潜在顧客の声からデザインした新サービス ALTOA
Outline
これからの時代の新しい融資のカタチ
インターネットを通じ、スモールビジネス向けに融資を行うアルトア株式会社は、弥生株式会社が持つ会計ビッグデータ、オリックス株式会社が持つ与信ノウハウ、そして、d.a.t.株式会社のAI技術を活用した全く新しい与信モデルを組み合わせたサービスの展開を軸として2017年2月に立ち上がりました。
ロフトワークではサービスコアの仮説検証から、リリースまでの全プロセスに関与。アルトア株式会社と併走しながら、サービスのデザインを行っていきました。
大切にしたのは、潜在顧客の声から設計すること。
オンライン少額融資という新しい概念を世の中に広めるサービスであるため、顕在化している「顧客」ではなく将来のユーザーとなりうる「潜在顧客」という表現を用いています。
潜在顧客に近いターゲット層に、いくつかの視点からインタビューを行い、資金繰りや融資イメージなどに対する生の意見を聴取。少額融資への期待や不安、求めることなどを探りました。
得られたインサイト(顧客心理)をもとに、サービスコンセプトを設計。HCD(人間中心設計)を根幹に据え、検証/評価を意識しながら進行しています。
斬新な発見を求めてリサーチを行うよりも、限られた時間の中で、考慮すべき内容の整理や、事実に基づいた生の声を可視化していくことを目標に実施していきました。
それは、打ち上げ花火なサービスを設計するというよりは、普遍的で長く愛されるサービスを設計したいという思いからです。
プロジェクト概要
支援内容
・サービスのUX設計
・仮説形成
・プロトタイピング
・インフィールドリサーチ
・サービスコンセプトの作成
・Webサイト制作・VI設計開発
・ダイレクトメール制作
・Webサイト用ビジュアル撮影
・コンテンツの企画制作
体制
・クライアント:アルトア株式会社
・プロデューサー:浅見 和彦
・プロジェクトマネージャー:国広 晋哉
・クリエイティブディレクター:青木 大地
・クリエイティブディレクター:関口 智子
・テクニカルディレクター:大森 誠
クリエイティブチーム
・デザイン制作(リーフレット/ポスター/web):present 宇都宮 勝晃
・webコーディング/WordPressテンプレート開発:タクマデザイン 坂田 一馬
・イラスト制作(リーフレット/web/動画):野中 聡紀
Outputs
少額融資サービスALTOA サービスのUX設計
潜在顧客を見極め、融資に対する心理的障壁の根源を探り、それを体現するサービスのUXを設計しています。システム構築含む金融商品の全体設計はALTOA様が設計しています。
設計したUXは、コンセプトブックとしてまとめています。
VI・デザインコンセプト
10種類ほどのロゴタイプを作成し、弥生のロゴにあるコンセプトを意識しつつ、徐々に方向性を確認して絞り込みながら、ロゴタイプのデザインを決定しています。最終的には、経営者を後押しし、事業が上向きになる(=右肩上がり)という想いをこめて、ロゴを決定。
ロゴタイプ内の右上に上がっているラインを「アルトアライン」と呼び、ビジュアル・アイデンティティとして意味づけを行っています。
Webサイト
Webサイトのゴールである、「サービスの新規登録」に到達してもらうために、動画や、シミュレーターなど、どのようなコンテンツが必要なのか、サイトマップを軸に考えていきました。
「情報が少なすぎて不安」や、「人間味がなく不安」といった不安の解消、ユーザーが、自身の使う姿を解像度高く想像できるようなリアリティ、ページ数や文章量を簡潔にし、明快でわかりやすいという3つのポイントでデザインしています。
また特に工夫した点として「どんなときに使う?」のイメージを持ってもらうために、アルトアの使いみちをストーリー形式にしたコンテンツも作成しました。これはいろいろな経営者の声を聞く中で見つけた「こんな時に使えるかも」というヒントをもとにしたものです。
ダイレクトメールの作成
代表である岡本氏の本サービスに込めたメッセージを紹介し、さらにWebサイト用のコンテンツとして制作した経営者診断の簡易版を掲載。多くの人の興味を引くためのきっかけづくりを目指しています。
コンテンツの企画制作
使い方動画
経営者診断コンテンツ
Process
1.仮説形成
サービス方針をまとめるにあたり、まず課題となったのは、「少額融資のニーズ」が存在しているか。ということでした。「誰に」「どんなニーズ」をめがけてサービスを訴求していくべきか。デスクトップリサーチや、ターゲット層の焦点を定めるライトインタビューを軸にリサーチ/統合していきました。
