パナソニック株式会社 PROJECT

次世代の創造性を育むクリエイティブミュージアム
「AkeruE」施設開業プロジェクト

Outline

パナソニック株式会社は、有明にある同社のグローバルな総合情報受発信拠点「パナソニックセンター東京」2・3階に、「クリエイティブミュージアム」という新しい概念を打ち立てた新施設、「AkeruE(アケルエ)」をオープン。ロフトワークは同施設の総合プロデュースを支援しました。
AkeruEのコンセプトは、「ひらめきをカタチにするミュージアム」。3つの展示・体験空間——「ふしぎにであう『ASTRO』」、「つくって、遊ぶ『COSMOS』」、「つたえてつながる『PHOTON』」——を軸に、子どもたちが楽しみながら体験を通じてアートと理学・工学を学び、その場で実践、さらに発信できるプロセスが構成されています。
AkeruEは施設体験を通じて、子どもや若者世代がVUCA時代において不可欠な創造力を育む、新しい教育展示施設のあり方を提示しています。

執筆:石部 香織
編集:岩崎 諒子(loftwork.com編集部)

Project Scope

本プロジェクトでは、ロフトワークで空間プロデュースに特化したプロジェクトを担当するチーム「LAYOUT」ユニットがパートナーとなり、開業に向けた業務を全面的に支援。コンセプト立案から、空間設計ディレクション、コンテンツ企画、コミュニケーションツール制作をトータルでプロデュースしました。

Outputs

日本初、クリエイティブミュージアム

AkeruE コンセプトムービー

AkeruEは、知性を育む科学館の要素と、感性を育む美術館の要素を兼ね備えた、学びや体験を通じてクリエイティブな力を育む場です。理数の魅力に、エンジニアリング、テクノロジー、アートの分野を融合。みる、つくる、伝える体験を通して、子どもたちの創造性あふれる行動を支援し、次代を担う人材の育成支援活動を行います。

今回、パナソニックセンター東京の2Fと3Fにわたる2フロアに、子どもたちの「ひらめき」をカタチにする6つのエリアを開設しました。

展示・体験

ふしぎにであう『ASTRO』

新進気鋭のアーティストたちによる、科学・技術・工学・数学・芸術を組み合わせたSTEAM作品を紹介する展示エリア。

中山 晃子《赤い緑、黄色い青》

邦高 柚樹《アクアポニックス》

PANTOGRAPH《アイデアタワー》

児玉幸子/ 竹野美奈子《突き出す、流れる》

油井 俊哉/横田 智大/橋田 朋子《floatio》

筧 康明 / 松信 卓也《Coworo》

前川 和純《stand》

作品を展示するだけでなく、作品を構成している原理や仕組みを分解し、体験を通じて学習できる原理展示も16点設置。例えば、紙に任意で書いたさまざまな色の線をセンシングすることで音楽を鳴らす作品の原理展示として、プログラミング、色感知センサー、スピーカーの仕組みをそれぞれ体験できます。

スズキユウリ《Looks Like Music》

つくってあそぼう『COSMOS』

「つくってあそぼう」をテーマにした、展示台のある工房スペース。来場した子どもたちが、リサイクル素材などを使って自由に工作できます。出来上がった作品を撮影してスペース中央の展示台に展示すると、センシング技術によってAIが展示台をキュレーションします。子どもたちの多様な作品が組み合わさることで、ひとつの世界が生まれるイメージを体現しました。

つたえてつながる『PHOTON』

「つたえてつながる」をテーマにした体験スペース。撮影用のミニスタジオやステージが用意されており、動画撮影や制作ができます。完成した映像はアーカイブされ、スペース内の巨大スクリーンで紹介されたり、AkeruEのYouTube公式チャンネルで紹介されます。

空間デザイン

クリエイティビティを刺激する5つの空間キーワード

来場者はもちろん、スタッフも含めてその場にいる全ての人々のクリエイティブへのモチベーションを高めるために、AkeruE空間の五感として「よごしていい感」「自分でつくれそう感」「組みかえられる感」「枠にはまらない感」「みんなでセッション感」という、5つのキーワードを設定。これらの要素が各エリアの展示テーマや活動内容に最適なバランスで共存できる状態をデザイン・実装しました。

