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青山 俊之 2026.07.13

夜ふかし大学 第一夜レポート
──なぜ、大学の未来を「誰もが」企む場をつくったのか

「一つの問いに対して、多様な人が集まり、誰と話してもディスカッションが深まる稀有な場だったと思います。自分もこういった場の企画者として、学ばせてもらうこともとても多かったです」

第一夜の参加者アンケートに、こう書いてくれた方がいました。満点の満足度よりも、うれしい回答です。

あらためまして、夜ふかし大学を企画したマーケティング部の青山俊之です。

この企画、会う人みんなに「いいネーミングだね」「面白い」と言ってもらえ、とても光栄です。同時に、(ぶっちゃけそこそこのコストを割いて)「なんでこのような企画をしてるんですか」と聞かれることもありました。

本レポートは、その疑問にお答えするものです。なぜ・どう大学の未来を、「誰もが」ゆるく本音で企てるのか? この夜がどんな場だったかを振り返りながら、つらつらとぼくが考えた未来の大学の道筋を語ります。

※ 夜ふかし大学は、東京と大阪の二拠点で展開しています。本記事は、5/15に実施した東京会のレポートです。

青山 俊之

Author青山 俊之(マーケティング/リサーチ(Ph.D.)/編集)

千葉県茂原市出身。筑波大学大学院国際日本研究学位プログラム博士後期課程修了、博士(国際日本研究)。専門は言語人類学を中心に、ことばと歴史・社会文化の関係を編み直す「ディスコース研究」。編著に『ディスコース研究のはじめかた──問いの見つけ方から論文執筆まで』(ひつじ書房、2025年)。博士論文では「日本の自己責任論」をテーマとし、現在『聴す責任』として刊行準備中。学部生時代には、学術系メディアの立ち上げやコワーキングスペースの運営、Web制作に携わる。大学院では、人文系出版社での編集やイベント企画・運営を経験。YouTubeチャンネル「青山俊之のゆるす責任論|ことばと空気ゼミ」を運営中。アカデミズム、ジャーナリズム、マーケティング領域を横断しながら、編集・企画運営業務に取り組む。ラーメンとWebと、「Mr.Children」のようなあべこべが好き。世界を斜め下から眺めながら、まっすぐ進むのが落ち着くタイプ。

Profile

これまでの大学から、「夜ふかし大学」へ

まず、いま大学が置かれている状況を、ぼくなりに整理させてください。

最近、「2035年の崖」が話題です。18歳人口はこれから十数年で約3割減り、大学の統廃合も避けられないと言われています。

青山によるイントロダクションの様子
青山によるイントロダクションの様子
私大削減ニュースを取り上げたポスター
私大削減ニュースを取り上げたポスター

ただ、ぼくが気になっているのは、その数字よりも構造です。

日本の大学は、長らく18歳を中心に、若者を社会へ送り出す仕組みとして発展してきました。しかし、社会のあり方が変わるなかで、その前提自体が揺らぎ始めています。だからこそ、学びを18歳の外へ広げ、大学を社会との関係のなかで編み直していく視点が、これまで以上に求められているのではないでしょうか。

そして、もうひとつ感じていることがあります。それは、「大学について語りたい人」が、大学の内外を問わず想像以上に多いことです。期待もあれば批判もある。建設的な提案もあれば、厳しい非難もある。それでも、多くの人が大学に対して何かしらの思いを抱いているのは明らかです。

だったら、その声が交わる場をつくってみよう。

夜ふかし大学は、そんな発想から始まりました。

目指したのは、「語りたくなる場」

第一夜でとにかく意識したのは、参加者のモチベーションを削がない、できれば高めること。その一点で、夜の流れを作りました。

そこで大事にしたのは、肩書きより先に「その人の素」が出てくる空気です。アイスブレイクには、カタルタというカードを使った名刺交換ゲームを用意しました。自己紹介をしながら、偶然めくった接続詞(「さらに」、「言い換えれば」など)に沿って話すので、咄嗟の会話に思わず素が出やすいんです。「これで大丈夫か」と実はスタッフに少し怪しまれていたのですが、まんまと場がほどけ、その勢いのままライトニングトーク(LT)へなだれ込みました。