2.プロトタイピング
抽出した仮説から、「サービス価値」「ワイヤーフレーム」「キャッチコピー」をプロトタイプとして作成。デプスインタビューでは、質問内容を前半と後半に区分けし後半は、プロトタイプした3つのアウトプットへの意見をヒアリングしています。
3.インフィールドリサーチ(現地調査)
サービスコンセプトの解像度をさらに上げるために、事業を行う上での欲求やニーズまたそれに基づく行動の調査を目的にデプスインタビューを実施。(2時間×14名)事前に設計したインタビューガイドに沿って行い、得られた気付きは2日間の短期間にプロジェクトルームを設置し一気に統合を行っています。
事業を進める際に事業者が考えていることや不安など、デプスインタビューで得られた発言を対象者ごとにインサイトマップとして整理。その心理状態となる理由を分析しました。対象者ごとに得られた気づきを統合し、対象者全体における事実関係を整理しています。
インサイトマップとは別に、顧客属性をどのように分類できるかペルソナとメンタルモデルを設計。さらに実際にこのペルソナ及びメンタルモデルに使ってもらえうるだろうか?「誰が」「どんな時に」使うのかとして想定されるものを12の少額融資ニーズとして作成しています。
4.サービスコンセプトの作成
コンセプトのコアアイデアをチームメンバー全員で考える。Amazonの製品開発でも使用されている、Working Backwards(逆向き解決法)を使用し、「このサービスがプレスリリースされる時に、どんなメッセージを訴求していくか」を発散し、キャッチコピー、基礎機能、特徴を検討。そして、アイデアを発表し、投票した。内容を精査しながら、コンセプトのコアを定めています。
定めたコアコンセプトから、ストーリー、キャッチコピー、特徴及びキーワードをまとめていきました。
まとめたコンセプトをターゲットに伝えていくために、Webサイト用のサイトマップとワイヤーフレーム・デザインコンセプトを定義。リリース後どのように認知→利用にいたるかをコミュニケーション施策としても整理しています。
Member
岡本 浩一郎
アルトア株式会社
代表取締役社長
渡邊 辰彦
アルトア株式会社
アルトア事業部シニアマネジャー
浅見 和彦
株式会社ロフトワーク
シニアプロデューサー
大森 誠
株式会社ロフトワーク
テクニカルグループ テクニカルディレクター
メンバーズボイス
“振り返ってみても、チャレンジの多いプロジェクトでした。中でも今回ポイントとなったのは「言語化」だと思います。経営者の方々にお聞きした事実を基に、とにかく「言葉」にし、それを「検証」し、さらに「発展」させるプロセスを短いサイクルでとにかく回すことに注力しました。どんな言葉なら想いが伝わるか。チーム内でまず議論し意識のズレを調整する、経営者の方々にテストでご意見を聞いてみる。それも、日本ではまだ馴染みのない新領域だからこそです。そういった工程を踏まえ、サービスローンチまでお手伝いできたことが素直に嬉しいです。まだ歩き始めたサービスですが、既に次の課題や対策を打つ動きを考えています。スモールビジネスを営む経営者の方々を後押しできるよう、より良いUXを目指していきたいなと思います。
”
ロフトワーク クリエイティブディレクター 国広 信哉
“仮説形成からWebなどの制作まで、すべての部分を担当させていただきました。様々な経営者の方々にインタビューさせていただけたおかげで、実際の現場の想いや文脈を知ることができました。それによって、純粋にこのサービスを利用してみたいと思っていただけるものに近づけたと思います。また、一旦サービスはリリースしましたが、今後は多くの方に認知していただくための施策を検討し、模索しながら進めていく必要があると考えています。そのためには、様々なタッチポイントからユーザー体験を改めて想定し、どのようなアプローチでユーザーとコミュニケーションしていくか検討・実践し、検証結果から徐々にコミュニケーション方法やサービス内容をブラッシュアップしていければと思います。”
ロフトワーク クリエイティブディレクター 青木 大地
Activity
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2019.09.25 #クリエイターコラボレーション
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