株式会社三井住友フィナンシャルグループ PROJECT

環境・社会課題解決に向け、オープンな学びと共創の場で
これからのコミュニティの在り方を探る

Outline

ロフトワークは2020年7月より、株式会社三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)が運営する、環境・社会課題解決に取り組むコミュニティ「GREEN×GLOBE Partners」(以後、GGP)の連携パートナーとして伴走し、GGPを“共創の場”へと発展させるための支援を行っています。

執筆・編集:岩崎 諒子(loftwork.com編集部)

GREEN×GLOBE Partners(GGP)とは

株式会社三井住友フィナンシャルグループが運営する、環境・社会課題解決をテーマに活動するコミュニティです。

同社は2020年4月に「SMBCグループ サステナビリティ宣言」を策定。その中で、「ステークホルダーと共に行動することでより良い社会の実現へ貢献する」ことを掲げており、GGPはこの宣言を実践するための取り組みの一つです。

GGPの活動目的は、幅広い企業に向けて環境・社会課題に関する意識醸成を図ること。そして、志を共にする仲間が集い、学び合うことで課題解決に向けた新たなアクションが、このコミュニティ内から創発することを目指しています。

GREEN×GLOBE Partners Webサイト

環境・社会課題への理解を促し、解決に向けたコミュニティ活動をデザインする

ロフトワークは、これまでさまざまな企業や行政、自治体などが領域横断的に参加するコンソーシアムや共創コミュニティを運営してきた立場から、GGPコミュニティの運営を支援。SMBCグループと協働で、運営方針の策定からトークイベント、ワークショップの企画・運営などを行っています。
2021年から約1年間で、サステナビリティに関する国内外の最新トピックスを解説するトークイベントやワークショップなどを20件以上開催し、約2,500人が参加しました(2022年7月現在)。

SMBCグループとロフトワークはGGP運営チームとして、さまざまな環境・社会問題に取り組む有識者・実践者たちとのネットワークを広げながら、GGPのコミュニティとしての魅力を高めると同時に、参加者間の交流活性化と関係醸成を推進しています。

“サステナビリティ×コミュニティ”シリーズの問い

GGPはその活動の一つとして、「サステナビリティ×コミュニティ」をテーマに、全5回のイベントシリーズを企画・実施しました。
本イベントシリーズでは、「人類がいま直面している環境・社会課題とは、コミュニティ(共同体)の不在や機能不全によって生じてきた課題なのではないか」という仮説のもと、持続可能性とコミュニティの関係や、現在求められるコミュニティのあり方について検討。毎回さまざまな専門家や実践者を招きオープンな議論を行うことで、環境・社会問題解決に向けたこれからのコミュニティの在り方を探りました。

本記事では、この「サステナビリティ×コミュニティ」イベントシリーズの内容を中心に、プロジェクトの活動と成果をご紹介します。

写真は、シリーズの第一回目「コミュニティを問い直す」の様子。京都大学, こころの未来研究センター教授 広井良典氏(中央)をゲストにディスカッションしました。

Activity

“サステナビリティ×コミュニティ”シリーズ、全5回のテーマ

本シリーズでは、サステナビリティとコミュニティの関係について、学術的な視点からの解説や、市民参加を促す実験的な取り組みやITを活用した課題解決のアプローチについての紹介など、全5回にわたって研究者、実践者からじっくりとお話を伺いました。以下では、各回で語られたポイントを紹介します。

Vol.1 コミュニティを問いなおす

  • ゲスト:広井 良典(京都大学, こころの未来研究センター教授)
  • 参加人数:306名

 

個人がコミュニティから独立して自由に活動するようになった近代以降、公と私の二元論的な価値観が支配的となった結果、貧富の格差が拡大し、さらには環境問題が深刻化しました。こうした状況から、公と私ではないもう一つの領域「共」としてのコミュニティへの関心が高まっていると広井教授は言います。

広井教授は、新しいコミュニティのカタチに関するヒントとして、「独立した個人と個人が、集団を越えてゆるやかにつながる都市型のコミュニティ」を提示。「個人をベースとする公共意識」を基盤とした都市型コミュニティは、日本では未発達。今後は、言葉によるコミュニケーションがより重要になると語りました。 

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Vol.2 つながりを見せるブロックチェーンが拓く可能性とは?

