相対評価を超えて、ビジョンへの共感を醸成する
沖縄大学 ブランディングプロジェクト
概要
ビジョンを可視化することで、偏差値競争からの脱却を目指す
米軍統治下の1958年に沖縄初の私立大学として創設された沖縄大学は、大学統合の危機や存続闘争など数々の苦難を乗り越えながら、常に「地域の人々の夢の実現」のために学びの場を提供し続けてきました。しかし創立から60余年という時間が流れ、進路の選択肢が増えた今、沖縄大学が提供できる価値が受験生に伝わらりづらく、偏差値競争という枠を超えて、魅力を打ち出せていないという課題がありました。
今後も沖縄大学が選ばれる大学でありつづけていくためには、大学を相対評価の枠の中で勝負するのではなく、ビジョンやスタンスを伝え、価値観への共感を得ることが大切です。そこで今回、公式WebサイトのリニューアルとVIの制作を通して、大学内でのインナーブランディングや沖縄の高校生や親世代からの支持を得るためのブランディングプロジェクトを、ロフトワークが支援しました。
大学のビジョンやスタンスを伝えていくために新たに制作したのが、沖縄県内の17歳の人生の選択肢を広げることをコンセプトに制作した「17歳へ。」というコンテンツ。沖縄大学の卒業生に限らず、自らの生き方を切り開いてきた方々を幅広く紹介することで、直接的に自学をPRするのではなく、沖縄大学の理念や社会、教育に対する価値観や思想を伝えています。
アウトプット
VI
ロゴマークは、「沖縄大学=交差する場所」ととらえ、大学を通して学生と沖縄をとりまく多様な人々が交差しあいながら、共に学び、共に成長し、さらに、沖縄の発展につなげていくことを目指していくという意思を表現。デザインは、カジマヤー(沖縄の風車)をイメージソースとし、あらゆる風が調和・共鳴しながら一つの大きな風となって、「これからの新しい沖縄大学」を共につくっていこうというメッセージが込められています。また、沖縄の森から海への「循環」を表す緑から青を用いたデザインカラーは、そのさまざまなトーンが多様性を表現しています。
沖縄大学公式Webサイト
関連リンク
新コンテンツ「17歳へ。」
1958年に設立され、さまざまな苦難を沖縄の人々と乗り越えてきた沖縄大学は、その独特な歴史を経て、地域に根差し、地域と共に成長してきました。学生一人一人のライフデザイン、キャリアデザインに向き合いながら、地域に貢献する人材を育成してきた教育機関でもあります。(沖縄大学のストーリーは学長の言葉を参照ください)沖縄大学が実現しようとしていることは、今も変わらず、沖縄で暮らす高校生たちが”多様な生き方がある”ということを知り、自分らしく人生を切り拓いていくための機会や幅広い視野を持つこと。
そこで、自分らしく生きている沖縄出身の方々へのインタビュー記事を制作しました。進路を考える17歳の高校生たちが主体的に生きるきっかけになることを狙い、成功談だけでなく、失敗した経験も含めてリアルな言葉を紹介しています。ポイントは、沖縄大学の卒業生に限定せず、「より良い沖縄をつくっていきたい」という想いに共感する方々を広く取材したこと。なぜなら、沖縄大学が大切にしている価値観を伝えることは、これからの沖縄という社会の未来にとっても重要な視点であり、未来の担い手を生み出していくことは、教育機関として沖縄大学が目指す在り方と直結しているからです。1年後の受験生を増やすという短期的な視点でスペックをアピールすのではなく、これまでのイメージを変え、より共感を得るために、長期的な視点で大学の価値観を伝えています。
関連リンク
成果
ロゴマークが「日本タイポグラフィ年鑑2021」に入選
沖縄大学の新ロゴマークが、NPO法人 日本タイポグラフィ協会が実施しているコンテスト「日本タイポグラフィ年鑑2021」に入選。タイプフェイス、ロゴタイプ・シンボルマーク、VI、グラフィック、エディトリアル、研究・実験など10のカテゴリーがあり、毎年国内外の応募作品の内、約400点が選ばれています。沖縄大学のロゴマークを含む、受賞、入選作品は、2021年4月発刊予定の書籍『日本タイポグラフィ年鑑2021』に掲載される予定。
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ロゴマークの名刺への展開
今回のプロジェクトで制作したロゴマークは、名刺や各種グッズへも活用されています。
