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2025.01.28

企業ミュージアムの新たな役割とは? 進化を導く3つの事例

展示施設から価値を生み出す場へ。企業ミュージアムの新たな役割

企業ミュージアムとは、企業の製品やサービス、それに活用される技術を紹介する施設を指します。その目的は多種多様ですが、展示空間や体験プログラムを通じて、訪問者に企業の理念や技術力を直接感じてもらうことで、企業への理解や共感を深める場となっています。

近年では、このような「伝える場」を超え、多様なステークホルダーが集まり、新たな価値を共創するためのプラットフォームとしての役割も担うようになってきました。異業種や次世代とのコラボレーション、地域連携、サステナビリティへの貢献といった視点を取り入れた企業ミュージアムは、単なる展示施設を超え、企業の未来を描く場として進化しています。

本記事では、ロフトワークが支援した企業ミュージアムや、既存の役割を越えた新たなミュージアム・施設について、具体的な事例をまとめました。それぞれの施設がどのように企業の価値を伝え、社会や地域とつながり、新しい可能性を生み出しているのか。その概要をご紹介します。

富士フイルムビジネスイノベーションが創る、サステナブルな未来を考える場「Green Park FLOOP」

フループの展示空間で大勢の子どもたちや親子が展示を見ている様子

「Green Park FLOOP」は、富士フイルムビジネスイノベーションが横浜に設立した子ども向け企業ミュージアムです。環境問題や複合機技術をテーマに、訪問者が楽しみながら学べる展示を通じて、サステナブルな地球の未来を考える機会を提供しています。

ロフトワークは主に施設内の展示や、街の循環拠点として施設内にオープンした、軽飲食とコワーキングスペースである「Cafe&Co-work」の運営を支援しました。

「Green Park FLOOP」では、企業の技術や取り組みを伝えるだけでなく、訪問者が環境問題について考え、行動を起こすきっかけを与えることを目指しています。この取り組みは、企業の社会的責任(CSR)の一環としての意義だけでなく、地域とのつながりを強化する試みであるともいえます。

印刷技術の体験型展示を親子で遊んでいる様子
素材のリユース・リサイクルの流れを学べる、コースター形式の展示を子どもたちが体験する様子

施設の詳細については、以下のニュース情報をご覧ください。

「Green Park FLOOP」開業リリース

パナソニックが手掛ける次世代クリエイティブミュージアム「AkeruE」

アケルエ内の展示空間「アストロ」内のインスタレーション展示を子どもたちが体験している様子

「AkeruE(アケルエ)」は、パナソニックが東京・有明に開設したクリエイティブミュージアム。企業ミュージアムの枠組みを超え、科学館と美術館の要素を兼ね備えた教育展示施設として、新たな学びや体験を通じて、子どもたちのクリエイティブな力を育む施設です。(2024年12月閉館)

ロフトワークは、「AkeruE」のコンセプト立案から空間設計、プログラム企画まで包括的に支援し、委託を受けての運営も行いました。

展示やプログラムを通じて、パナソニックとして次世代人材の育成に貢献しつつ、ともに手を動かしながら子どもたちの記憶にポジティブに残るコミュニケーションを実践。企業のファンづくりに繋げる施設として多様な活動を行ってきました。

アケルエ内の空間「テクニート」で、たくさんの子どもたちがデジタルファブリケーション機材を活用しながら、工作を楽しむ様子
アケルエ内の空間「フォトン」内で、姉妹が撮影用ステージで動画の収録を行なっている様子

三井化学による社内外の共創を促す拠点「Creation Palette YAE®

ディスプレイや什器上に表示された、三井化学の企業の歩みや素材活用などの展示情報を、訪問者3名が閲覧している

「Creation Palette YAE®」は、三井化学株式会社が本社機能を持つ八重洲ミッドタウン内に設立した、多様なステークホルダーが集まり、対話を通じて新たなアイデアの創出を目指す共創型施設です。

施設内には、5つのゾーンからなる展示エリアに加え、応接エリア、コワークエリアなどが設置。同社の歩み、製品・技術の特徴を体験できる展示コンテンツを起点に、新たな活動創出に向けたコミュニケーションを促します。

ロフトワークは、この施設のコンセプト立案から空間設計、展示什器やシステムの設計、コミュニケーションデザインまでトータルで支援。ハードとソフトの両面から、共創の実現をサポートしています。

3名の訪問者に、三井化学の素材を使ったデモンストレーションを女性スタッフが行なっている
たくさんの展示什器が並ぶ、デモンストレーション用のエリアの全体像

施設の詳細については、以下の事例記事をご覧ください。

Creation Palette YAE®プロジェクト詳細

拡張する企業ミュージアムの可能性。そのポイントとは?

近年の企業ミュージアムは、企業の歩みや技術を伝える場という枠を超え、新たな価値を持つ施設へと進化しています。これまでに紹介した3つの事例から、企業ミュージアムが提供しうる新たな価値を整理すると、以下のポイントが見えてきます。

教育推進とブランド価値向上の両立

「AkeruE」のような施設は、展示やプログラムを通じて次世代の創造性を育みつつ、企業のブランド価値を高める場として機能しています。将来のステークホルダーである次世代との関係を醸成し、社会貢献とブランディングを両立させる新たな価値を創出しています。

多様なプレイヤーが集い、共創から価値を生み出す

「Creation Palette YAE®」は、企業と多様なステークホルダーが集まり、新たな価値を共創する場として設計されています。従来の企業ミュージアムの「伝える」役割を超え、多様な人材が集い、ビジネスや社会課題解決に向けた新しいアイデアを生み出す拠点へと進化しています。

地域との連携・社会課題への貢献

「Green Park FLOOP」は、地域社会に開かれた施設として、環境問題や持続可能性といったテーマを通じて、訪問者に考えるきっかけを提供しています。このように、企業ミュージアムが地域や社会との接点を生むことで、これまでのCSR活動を超えた社会的価値を創出しています。

これらの施設は、単なる情報発信やブランディングを超え、次世代育成や共創、地域連携といった企業活動の幅を広げる役割を果たしています。その結果、企業と訪問者の間に新たな価値の接点が生まれ、ブランドの信頼性を高めつつ、経済的・社会的価値に寄与することにつながっていきます。

このように、これからの企業ミュージアムは、「企業の価値を伝える場」から「未来を共に創る場」へと進化していくことが期待されています。

ロフトワークは、企業ミュージアムの企画・設計・運営をトータルで支援します

ロフトワークは、コンセプト立案から空間設計、プログラム企画、運営支援まで、トータルで企業ミュージアムづくりをサポートします。特に、ブランド価値向上や共創の実現を目指す空間づくりを得意としています。

また、「企業ミュージアム」以外にも、研究開発・ブランディングなど、多様な目的に対応した空間づくりや、空間を活性化するプログラムの企画・運営についても、数多くの実績があります。詳細は、以下の事例記事をご覧ください。

支援事例に関するより詳しい紹介や、具体的なプロジェクトに関するご相談については、以下のお問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。

執筆:後閑 裕太朗(Loftwork.com編集部)

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