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松井 創 2022.03.23

名付けもクリエイティブに 
〜「場」のネーミングを楽しもう!

温故知新、リミックス、アナグラム。3つの名付けの手法を解説

ロフトワークで、空間のデザインを行うLAYOUT ユニット
LAYOUT チーフオフィサーの松井は、これまで「KOIL(コイル)」「100BANCH(ヒャクバンチ)」「AkeruE(アケルエ)」などの空間デザインプロジェクトをリードし、「場」の名付けにも取り組んできました。

コンセプト・メイキングの要でもあり、場のアイデンティティを決定する、名付け。とても難しそうに思えますが、松井は訓練すれば、誰でも唯一無二のネーミングができるといいます。松井がこれまで作り上げた場の名付けを例に、その手法をご紹介します。

松井 創

Author松井 創(Layout Unit CLO(Chief Layout Officer))

1982年生まれ。専門学校で建築を、大学で都市計画を学ぶ。地元横須賀にて街づくりサークル「ヨコスカン」を設立。新卒で入ったネットベンチャーでは新規事業や国内12都市のマルシェの同時開設、マネジメントを経験。2012年ロフトワークに参画し、100BANCHや SHIBUYA QWS、AkeruEなどのプロデュースを担当。2017年より都市と空間をテーマとするLayout Unitの事業責任者として活動開始。学生時代からネットとリアルな場が交差するコミュニティ醸成に興味関心がある。2021年度より京都芸術大学・空間演出デザイン学科・客員教授に就任。あだ名は、はじめちゃん。

Profile

 編集:鈴木真理子(株式会社ロフトワーク)

*本記事は、松井のnote 記事をベースに編集しました。

コンセプトを体現する「名付け」は、悩みつつも楽しいプロセス

昔から「名は体を表す」と言われます。名付けはコンセプト・メイキングの要であり、アイデンティティの確立であり、ブランディングそのもの。親が子供に名前つけるとき、どんな人であって欲しいか願いを込めたり、料理店のオーナーがコンセプトを店名で表現したり。ネーミングとは、誰もができるクリエイティブで楽しい行為です。

私自身、息子の名前をつける時は人生で一番悩みましたが、とても楽しく豊かな時間でした。息子の「昴(スバル)」という名前には、「たくさんの星のまとまりである昴のように、個人の中にある”複数の個性”を大事にしてほしい。多感で複雑な人間という存在に寛容で優しくあってほしい」という願いを込めました。

これまで、ロフトワークがプロデュースしてきた空間も「KOIL(コイル)」「100BANCH(ヒャクバンチ)」「AkeruE(アケルエ)」など、唯一無二の名付けに取り組んできたことから、場に名前をつけることへのこだわりは、常にLAYOUTメンバーにも伝えています。

今回は、そのネーミングの技法について共有します。技法といっても、とても簡単なことです。誰でもできます。

「CODO (コードー)」で使った2つの名付け技法

まず鈴与株式会社の本社につくった共創オフィスの名前「CODO(コードー)」を題材に二つの技を紹介しましょう。CODOは、鈴与のこれからの変革を表現する本社リニューアルの中で、プロジェクトの核となるコンセプト空間です(写真)。

技法1:温故知新

まずは温故知新で考えてみること名づけの手がかりとして、「そもそも」や「もともと」を深掘りします。

新しく作る場が、元来はどのような場であったのか、何を残し未来につなげるのか洗い出してみると、ネーミングのヒントが見つかります。

鈴与は400年を超える老舗企業。長年、培ってきた経営理念に対して新しい取り組みが流行に流されないよう配慮することは、新しいことを始めるからこそ大事にしたいものです。様々なキーワードを経営目線で挙げ、優先づけして絞った言葉が「ともいき」でした。鈴与には、兼ねてから「ともいき」という経営スローガンがあります。「共に生きる」「共に行く」という意味の「ともいき」。Co-Creationや Co-Working, Co-Living……があるならば、ともいきは、「Co-Doing(Co-Do)」と言い表せる(やや強引)。

技法2:リミックス

一つの空間に一つの名前しか付けられないけれど、名前の背景には複数の想いがあり、複数の意味を沢山込めたい時、<日本語のような英語>+<英語のような日本語>の掛け合わせで解決するこの「リミックス」が技法2です。

この空間は、もともとは本社の「講堂(こうどう)」でした。入社式や社内行事として使われてきた大講堂をリノベーションして社内外が共創する「新しいコードー」にアップデートする。変わらない「ともいき(Co-Do)の精神と生まれ変わる「講堂(コードー)」を掛け合わせてCODOと名付けました(ダブル・ミーニングです)。

逆にやらないことは、英語そのもの(例えばS-Labo)、または英語由来の造語(Spacy)や略語(SZY)。読み方に揺らぎがあるし、共感を生みづらいのであまりおすすめしません。ただ、日本語のままだと野暮ったくなるし、英語の方がその後のデザインに応用しやすい。そこで次に英字を組み替える手法を使って新しさをつくる技をご紹介します。

3つの技法を合わせて生まれた「AkeruE(アケルエ)」

技法3: アナグラムとリバース・スペリング

パナソニック・クリエイティブ・ミュージアム「AkeruE(アケルエ)」では、技法1、2に加え、3つ目の技、文字をランダムに組み替える(アナグラム)、または倒語にしてみる(リバース・スペリング)を使っています。

AkeruE(アケルエ)というネーミングは、立地の「有明(アリアケ)」と子供たちが新しい時代の夜明けをつくる、好奇心の扉・未来への扉を開ける、そして現代に風穴を空けるなどの期待を込めて「アケル=明ける・開ける・空ける」をベースにしています。AkeruEを開設する有明は「(新しい時代の)夜明け、明け方」という由来があり、またパナソニック自体が、「未来感、期待感を象徴する夜明け、地平線から太陽があがる 直前の空=有明」からコーポレートカラーにブルーを選んでいる(←技法1:温故知新)

つくる空間は、子供のたちの「ひらめきをカタチにする」「クリエイティブなミュージアム」がコンセプト。子供の創造性には「ひらめき=いいこと考えた!」がキーワードだと考えていました。そして言葉探しをしているうちに見つけたのが「Eureka(エウレカ=ギリシア語で、わかった、ひらめいた)」。

そして、「有明」 × 「アケル」 ×「エウレカ」に対して、リミックス(技法2)、そしてリバース・スペリング(技法3)を同時に行い、「アケルエ=AkeruE(逆から読むとEureka)」と集約。

これを思いついた時は「エウレカ!(ひらめいた!)」と脳内で叫びました(笑)。

末永く人々に愛されるネーミングに勝るものなし

温故知新、リミックス、アナグラム……3つの技法を混ぜすぎることもまた危険を孕みます。が、複数の視点を統合していくことにデザインする面白さがあります。

唯一無二の名前をデザインするという行為は、空間デザインと同等に楽しく、創造的な行為。もちろんネーミングよりも前に、どのようなコンセプトの場づくりをしたいか議論することは、欠かせません。

しっかり議論できたならば、コンセプトを体現するネーミングにおいてアイデアを出し、垂直統合させていくことは決して難しいことでなく、幾度か訓練すると誰でもできるようになるはずです。(ただしクライアントとの最終的な合意形成は別問題!)ぜひ、ユニークなネーミングに挑戦してみてください。

最後に、技法はなんであれ「その場に集う人々が末永く愛せるネーミングを考えましょう。」……これが一番難しいですね!

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「同一化への恐怖が僕の原点」
ロフトワークの“異分子”原亮介のクリエイティブ論