メンバー
メンバーズボイス
“新型コロナ渦に沖縄-京都の物理的距離。山あり谷ありでハードルはいくつもありましたが、オンラインのコミュニケーションツールやドライブを使って効率的に作業を進めていただきました。でも、感染の波間に作業チームの皆さんが沖縄に来て、実際に現場の空気を感じながら教員や学生、高校生と直接会って話していただいた時間が、一番濃密でプロジェクトを前に進める大きな力になったと思います。大学側チームも一緒に相当汗をかき、最終的にネクストレベルに進めました。Webサイトは、常に変化が求められる終わりのないプロジェクト。がんばって育てていきます。ありがとうございました。”
学校法人沖縄大学 副学長・図書館長 経法商学科教授 小野 啓子
“「誰に」「何を」「どのように」伝えるのか。ロフトワークの皆様と本学メンバーが一つのチームになって議論し、共に試行錯誤を重ねたことで、リニューアルウェブサイトの目指すべき方向性が見えてきたように思います。ロフトワークの皆様のおかげで、本学理念である「共創」を実践できたプロジェクトになったと感じています。
「交流拠点」「循環」「多様性」などの意味合いを持つロゴマークの世界観とも連動したホームページに仕上がり、満足しています。ありがとうございました!”
学校法人沖縄大学 経営企画室 兼島 徹
“コロナ感染拡大の影響で、教育のオンライン化が急速に進む中、「大学で学ぶ価値」を何度も考えました。
でも沖縄大学の稀有な歴史や、徹底して地域や若者の将来を考える学内の方々の姿勢に触れる中で、その答えが見つかった気がします。
沖縄という土地の持つ独自性による感覚のすれ違い、なかなか訪問できないという壁もあり、プロジェクトメンバー内でも意見がまとまらないことも何度もありました。
それでも無事公開できたのは、沖縄県内と県外、そして学内と学外という境界を乗り越えて、粘り強くコミュニケーションしつづけてくれたメンバーの皆さんのおかげだと思います。本当にありがとうございました!”
株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター 基 真理子
“沖縄大学のみなさんに「この大学が目指していることは、なんですか?」とお聞きしたときに、はっきりと「人材育成です」とお答えいただきました。重みのある響きー言葉を受け取った瞬間のリアルな感覚を今でも鮮明に覚えています。創設時からの「沖縄の教育という物語」と密接に結びついた、「人材育成です」という明確な言葉こそ、存在意義を表すものでした。教育の原点は、人材を育成すること。当たり前のことではありますが、それを全員が同じように視座を高く持ち続けていることは、非常にすごいことだと思います。その想いに、なんとか、お応えしなくてはならない。LWメンバーの決意も、覚悟も、相当なものでした。
「共創」という言葉の「ほんとう」をこのプロジェクトほど、痛感したことはありません。何度も何度も、納得がいくまで話し合い、それぞれの肉声を聞くたびに、言葉もデザインも仕上がっていくことを実感していました。コロナという情勢下で、VIを全員で作った過程は、本当に大変ではありましたが、改めて「創造する」ことの本質を再認識することができました。ありがとうございました。”
株式会社ロフトワーク アートディレクター 小川 敦子
アーカイブ動画
プロジェクトに踏み切った課題や背景、アウトプットの狙いやプロセスなどをイベントでご紹介しました。
動画は以下からご確認ください。
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リサーチ〜CMSの選定までロフトワークのWebプロジェクトの特徴・進め方
プロジェクトの全体感をつかみ、戦略と戦術に落とし込むことで、Webプロジェクトの「成功のすがた」を描きます。
Activity
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地域、人、大学のつながりを「対話」を通して言語化 中部学院大学・中部学院大学短期大学部 Webサイトリニューアル
2021.06.22 #Webサイト #プロジェクトマネジメント #大学
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