FINDING
岩沢 エリ, 伊藤 望 2022.11.02

“これからの企業に求められるのは、ありたい未来の景色を共に描くこと”
「変革のデザイン」イベントの見どころ・参加方法を企画者がナビゲート!

11月18, 25日開催の「変革のデザイン」タイプ別楽しみ方紹介の ツアーガイド記事をご用意しました。

突然ですが、秋はイベントが盛りだくさんですね。その中で、どのイベントに参加しようかなと迷いますよね。そこで本日は、この記事を読んでくださっている皆さんに、11月18日・25日に開催予定のロフトワーク主催イベント、「変革のデザイン」の楽しみ方をご紹介します。ちょっと気になっているけどもう少し内容が知りたい!という方、ぜひご一読ください!

企画・執筆:岩沢 エリ(株式会社ロフトワーク)
編集:岩崎 諒子(loftwork.com編集部)

本記事のナビゲーター

今回、ロフトワークとSHIBUYA QWS(渋谷キューズ)共催のカンファレンス&ワークショップ「変革のデザイン」の参加を検討している方に向けて、みどころと楽しみ方をご紹介します。

ナビゲートするのは、今回のイベントオーガナイザーであり、普段はロフトワークのコミュニケーションデザインとカルチャー醸成を牽引する岩沢エリ。そして、未来構想視点と生活者視点から企業の新たな機会領域探索や新規事業開発支援を得意とする、クリエイティブDiv シニアディレクター 伊藤望の2人です。

岩沢 エリ

株式会社ロフトワーク
Culture Executive/マーケティング リーダー

Profile

伊藤 望

株式会社ロフトワーク
VU unit リーダー

Profile

これからの企業に必要なのは、ありたい未来の景色を共に描くこと

岩沢エリ(以下、岩沢) では、早速はじめましょうか。一人で進めると堅苦しくなりそうなので、今回「変革のデザイン」イベントのワークショップデザインを担当している伊藤望くんにも一緒に進めてもらいましょう。のんちゃん、よろしくね。

伊藤望(以下、伊藤) はい、よろしくお願いします。

岩沢 そういえば、昨日はダイエットを開始したばかりのところに、チョコレート差し入れしちゃってごめんね!

伊藤 いや、いきなり話の腰を折りに来ましたね 笑。ダイエット話を膨らませると、今読んでる人に記事離脱されちゃいそうなので、このままスルーして最初の質問に入りますね! まず、よく聞かれそうなところからいきます。そもそも、「変革のデザイン」ってどんなイベントなんですか?

岩沢 軽やかに脱線を回避してくれてありがとう 笑。一言でいってみると「ありたい未来を共創するための思考の補助線や実践のツールキットを手に入れるイベント」です。

伊藤 「ありたい未来」なんですね。

岩沢 そうです! サステナブルな未来を想像するとき、目の前に積み上がっている社会問題や地球問題があまりにも複雑だったり大きすぎたりして、本当に私たちが解決できる道筋があるのか、正直、悲観的な気持ちになることもあります。

伊藤 いわゆる、厄介な問題(Wicked Problems)*と言われるものですよね。正解もないし、いくつもの問題が幾重にも絡み合っていて、そもそも何が本当に解決するべき問題か定義するのが難しい。

岩沢 はい。一方で、コロナの世界的な感染拡大によって、私たちがこれまで何度もいろいろな企業の皆さんと描いてきたリモートワークや多様な働き方が生まれている世界が、あっという間に現実になったことも目の当たりにしましたよね。

伊藤 僕も、2019年頃までのプロジェクトで、いくつもそんな未来を描いてきました。あの頃は、あと10年はかかると思っていました。

岩沢 そうなんです。でも、わずか1、2年の間に、これまで未来として描いていたことが現実になることも、ある。コロナの場合は世界的に「せざるを得なかった」、ある種の“制限”だったかもしれませんが、ここからわかったのは、一企業で解決することは難しいことも、企業、自治体、市民、さまざまな立場の人々が一緒に「こういう社会にしたいよね! しよう!」と同じ未来を目指したら、案外実現できることもある、ということです。