  • ゲスト:正田 英樹(株式会社chaintope 代表取締役CEO)
  • 参加人数:104名

 

チャレンジするための融資や出資を受けるためには「信用」が必要です。現在の「信用」は、年収・勤務先・貯蓄状況などのお金にまつわる情報で評価されています。正田さんはブロックチェーン技術を応用して、人と人とのあいだの「感謝・共感・応援」を“見える化”することで新しい信用の指標を作ることに挑戦しています。

正田さんが開発した「Masachain」は、地域の人から感謝や信頼、応援を受けている人が挑戦の機会を得るきっかけとなる、社会関係資本*の指標化を試みています。正田さんによれば、マレーシア国際イスラム大学(IIUM)で実証実験を行うなど、社会実装に向けた改善に取り組んできました。Masachainはテクノロジーによって、社会関係資本という観点から地域や社会に貢献している人が正当に評価され、世の中の富が新しい形で再分配される可能性を示唆しています。

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>>イベント概要

* 社会学、政治学、経済学、経営学などにおいて用いられる概念。人々の協調行動が活発化することにより社会の効率性を高めることができるという考え方のもとで、社会の信頼関係、規範、ネットワークといった社会組織の重要性を説く概念である。

Vol.3 まちづくりと地域経済から考えるサステナビリティ

  • ゲスト:大西 正紀(株式会社グランドレベル, リサーチャー/ディレクター)
  • 参加人数:124名

 

プライベートとパブリックが交差している、「まちの1階」を活かしながらコミュニティの魅力度を高める取り組みをしている、株式会社グランドレベルの大西さんと田中元子さん。ふたりはコペンハーゲンで出会ったランドリーカフェをヒントに、世代を問わずその町に暮らす誰もが使える場所として、墨田区千歳に「喫茶ランドリー」を立ち上げました。現在、全国の個人や企業とともに、喫茶ランドリーをフランチャイズ展開しています。

グランドレベルでは、地域の人々がアクティブに参加できる状況を生み出すために、施設や設備といった「ハード」と、提供するサービスやイベントなどの「ソフト」、それらをとりもつ「オルグ」(コミュニケーション)の3つを一体的にデザインしています。ちょっとしたエラーをきっかけに、知らない他者同士が話をはじめることが「コミュニティが発芽する瞬間」だと語る大西さん。その例として、お店のランドリーにコインを入れるところを設けず、お客さんとスタッフの会話のきっかけを作るなど、あえて完璧に設計しすぎないことによって、コミュニケーションを生み出す工夫をしています。

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Vol.4 人と人のつながりをつくる“地域SNS”~誰もが心地よい地域コミュニティのあり方とは?〜

  • ゲスト:矢野 晃平(PIAZZA株式会社, 代表取締役社長)
  • 参加人数:165名

 

ご近所付き合いなど地域コミュニティ内の人間関係が希薄になっている都市型のライフスタイルにおいて、人と人のつながりをつくる“地域SNS”「PIAZZA(ピアッザ)」。PIAZZAが画期的なのは地域に特化した情報を拾い上げることができる点です。地域SNSによって、暮らしの中のちょっとした困りごとの解決など、地域の人にとって必要な情報交換が住民同士で行われています。

PIAZZAでは「コミュニティバリュー」という独自の指標をつくり、それぞれのエリアで、どれくらい会話やつながりが生まれ、コミュニティが活性化しているのかを定量的に可視化しています。この指標を活用し、同社はさまざまな自治体と積極的に連携しながら、まちのソフト面を充実化させる取り組みを進めています。

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Vol.5 次世代へとバトンをつなぐ共創型のまちづくりー富良野の取り組みを事例にー

  • ゲスト:中島 吾郎(NPO法人C・C・C富良野自然塾, 理事)、中村 靖教(フラノデザイン株式会社 代表)
  • 参加人数:73名

 