接続詞が書かれたトランプ「カタルタ」
接続詞が書かれたトランプ「カタルタ」
カタルタ名刺交換ゲームの様子
カタルタ名刺交換ゲームの様子

LTには、コメンテーターとして、イベント企画のきっかけとなった「大学の未来 #4」イベントのゲストである、東京科学大学の辻本将晴先生と、QWSエグゼクティブディレクターの野村幸雄さんにお越しいただきました。LTに対し、お二人の知見と経験を踏まえた、問いや反応が返り、議論の熱が一段上がったのを当日感じました。

本企画の立ち上げのきっかけともなった前身イベント「大学の未来 #4」のレポートはこちらです。LTのコメンテーターを務めた辻本先生・野村さんをゲストに迎え、MITやSHIBUYA QWSを例に「熱量のあるカオスな共創拠点の生み出しかた」を深掘りしています。夜ふかし大学の熱気の源流を知りたい方は、ぜひ覗いてみてください。

大学の未来 #4 レポート 施設と一緒に「熱」をつくる。 MITとSHIBUYA QWSに学ぶ、カオスな共創拠点の生み出しかた

東京科学大学, 辻本将晴先生
東京科学大学, 辻本将晴先生
渋谷QWS, 野村幸雄さん
渋谷QWS, 野村幸雄さん

けど、実は進行は、あえて後半の「交流会」に重心を置いていたんです。前半1時間でLTや「なぜ今日ここに来たのか」を分かち合い、残りの1時間は、お酒とつまみを用意してまるごと交流会に。狙いは思った以上に当たり、終了時刻を過ぎても熱は冷めず、多くの人が残って話し込んでいました。

そして、重要なのが資料の扱いです。会場には、昨今の大学をめぐるニュースやためになる記事・書籍・ポスターを配置していました。けれど、これらは会話を盛り上げるいわばアイテム。あえて一切説明しませんでした。

代わりに、用意したのが二種類の持ち帰り資料です。ロフトワークの大学ブランディング支援をまとめた「組織向け」と、肩の力を抜いて大学を考える「個人向け」の二種類。配置資料は語りのフックに留め、個人で来た人が自分のモチベーションを高め、それを組織へ、外へと持ち帰れるようにしました

これが夜の熱を、その場かぎりで終わらせないための仕掛けでした。

会場に配置した関連書籍
会場に配置した関連資料

「動きたくなる」クリエイティブ、スタートアップ、そしてマネジメント

この夜の火付け役が、3組のゲストによるLTでした。「動きたくなる組織」をゆるく本音で考える──そのテーマに、大学の外側や境界線で活動するプレイヤーが登壇してくれました。

トップバッターの根本明史さん(三菱ケミカル)は、社外のアーティストや異分野との個人的な交わりが、ミラノデザインウィークでの受賞という非連続なジャンプにつながった実践から、組織の壁をほどくクリエイティブの力を示してくれました。続く安藤太一さん(日本政策金融公庫)は、大学発スタートアップを阻むのは資金以上に「CEOとなりうる人材の不足」だと指摘し、「ビジョンを持った研究者や学生を増やす必要がある」という問いを投げかけます。締めくくりの研究者としての顔と地域自治体の実践者でもある韓昌熹さんは、「組織は動いていなくても、個人はすでに動いている」という現場の実感から、個人の熱を潰さない「引き算のマネジメント」を語ってくれました。

根本さんが発表する様子

根本さんが発表する様子

安藤さんが発表する様子

安藤さんが発表する様子

韓さんが発表する様子

韓さんが発表する様子

  1. LT発表1

    「動きたくなる組織」をゆるく、本音で考えるライトニングトーク
    素材メーカー×デザイン、アート
  2. LT発表2

    大学が日本を変える!?
    期待と現実の差は今、どれくらい?
  3. LT発表3

    個人のリソースを出したくなる組織について
    〜 貢献が「リスク」にならないための処方箋 〜

個人や組織に熱と問いを投げかける「アート」、大学の構造と環境を問う「ビジネス・起業」、それを組織で受け止め育てる「マネジメント」。この3つが連続して投げ込まれたことで、参加者も多角的に思考を巡らせるきっかけになったはずです。自分ごととして考える着眼点が生まれ、この後の語りに火が灯りました。