伊藤 ちょうど先日、JPモルガン・チェース銀行でデザイン・フューチャリスト*として働く岩渕正樹さんにインタビューさせていただいたんですが、彼は「自分たちが当事者として、進んで踏み出したいと思えるビジョンとしての北極星をつくっていく」ことが必要になると仰っていました。そして、岩渕さんもVUCA時代の中で企業がパーパスを軸に事業や組織をデザインする中で「明るい未来」を描くことの重要性についてもお話されていましたね。

岩沢 本当に共感します。ポジティブな未来は、それを受け取る人がわくわくして一緒に何か動きたくなる力を生み出しますよね。今回の「変革のデザイン」において、私たちがキーワードにしている「ありたい未来」についても、同様のイメージをもっています。今回、トークセッションにご登壇いただく馬田隆明さんは、理想の未来を描くうえで「インパクト」の重要性を提唱しています。インパクトは、簡単に言うと「“長期的に”社会や関係者にどんな変化を起こしたいのか」を示すための指標のことです。社会的インパクト*ともよばれ、昨今のSDGsやESG投資の流れで戦略的に取り入れる企業も増えてきていますね。

インパクトを提示するメリットは、ステークホルダーを巻き込みやすくなること。目的や段階をはっきり説明できたり、長期視点でビジネス変革を目指すうえで欠かせない概念なんです。そして、馬田さんの言葉も借りると「インパクトを描く力は新たな問いを生み出す力でもあり、良い問いを生み出す力は倫理的思考やデザイン思考などに加えて、これからのビジネスパーソンに必要とされる能力」だとも。

伊藤 サステナブルな未来に向けて企業が事業創出する際に鍵となるのは、どれだけ社内外を巻き込めるか。つまり、様々な立場の個人や企業、行政がみんな当事者となって理想を実現するために動き出せるか。岩渕さんにしても、馬田さんにしても、大事な要素として語っていましたね。

岩沢 誰かの「予測した未来」ではなく、顧客も社員も、パートナーも、関わる人たちみんなの「ありたい未来」を描くことが、持続可能な社会をリードする企業や地域にとって必要です。ですから、今回のイベントでは「ありたい未来」を描くための思考の補助線を手に入れ、実践のためのツールキットに触れる5つのトークセッションと1日体験ワークショップを用意しました。

*デザイン・フューチャリスト:アメリカの先進企業の中には、自社の事業領域の今後の変化を明らかにするために、自社内でデザインリサーチ組織を組成したり、「Futurist(フューチャリスト)」と呼ばれる未来洞察の専門人材を集める企業も現れている。アメリカ最大の銀行であるJPモルガン・チェース銀行も、デザインを通した未来洞察チームをリードする人材として「デザイン・フューチャリスト」を設置している。

*社会的インパクト:短期、長期の変化を含め、当該事業や活動の結果として生じた社会的、環境的なアウトカム
(引用元 一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ https://simi.or.jp/social_impact/about

「変革のデザイン」イベントの全体像を紹介

伊藤 何のイベントかというのは大体説明できたかなと思うので、今度はイベント全体のプログラムについて教えてもらえますか?

岩沢 はい! 「変革のデザイン」は、11月18日、25日の2日間で開催します。DAY1(11月18日)は、インプットセッションデイ。基調講演に、先ほどもご紹介した馬田隆明さんにご登壇いただき、著書の『未来を実装する』で紹介されている「インパクト」とはなにか。なぜいま民間企業の事業創出にも理想の未来(インパクト)を描くことが重要なのか。また、その実践のステップとして、様々なステークホルダーを巻き込んで社会を変えていくプロセスについてもお話いただきます。さらに、DAY1では「HOME」「HUMANITY」「ETHICAL」の3つのテーマを切り口に、それぞれの未来の景色を発見するインプットセッションを行います。
そして、DAY2(11月25日)には、この3つのテーマごとに多様な立場の参加者と「ありたい未来の景色(インパクト)」を描く共創プロセスを体験するワークショップをご用意しました。

伊藤 なぜ、「HOME」「HUMANITY」「ETHICAL」だったんですか?