1980〜2000年まで、ドラマ『北の国から』で人気の観光地となった富良野市。時間が経過した今、改めて自然の価値や暮らしやすさを見直し、行政や民間企業、行政が協力しながら、これからの富良野の在り方を地域全体で模索しています。

富良野市では、市民が市の未来を「自分ごと」として考えるための仕組みづくりを進めています。システム思考のアプローチを採用した総合計画策定や、市民中心のワークショップなど、行政と民間で10年後を共に考える総合計画づくりを進めています。

>>イベントレポート(GGP Webサイト)

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コミュニティづくりの示唆を抽出するワークショップ

全5回のイベントを通じての仮説検証と、新たに得られた学びを振り返るワークショップを実施。サステナビリティが求められる現代の社会でコミュニティづくりを考えるうえでの指針となりうる「7つのヒント」を抽出しました。

サステナビリティの視点からコミュニティづくりを実践するための7つのヒント

  1. 独立した個々が集団を超えてゆるやかに繋がる「都市型コミュニティ」
  2. デジタルとリアルの連携がコミュニティ形成を加速する
  3. 社会関係資本の充実を重視し、テクノロジーによって可視化する
  4. 都市や場のデザインに、つながりが生まれる余地を残す
  5. 多様性ある地方に人や産業を分散する
  6. 市民たち自身がつくるから、暮らしがいのある街になる
  7. 持続可能性を考えるには未来世代の主体的な参加が必須

これからのアクションについて

​​SMBCのGGP運営事務局であり、ワークショップを一緒におこなった木村智行さんに、GGPのこれからのアクションについてお話しいただきました。

株式会社三井住友フィナンシャルグループ, 企画部 サステナビリティ推進室 室長代理(取材当時、現:株式会社日本総合研究所 創発戦略センター マネジャー) 木村 智行氏

コミュニティの内外で、「人」と「価値」の還流をどのように生み出していくのか——ここで言う「価値」は、無形のもの、まだ言語化できていないものも含みます——が、“サステナビリティ×コミュニティ”シリーズの全体を通しての問いです。

GGP運営チームは、全5回のイベントを通して、これからのコミュニティの在り方についての解像度を高めることができました。そして、「各地域への分散にはコミュニティ形成が必要である」「コミュニティ形成にはリアルとデジタルの活用が効果的であるという新たな視点の獲得もできました。今後のGGPの活動では、このシリーズで得た示唆も活かしつつ、地方における持続可能性の課題に向き合いながら、地方と企業、複数の地方間での連携などに対するアプローチも進める予定です。

GREEN×GLOBE Partneres のイベント

“サステナビリティ×コミュニティ” シリーズのほか、循環型社会、AI倫理、寄付など、さまざまな切り口から、持続可能な社会のあり方を探るイベントを開催しています。

全てのイベントを見る

Impact

これまで全5回を通じて、700人以上が“サステナビリティ×コミュニティ”シリーズのイベントに参加。特に、広井良典教授をゲストに迎えた「Vol.1 コミュニティを問いなおす」には300人を超える参加があったことからも、「コミュニティ」と「社会課題」というテーマに対して多くの人が関心を寄せていることがわかります。

2022年9月現在、GGPは、設立から約2年間で41回のイベントを実施し、参加者数はのべ4700人以上にのぼります。GGPにパートナーとして参加する組織の数は870社を超えており、着実にその輪を広げています。

5 回

シリーズで開催した イベントの回数

772 名

イベントの延べ 参加者数

Member

木村 智行

木村 智行

三井住友フィナンシャルグループ
企画部 サステナビリティ推進室 室長代理

棚橋 弘季

株式会社ロフトワーク
執行役員 兼 イノベーションメーカー

Profile

菅沼 遥

菅沼 遥

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

銭 宇飛

銭 宇飛

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

大石 果林

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

寺田 麻里子

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

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平松 世梨亜

平松 世梨亜

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

武田 真梨子

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FabCafe クリエイティブディレクター

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