対象者を選定。インタビュー結果にバリエーションが出るよう工夫しました。
最終的に、世界17カ国から、アーティスト、グラフィックデザイナー、カリグラファー、漫画家といったクリエイター層に加えて、病理医、建築家、ソーシャルワーカー、アカデミストと多様な職業のプラマン愛用者40名にインタビューを実施しました。
明らかになった、知られざるユースケース
インタビューは「Why Pulaman?―世界の愛用者に聞くプラマンの魅力」をテーマに、エクストリームユーザーならではのパーソナルなユーザー体験を引き出すように設計。たとえば、「どのようなシーンでプラマンを使っているのか」や「こだわりの使い方」「プラマンのどんなところに魅力を感じているのか」といった設問を用意することで、ユニークかつ幅広いユースケースをあぶりだしました。
病理診断を行う際、ガラスプレパラート上にマーキング(印を付ける作業)をするときに用います。
ガラス上にインクを置く作業と、紙に病変の詳細を描き込む作業とを持ち替えずに行うことができ、大変便利です。
―病理医ヤンデル|病理医(日本)
使っていく内にインクの出やペン先に個性が出てくるので、毎回1本を使い切って次のペンに変えるのではなく、同時に3本ほどおろし使いまわすことで、タッチや表現の違いを演出しています。
―パントビスコ|クリエイター(日本)
「パーソナルな声」から紡がれたビビッドなコピーワークとストーリー
本サイトにおいて特徴的なトップページの「Why Pulaman?」コーナーは、インタビュイーのコメントから紡がれたコピーワークと、スケッチやカリグラフィ、メモといったプラマンを使ったアウトプットを組み合わせて一覧で紹介。コピーワークは、インタビュイーの回答からよりビビッドな言葉を選びブラッシュアップを重ねることで、本人のパーソナリティを感じさせるコンテンツへと昇華させました。
インタビュー記事は、インタビュイーの個人的な体験や思いに関するエピソードを立たせることで、本人の存在を実感できる内容に。ファンのプラマンへの愛情の深さや、彼らにとっていかにプラマンが欠かせない存在なのかをリアルに語るコンテンツとなりました。
海外ユーザーの共感を得るために、英語の精度を高める
今回のプロモーションWebサイトでは、海外のファンにも届くバイリンガルコンテンツを目指しました。そのため、海外ファンへのインタビューやコピーワーク制作などにおいて、英語によるコミュニケーションの精度を高めることが不可欠でした。
そこで、プロジェクトチームに英語圏出身のディレクターをプロジェクトに起用。海外のプラマンファンに共感してもらえるような「心に届く」英語コミュニケーションの品質を担保しました。
Voice
Webサイトに掲載されている「プラマン/トラディオに向けた一言」には、以下のようなメッセージも。
こんな素晴らしい製品を世界中のアーティストと書き物好きのために作ってくれて、ありがとう。 私たちが美しいものを作ることに貢献してくれることに感謝します。
Simonluca Spadanuda|グラフィックデザイナー / イラストレーター(イタリア)
とても重宝しています。ドローイングによってはこれでなければ描けないというほどのペンです。
これから先もずっと、私だけでなく数多くのアーティストたちの手元にあり続けて欲しいです。Nicol Caro|タトゥーアーティスト(チリ)
今回のプロジェクトを通じて、多くのファンがこれからもプラマンが手に入り続けてほしいと強く願っていること、そして、同製品シリーズがぺんてるのコーポレートビジョンに込められた「表現するよろこびを育む」というミッションを色濃く体現していることを、世界に向けて発信することができました。
Client's Voice ―ぺんてる株式会社 経営戦略室 広報課 田島 宏 様
―ぺんてる プラマン40周年記念Webサイトへの反響はいかがでしたか?
サインペン55周年記念サイトの時と同様に、社外からの共感の声がわれわれにとって大きな勇気となりました。周年限定として発売した新インキ6色も大きな反響を呼び、定番化することとなりました。これまで地味な存在だったプラマンにあらためてスポットが当たり、ロングテールに向けた価値向上につなげられたと考えています。
―Webサイトトップのコピー「万年筆であって、万年筆ではない あなたらしさが宿るペン先」を考案されたと伺いました。このコピーに込められた思いをお教えください。
このコピーは、プラマン発売当時の開発者である当社OBへのインタビューや愛用者からの声を通じて得た気づきから、社内複数メンバーの話し合いにより、プラマンにふさわしいヘッドコピーをあらためて抽出しました。
プラマンのペン先が、単に一般的な万年筆のペン先を樹脂化しただけではなく、唯一無二の技術により創り上げられ、それが愛用者に深く刺さっていることを表現したつもりです。
―プロジェクトを終えた感想を教えてください。
今回のプロジェクトを通じて、開発者の思いと愛用者の方々の溺愛に近い気持ちを縦串で知ることができました。開発者の熱量が強ければ強いほど、それは製品を通じて消費者・顧客に伝播するものだという確信を得ました。
また、恐らく当社のプロジェクトとしては初めての試みとして、国内・海外のマーケティング担当者を巻き込み、グローバルに発信したことが良い経験となりました。
―田島様、ありがとうございました!
Member
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