岩沢 ロフトワークがこれまでにプロジェクトの実践や先行リサーチをしている領域だから、というのが回答です。同時に、今まさにさまざまな業界の企業や地域の方々が取り組んでいるテーマでもあります。

デザイン経営の観点、そして都市と地域の関係性から見えてきた、これからの働き方や暮らし方の可能性(HOME)。ウェルビーイングを切り口とした、人とテクノロジーの協働の可能性(HUMANITY)。日本の地域や企業ならではの循環型社会とものづくりの可能性(ETHICAL)。これらについて、プロジェクトやリサーチを通していくつかの兆しを発見してきたという実感があります。今回のイベントは、こうした私たちの知見を参加するみなさんと共有する機会を兼ねています。

2021年度よりスタートした、東海サーキュラー・エコノミー推進プロジェクト。日本ならではの循環の形を探し、調査した内容をタブロイド紙にまとめました。
ロフトワークでは、2022年に人や地球環境のWell-Being(ウェルビーイング)に貢献する、革新的なマテリアルを募集する、「Material Driven Innovation Award 2022」を開催。世界中から102点の応募がありました。

伊藤 持続可能な未来に向かうための新しいデザイン研究分野として、近年注目されている「トランジション・デザイン*」の観点からも、ただ未来を妄想するのではなく、その地域の歴史や文化、培ってきた知恵や技術、慣習や風習といった、過去から現在までの時間軸と地続きの未来を描くことが重要だと言われています。そういう意味では、今回限られた時間の中で、これまでのプロジェクトから見えてきた知見をギュッと濃縮してインプットできるのは、その後のワークショップでの共通する知見になるし、より実感のこもった「ありたい未来の景色」を描く手助けになると考えています。

とはいえ、2日間のイベントというと、時間を確保するのが大変ですよね。忙しい方のために、どういう参加方法があるのか教えてもらえますか?

岩沢 そうですね、大きく2通りの楽しみ方があります。1つ目は、情報収集型、インプットトーク(DAY1)のみの参加ですね。気になるセッションを中心にオンライン視聴いただけます。 2つ目は、学びの実践&体験型。インプットトークが全て視聴でき、3つのテーマから1つを選んで、渋谷駅直結の共創施設「SHIBUYA QWS」で開催するワークショップ(DAY2)にご参加いただけます。ビジネスの実践に活用できるプロセスまで体験したい方、リアルに対話・交流したい方にオススメです。

*トランジション・デザイン… 気候変動や資源枯渇など、21世紀の社会が直面する、複雑性が高く地球規模の課題に対して、国家や行政がトップダウンで一元的な解決策を提示することはもはや不可能という前提に立ち、デザイナーが地域住民や身近なコミュニティと共に、ローカルな場所から持続可能で望ましいビジョンを思い描き、ボトムアップの様々な活動を結集することで大きな変革を促すための学際的なデザインのアプローチ。

伊藤 なるほど。では、「ちょこっとのぞいてみたい」くらいの場合は、DAY1のみを申し込んで、当日ライブで楽しんだり、そのあと気になるセッションを後追いで視聴したりするのもよさそうですね。がっつりワーク体験してみたい人も、11月25日だけ丸一日空けられれば、インプットトーク(DAY1)は参加予定のセッションのみ後追いで視聴できれば問題ないと。

岩沢 はい、おっしゃるとおり! というわけで、せっかくなので、「変革のデザインの歩き方」的に、以下にツアープランを2つご用意してみました。ぜひ参考にしてみてください!

伊藤 ツアープラン! ホントにナビゲートしてますね。

<プラン1> ありたい未来の景色(インパクト)を描き、共創プロセスを体験

1つ目は、インプットとワークショップ両方に参加いただくプランです。

持続可能な未来にむけた事業開発は、これまでと違う評価基準や開発プロセスへの更新も含めて取り組んでいかなければならない難しさがあります。加えて、長期的に価値を育てていく必要があるため、いかに社内外を大きく巻き込める理想の未来を描き、そこから生まれる新しい価値をかたちにできるか。そのプロセスに、実現に必要なステークホルダーをどれだけ巻き込めるかがポイントになります。

今までとは違うアプローチをとりつつ、いかに継続できるか。その変革までの変遷をデザインする手法として、新しい価値観をとらえる未来洞察のアプローチ、インパクトを描くこと。多様な立場の人と対話し、理想の未来を共創するプロセスを体験する実践ワークショップをご用意しました。

こんな人におすすめ 

  • 持続可能な未来へ移行する事業開発に取り組んでいる、あるいは検討しており、対話を通じて新しい観点について考えたい方。
  • インプットだけに留まらず、ビジネスの実践に活用できるプロセスまで体験したい方。リアルに対話・交流したい方。
  • SHIBUYA QWS会員を検討中の方。