サステナビリティを空間づくり・体験づくりに活かす

次世代に向けたSDGsへの意識醸成を目指し、空間・家具のデザインは継続性・更新性・持続可能性に配慮。既存空間を活用することで解体費用を抑えつつ、アップサイクルや3R(Reuse, Reduce, Recycle)への挑戦が空間のクリエイティブの原動力になっています。

捨てられる予定だったソーラーパネルを天板にしたテーブルや、跳び箱のベンチなど、廃材を活用したインテリアが散りばめられている。

AkeruEは、パナソニックの次世代育成支援施設『RiSuPia(リスーピア)』の後継施設。そこで、空間をリニューアルするにあたり、RiSuPiaで使われていた天井材をツールウォールや目隠しにアップサイクル。さらに、元あった展示の撤去跡を施設の歴史としてデザインに活かすなど、補修個所を最小限に抑える工夫も。

VI・ロゴ

デザイン: 岡崎智弘(SWIMMING)

シンプルな丸のみで構成されたAkeruEのロゴマークは、あらゆる表現に使われる普遍的な形である“まる(丸・円・球)”を、点や領域に見立て、配置や関係性、構造体として捉え直しています。五感を示す5つの”まる”を、大きな”まる”の中に集合させることで、自然やアートの中から原理を知り、ひらめきをカタチにする場所であることを表現しています。

また、大きな円の中心を貫く水平垂直から「地球の軸の角度 23.4度」「水分子の結合角度 104.5度」「フィボナッチ数列から導き出される黄金比の角度 137.5度」「正三角形の内角 60度」それぞれの角度の位置に小円を配置。自然や数理から原理を知り、事象を観察し、自分の想像を発見していく場であるという姿勢を体現しています。

ツール・サイン

館内のサインやハンドアウト、ポスター、看板、案内図など、およそ150点のツールを制作。一例として、AkeruEならではの学びのサイクル「ふしぎにであう」「つくってあそぼう」「つたえてつながる」を促進するためのツールとして、来場した人に配布する「ひらめき手帳」を制作しました。

Story

VUCA時代を生きるための横断的な教育を実践する

パナソニックセンター東京2・3階では、2006年より14年間、「理数の魅力」と触れ合うことをコンセプトとした体験ミュージアム「RiSuPia(リスーピア)」が運営されてきました。累計460万人の来客と2万近くの学校機関が訪れ、次世代育成支援に貢献してきたRiSuPia。一方で、テクノロジーの進化による社会の変化に伴い教育の役割も変わり、施設のテーマを見直す時期に来ていました。
さらに、今の教育の潮流は、これまでの「分野ごとの学習」に対し、複数領域の知識を横断しながら統合的な「知」を身につける学びへと変化しつつあります。

そこでプロジェクトチームは、科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engeneering)・数学(Mathmatics)・アート(Art)を統合的に学ぶ「STEAM」と、創ることで学ぶ「クリエイティブラーニング(Creative Larning)」に基づいた「創造的な学び場」へと、施設をアップデートすることを提案しました。
「クリエイティブラーニング」とは、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの教授ミッチェル・レズニック教授が提唱する教育のスキームです。この概念は、パナソニックの創業者である松下幸之助が唱えていた「つくる人をつくる」の理念にも通じています。
目指したのは、「体験型」の先を行く創造型・共有型の施設。科学館・美術館でありながらアトリエとラボの要素も併せ持つ、日本初の「クリエイティブ・ミュージアム」を創設しました。

エントランスにある、合わせ鏡の間『ワームホール』。このサインは、クリエイティブ・ラーニングの考え方における「創造的な学びのスパイラル」をAkeruEらしい言葉で再解釈している。

コロナ禍を乗り越えながら、100名のメンバーが参画する複合プロジェクトを統括

今回、「日本初のクリエイティブミュージアム」という、まだ誰もみたことがない場を立ち上げることをゴールに「事業計画」「空間設計」「ブランド構築」「コンテンツ企画」「運用設計」「PR」「コミュニケーションツール構築」といった、7つの領域でプロジェクトを進行しました。

