PROJECT

サーキュラーデザイン実践者の世界的なコミュニティを創出
循環型経済実現を目指す「crQlr Awards」

株式会社ロフトワークと、世界に13拠点を持つクリエイティブコミュニティFabCafe(ファブカフェ)は、循環型経済の実現を目指すための独自の取り組みとして、サーキュラーデザイン領域の先端的かつ創造的なプロジェクトを募集するグローバルアワード「crQlr Awards (サーキュラー・アワード)」を開催。およそ2ヶ月の募集期間の中で、企業や団体、スタートアップ、デザイナーなど世界24カ国から204点の作品が応募されました。

さらに、アワード終了後も応募者と審査員陣が継続して領域横断的な交流・共創・発信を行うことを後押しするために、コンソーシアム「crQlr(サーキュラー)」を設立。クリエイティブなアプローチによって、世界規模で循環型経済実現の機運を高めていくことを目指します。


執筆:後閑 裕太朗 (loftwork.com編集部)
編集:岩崎 諒子(loftwork.com編集部)

Outline

現在、サステナビリティやSDGsをキーワードに、世界中で環境・社会問題の改善に向けたさまざまな取り組みが実施されています。数値目標の達成はあくまで通過点に過ぎず、根本的な解決を目指すためには、人々の価値観と社会システム、産業構造をドラスティックに変革していく必要があります。

循環型経済とサーキュラーデザイン

その最も重要なアプローチの一つとされているのが、製品や原材料を再利用し次なる生産活動に活かす「循環型経済(サーキュラー・エコノミー)」の実現です。この変革に向け、製品やサービスをサプライチェーンから見直し、廃棄性をゼロに近づけていくためのデザイン「サーキュラーデザイン」が、あらゆる産業で求められています。

一方で、サーキュラーデザインの社会実装を進めるためには、企業や研究機関によるさらなる技術革新と、デザイナーやクリエイターによる創造的なアイデアや体験設計、行政による制度改革やルールメイキングのいずれも欠くことができません。また、世界標準となっているリニアな経済システムをひとつの企業や団体、国による実践だけで刷新するのは不可能です。

「未来の作り手」に必要なクリエイティビティとビジョンを提示する

ロフトワークとFabCafe Globalは、循環型経済の実現に向けて社会の変容を促すためには、世界各国のサーキュラーデザイン実践者たちが立場や地域、国を超えて連携を重ねながら、「未来の作り手」に必要な新しいクリエイティビティやビジョンを提示することが必要ではないかと考えました。また同時に、廃棄性をなくすためのデザインや生産方法と、そのために必要な素材やツールといった情報を広く可視化・共有することも重要です。

そこで、各国のサーキュラーデザイン実践者が集い、相互連携を測る第一歩を踏み出すための取り組みに着手。2021年8月〜10月までの約2ヶ月間、世界のサーキュラーデザインプロジェクトに光を当てるアワード「crQlr Awards」を開催しました。

crQlr ロゴ・キービジュアル

本アワードは、先進的で創造的なサーキュラーデザイン領域のプロジェクト・アイデアを評価するのみならず、ミートアップなどを通じて応募者同士やサーキュラーデザインの第一線で活躍している審査員陣との関係をつなぐ機会も提供しています。

さらに、アワード以降もこれらのつながりの中から新たな価値創出を測るべく、サーキュラーデザイン実践者によるコンソーシアム「crQlr(サーキュラー)」を発足しました。今後の取り組みとして、これまでロフトワークが蓄積してきた共創のノウハウを活かしながら、各々の領域を超えてメンバー同士の連携やコラボレーションを促進。循環型経済の実現に向けて、より大きなムーヴメントを創出することを目指します。