ワークショップで体験できること

  • 次の時代への移行の道筋を知る未来洞察のアプローチ。これからの制約や価値観など、事業構想のための新しいものさしを発見すること。
  • 企業の枠を越えた様々な立場の当事者と共創する場づくりとプロセス。
  • ビジネスパーソンだけでなく、地域の自治体や研究者、10〜30代の未来の兆しを体現するプロジェクトに挑戦する次世代リーダーらと共に、多様な面々との対話を通じて、ありたい未来の景色(インパクト)を描くこと。
  • SHUBUYA QWS会員としての活動・サービス内容。

プラン概要

  • インプットトーク(DAY1)全て視聴可能です。(即日アーカイブ視聴可能)
  • ワークショップ(DAY2)にご参加いただけます。
  • ワークショップは、「HOME / HUMANITY / ETHICAL」のうち選択した1つにご参加できます。(ランチあり)
  • ワークショップ後のネットワーキングにもご参加いただけます。

参加の流れ

  • 11月25日は、10:00〜17:00まで(できればネットワーキングの18:00まで!)ご参加ください。
  • 11月18日のインプットトークのうち、参加予定のテーマセッションをワークショップ参加当日までに視聴していただきます。(リアルタイム以外でも、いつでも視聴可能です。)実際の当日までの参加の流れは、以下の「プラン参加例」を参考にしてください。

申込方法

  • 申込みフォームから「DAY1&DAY2|Input&Workshop」に参加をご希望ください。
  • 最も参加したいテーマで、3つの中から一番参加したいテーマを選んでください。

プラン参加例:「HUMANITY」ワーク参加の場合

11月18日(金曜日)
・13:00〜13:50 KEYNOTE視聴
・15:00〜16:00 HUMANITY視聴
11月23日(水曜日)
・アーカイブでVIEW POINTを視聴
11月25日(金曜日)
・〜10:00 SHIBUAY QWSに来場
・11:00〜17:00 HUMANITYをテーマとしたワークショップに参加
・17:00〜18:00 ネットワーキングに参加

<プラン2> サステナブルな未来の理想を描くヒントを集める

2つ目は、インプットトークのみご視聴いただくプランです。サステナブルな未来の実現は、ある意味で全ての人が当事者でもあります。わたしたちとしても、ぜひ一人でも多くの方たちと対話の機会を持ちたいと思い、インプットトークは無料で視聴できるように準備しました。少しでも関心ある方は、ぜひご視聴ください。アーカイブ配信もご用意していますので、当日の視聴がかなわない場合も、後日お好きな時間でお楽しみください。

プラン概要

  • インプットトーク(DAY1)全部視聴可能です。(アーカイブ視聴あり)

申込方法

  • 申込みフォームから「DAY1のみ|Input Talk」に参加をご希望ください。

いかがでしたか? 「変革のデザイン」を、秋のイベント堪能の選択肢の一つとして選んでもらえたら嬉しいです。

今回は1日の未来構想デザインの体験ワークとなっていますが、ロフトワークが支援する実際のプロジェクトでは様々なクライアントの現在地に合わせて、プロジェクトをデザインしています。

“製造”から“価値創出”へ。組織の視座を高める4日間の旅「未来構想スクール」
https://loftwork.com/jp/project/kyoueikouzai

南海電鉄と描く、大阪なんばの未来 新サービスの社会的インパクトとロードマップを設計
https://loftwork.com/jp/project/nankai_logic-model

また、今回のワークショップデザインに関連するアプローチも公開しています。こちらもぜひご覧ください。

社会の小さな兆しから、10年後の未来のニーズを探索する
〜イノベーションの種を探しにいこう
https://loftwork.com/jp/event/20220712_future-research_archive

プロジェクトの未来を描き、クライアントへの愛着を増幅させる 「ロジックモデル」テンプレート大公開
https://loftwork.com/jp/finding/pd_logoc_model

それでは、オンラインで、あるいはSHIBUYA QWSで、みなさんにお会いできることをたのしみにしています!

Keywords

Next Contents

街の緑、食品ざんさ……都市の「分解」を可視化する。
「分解可能性都市」展示レポート