大学への期待と課題が招く、外からの関心

その火を囲んでいたのが、どんな人たちだったのか。あらためて名簿を紐解くと、もちろん大学の人はいます。広報、社会連携、地域連携、大学の研究を支えるURA、施設運営、そして大学院生や学部生まで。実にバラバラでした。

何より、半分以上が「大学の外」の人たちだったんです。

政府系金融機関でスタートアップ支援をする人。大手メーカーの経営企画や研究部門の人。総合研究所やコンサルティングファームの人。デザインやクリエイティブの会社を営む人。人事の領域で組織づくりに取り組む人。行政で市民の協働を推進する人。不動産や、街場でものづくりを続ける人。役職も、経営者から現場の担当者、学生まで、見事に縦に広がっていました。

LT後のグループディスカッションの様子
カタルタ名刺交換ゲームの一場面

正直、これはぼく自身が驚いたことでした。「夜ふかし大学」と銘打った、しかも平日の夜のゆるい集いに、これだけ大学の外の人が集まってくる。

思えば、これこそが夜ふかし大学の言いたかったことを、そのまま形にしていたのかもしれません。大学の未来は、大学の中だけで閉じて考えきれなくなっていること。そして、18歳に限らない、大学への期待感と課題感への熱を、集まった顔ぶれそのものが証明してくれていました。

なぜ、ロフトワークがこの企画に取り組むのか?

さて、そろそろ最初の疑問に戻ります。「なんで、こんな企画をしてるんですか」。

正直にお答えすると、大層な戦略があったわけではありません(考えていないわけでもありません!)。2026年1月末に実施した大学の未来 #4で参加者から勉強会・交流会の企画要望があったこと、会社としてもやってみたらと声がけがあったこと、そして個人としてぼくがやりたいこととやるべきと思うことを重ねた結果、最初の一歩がこうなりました。

あえて言うなら、「いい仕事をするためには、いい出会いから」というスタンスがロフトワークにあったから、こうした企画がスタートできたのかもしれません。これは、ぼくが所属するマーケティング部のリーダーが語ったことばなんです。

まさにその通りだと腹落ちしていて、最近、よくこの表現を使っています。というのも、立派な戦略や事例をいくら並べても、それを一緒に面白がってくれる相手がいなければ、物事はなかなか動きません。ビジネスは、究極、「どう独りよがりにならないか」が問われる営みだと思います。大学がまさにそうであるように、社会や市場の変化への適応はまさにこの問題だと思います。

参加者と語らう青山の様子

もうひとつ。ロフトワークは「学び」や「大学の未来」を掲げて、この事業を行っています。だとしたら、掲げている自分たちこそ、まず誰よりも学ばなければならないだろう、とも思っていました。本当に難しい課題には、わかりやすい答えはありません。わからないことだらけだからこそ、いろんな人と一緒に考えなければならない。夜ふかし大学は、その気持ちを、そのまま場にしたものです。

だから、ぼくらは答えを配りませんでした。そうではなく、聞いているうちに自分も言いたくなる、気づけば自分の現場の話をしている、隣の人と企みはじめている、そして自分や他者に対する「なにか」を更新したい人になる。そんな参加者が「観客」でいられなくなる場になったら運営者冥利につきます。

その企みが届いたのかもしれない、と思えた瞬間がありました。冒頭のコメントです。

「自分もこういった場の企画者として、学ばせてもらうこともとても多かった」

この方は、お客さんとして来て、「つくる側」の目線で一緒に夜を過ごしてくれていました。ぼくがこの夜に向けて考えていたことの兆しが見えた気がしました。

「面白がる力」が誘う道

夜ふかし大学 第一夜のテーマは、「動きたくなる組織」です。なぜこのテーマだったのかは別の機会に譲りますが、少し一般論に触れてみましょう。

立派な理念を掲げたのに、現場の行動がなかなか変わらない。動きたい人はいるのに、一人で抱え込んで続かない。会議室では前向きなことばが並ぶのに、部署の壁の向こうには届かない、などなど。

この夜に議論したことは、さまざまな現場でも起こる話です。では、その現実をどう変えられるのか。夜ふかし大学は、どんな貢献ができるのか。

正直に言えば、ぼくは「みんなで力を合わせれば変えられる」と、手放しで信じているわけではありません。共に創るというのは、口で言うほど簡単ではないからです。掛け声だけの連携は、たいてい続きません。けど、号令でも、正論でも、使命感でもなく、「面白がる力」から始まった企みは、もしかしたら想像したよりも遠くまで人を巻き込んでいけるのかもしれません

だとしたら、あなたの現場で、最初に「面白がって」動き出すのは、誰でしょうか。もしかしたら、それはあなた自身かもしれません。

一緒に、大学の未来を企みませんか?