プロジェクトチームにはパナソニックとロフトワークに加え、空間設計から実装を担当した乃村工藝社、展示や施設プログラムなどのコンテンツ企画・制作に関わるクリエイター陣、運営スタッフなど総勢100名近くのメンバーが参画。これらの動きを統合する複合的なプロジェクトマネジメントが必要でした。さらに、2020年はコロナ禍の影響で半年間の活動休止を余儀なくされるなど、常に先の状況が見えない中で、複合プロジェクトを管理・進行しなければなりませんでした。

ステークホルダーそれぞれが使用可能なツールも異なるため、プロジェクト期間中に稼働したコミュニケーションツールの数は『slack』9ワークスペース(#178チャンネル)、『Basecamp』10ワークスペース(452スレッド)、メッセンジャーグループ十数本にも渡りました。ロフトワークのメンバーはこれらのチャンネルやスレッドを横断しながら、自身の担当領域の動きを細かく丁寧に把握しつつ、他の領域のPMからも常に進捗や状況が「見える」環境を作ることでスムーズな連携を図りました。

さらに、先が見えない状況の中でチームのモチベーションを高める工夫として、日々アップデートされるコンセプト資料を全領域のプロジェクトメンバーに向けて共有。各領域のプロジェクトマネージャー(PM)が現場で的確に判断できる状況を作るとともに、チームの中で「必ずプロジェクトをゴールさせる」という空気を醸成しました。

プロジェクト概要

クライアント名:パナソニック株式会社
プロジェクト名:パナソニックセンター東京 2-3F リニューアルプロジェクト

体制

株式会社ロフトワーク

  • プロデュース:松井 創
  • プロジェクトマネジメント:越本 春香
  • 空間ディレクション:河村 慧
  • 展示ディレクション:佐川 夏紀、武田 真梨子、飯沢 未央
  • 運営設計:河合 美咲、小菅 奈穂子、浅井 亜紀子、棚橋 京平、仲村 健
  • Webサイト構築;飯島 拓郎、村田 真純、北島 織子、上村 直人、皆川 凌大、新澤 梨緒

制作パートナー:

  • プログラム設計:近森 基(plaplax)、鈴木 順平(unworkshop) 
  • VI・サインデザイン;岡崎 智弘(SWIMMING)
  • 展示制作:
    • 井上 仁行(パンタグラフ)
    • 邦高 柚樹(モンドワークス株式会社)
    • 児玉 幸子(メディアアーティスト、電気通信大学准教授)、竹野 美奈子(陶芸体験ラボkai主宰)
    • スズキユウリ(サウンドアーティスト、ペンタグラムパートナー)
    • 中山 晃子(画家)
    • 前川 和純(東京大学 先端科学技術研究センター特任助教、研究者・アーティスト)
    • 松信 卓也(エンジニア、デザイナー)、筧 康明(インタラクティブメディア研究者、東京大学大学院情報学環准教授)
    • 油井 俊哉(メディアアーティスト)、横田 智大(エンジニア)、橋田 朋子(研究者)
  • 空間展示デザイン
    • 山口 茜(株式会社乃村工藝社)、古賀 紗弥佳(株式会社乃村工藝社)、佐々井 歩(株式会社乃村工藝社)谷 清鳳(株式会社乃村工藝社)、中出 未来之(株式会社乃村工藝社)
  • Webデザイン
    • 依田 樹彦(yodadesign)

Member

松井 創

株式会社ロフトワーク
Layout Unit CLO(Chief Layout Officer)

Profile

越本 春香

株式会社ロフトワーク
Layout Unit CCO

Profile

河村 慧

株式会社ロフトワーク
Layout Unit ディレクター

Profile

佐川 夏紀

株式会社ロフトワーク
Layout Unit ディレクター

Profile

河合 美咲

株式会社ロフトワーク
Layout Unit ディレクター

Profile

武田 真梨子

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

小菅 奈穂子

株式会社ロフトワーク
Layout Unit ディレクター / SHIBUYA QWS コミュニティマネージャー

Profile

飯島 拓郎

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

村田 真純

株式会社ロフトワーク
テクニカルディレクター

Profile

上村 直人

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

皆川 凌大

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

浅井 亜紀子

株式会社ロフトワーク
Layout Unit ディレクター

Profile

北島 識子

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター / デザインエヴァンジェリスト

Profile

新澤 梨緒

株式会社ロフトワーク
プロデューサー

Profile

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