夜ふかし大学は、わかりやすい「解決策」を提供する場ではありません。もちろん、解決可能な話題には応じますが、見据えているのはその先です。

ぼくらがやるべきだと思うのは、大学の中の人も外の人も、ゆるく本音で「大学の未来」を考えること。その仲間──言ってしまえば共犯者を、少しずつ増やしていくことです。第一夜に集まってくれた、あの雑多で豊かな顔ぶれのように、多様な人と出会う機会領域を広げていきます。

大学の未来は、18歳だけのものでも、経営者だけのものでもきっとないはずです。もちろん、教員だけでも、職員だけでも、学生だけでもないでしょう。学びに関心を寄せるあらゆる人が、それぞれの現場から取り組む。「誰もが、ゆるく本音で企む」。このレポートのはじめに掲げた問いへの、いまのところのぼくの答えです。

夜ふかし大学を準備する青山の様子

執筆・編集: 青山 俊之(株式会社ロフトワーク)
撮影:山口 謙之介(株式会社ロフトワーク)

「夜ふかし大学」は続きます。

「誰もが」企める場をひらくとはいえ、その試みを本当にクリティカルな発想へ育てるには、相応の知識と経験が要ります。

ロフトワークでは、大学に限らず、広義の教育や学びはもちろん、ビジネスやアートの領域も越境しながら、視野と視座を磨く場を提供していきます。

2026年、「Re:Creation(創造・余暇)」を題材にしたカンファレンス、そして夜ふかし大学もまさにその出会いと学びの場です。古くて新しい、オルタナティブな発想や関わりしろを求めている方は、ぜひ今後もロフトワークのイベントにお越しください。

次回:夜ふかし大学 第二夜(東京)「AI時代の大学広報は『なにをしない』のか」

夜ふかし大学 第二夜 AI時代の大学広報は「なにをしない」のか

ゲストに三輪哲也さん(愛知東邦大学, 事務次長・入試広報課長)、海老原星太さん(佛教大学, 学長室 入学・広報課)をお迎えし、生成AIの恩恵で「クリエイティブの民主化」が進むなかで、あえて大学広報が「なにをしないか」を、ゆるく本音で考えます。

第一夜と同じく、語りたく余白・時間は設けつつ、内外の関係者をつなぐ大学広報の可能性と課題に迫ります。大学広報には、志願者増を目指すマーケティング領域と、ステークホルダーをつなぐ役割、そして建学理念やビジョンを内外にカタチにするブランディング施策が重なります。多様な役割や課題が大学広報に求められるなか、なにをどう「やる/やらない」のか。ユニークな実践を続ける変革者をお招きし、これからの大学広報の「境界線」をみなさんとともに探ります。

開催日時:2026年8月28日(金)18:00 – 21:00(FabCafe Tokyo
参加費 :3,000円(軽食・ワンドリンク付き)

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大阪開催:夜ふかし大学 第二夜「『AI時代のPR・広報』をゆるく、本音で考える」

夜ふかし大学 第二夜「AI時代のPR・広報」をゆるく、本音で考える

夜ふかし大学は、大阪でも開催しています。第二夜「AI時代のPR・広報」は、関西チームが FabCafe Osakaで灯す一夜。大学・組織の「伝え方」は、AIによってどう変わるのか。第一夜で挙がった「AIと大学」「組織を動かす発信」をめぐる声を受けて、今度は”伝え方”そのものを肴に語り合います。

「AIツールは使っているけれど、本質的な伝え方がわからない」──そんな悩みを持ち寄れる場です。第一夜と同じく、現場のリアルな実践知(ライトニングトーク)を起点に、少人数で知恵を交換します。

開催日時:2026年7月17日(金)19:00 – 21:00(FabCafe Osaka
参加費 :1,000円(ワンドリンク付き)

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