crQlr(サーキュラー)Webサイト

日本語サイト 英語サイト

プロジェクト体制

  • 運営母体名称:crQlr Society
  • 主催:FabCafe Global、 株式会社ロフトワーク
  • 企画運営:FabCafe Global、株式会社ロフトワーク
  • プロデューサー:諏訪 光洋(株式会社ロフトワーク)
  • ディレクター:ケルシー・スチュワート(FabCafe Global)、棚橋 弘季(株式会社ロフトワーク)
  • プロジェクトマネジャー:北島 識子(株式会社ロフトワーク)
  • アートディレクター :小田 雄太(COMPOUND inc.)、山田 麗音(株式会社ロフトワーク)
  • Webディレクター:関井 遼平(株式会社ロフトワーク)
  • イベントディレクター:小川 蘭那、ケルシー・スチュワート(FabCafe Global)坂木 茜音、松永 篤、川原田 昌徳、飯田 隼矢(株式会社ロフトワーク)
    グローバルコミュニケーター:ケルシー・スチュワート(FabCafe Global)、工藤 梨央(株式会社ロフトワーク)
  • PR:佐々木ゆりか、松田 絵里、鈴木 真理子(株式会社ロフトワーク)
  • FabCafe Global Founders:Tim Wong (株式会社ロフトワーク, FabCafe Taipei), Kalaya Kovidvisith (FabCafe Bangkok), Cecilia Tham (FabCafe Barcelona, Futurity Studio), Andi Permadi and Gwyneth Jong (FabCafe Kuala Lumpur), Tania Aedo and Federico Hemmer (FabCafe Mexico City), FabCafe Kyoto (Kosuke Kinoshita), FabCafe Hida (Kotaro Iwaoka), FabCafe Nagoya (Tomohiro Yabashi) 

Process

応募プロジェクトを次の展開へと繋げる、グローバルで“循環型”のアワード設計

「crQlr Awards」が目指したのは“循環型”のアワード設計です。一般的なデザインアワードでは、応募された作品やアイデアを審査員が評価し、受賞作品を決定するまでを行います。しかし、本アワードは評価することをゴールとせず、そのプロセスを通じて応募プロジェクトの次なるアクションを創発するためのきっかけを提供します。その設計ポイントは「グローバル性」「審査設計」「交流イベント」の3点にあります。

FabCafe Globalの拠点を通じて、世界のサーキュラーデザイン実践者にアプローチ

アワードを通じて世界規模の社会変容を促すのであれば、その対象は必然的にグローバルとなるはずです。

FabCafe Globalは、これまでも各拠点を通じて海外のクリエイティブコミュニティに働きかけながら、さまざまなグローバルアワードやハッカソン/アイデアソンを実施してきました。本アワードでもまた、FabCafe Globalのコミュニティから世界の創造的なサーキュラーデザイン実践者たちにアプローチし、世界24ヶ国から204のプロジェクトやアイデアが集まりました。

アワードの審査員も、各国でサーキュラーデザイン領域の第一線で活躍する19名のクリエイター・有識者を招聘。多角的な視点から、受賞プロジェクトを決定しました。

プロジェクトの将来性を重視し、行動を後押しする審査設計

特に日本国内におけるサーキュラーデザインの課題として、意欲的・革新的なプロジェクトであっても社内決裁が通らず、事業化・社会実装に至らないケースが数多くあります。

本アワードでは、外部評価によって将来性やポテンシャルを持つプロジェクトの継続を後押しする効果をねらって、審査基準と賞の構成を設計。意欲のある優れたプレーヤーを適切に評価・支援することを方針に掲げました。

応募対象となるプロジェクトは、計画中のアイデアや個人的な想いを起点としたものまで、達成度合いを問わず幅広く設定。さらに、多角的な視点からサーキュラーデザインの可能性を言語化するために、賞にグレードを設けずに審査員ひとりが3〜5のプロジェクトを選定する形で、受賞者を決定しました。

アワードの認知拡大と、プレーヤー同士の交流を促進するオンラインイベント

オンラインを通じてイベントに参加することが当たり前となった今、国境を超えた繋がりやグルーヴ感を生み出すには、ウェビナーの活用が不可欠です。本アワードでも、世界の応募者に向けて2つのオンラインイベントを開催しました。

「crQlr Summit 2021」の様子

1つ目のイベントは、アワードの認知拡大と参加促進を目的に開催した「crQlar Meet up! vol.0」です。サーキュラーデザイン領域の先行的な取り組みをしている事業者、スタートアップ企業をゲストに招き、サーキュラー・エコノミーの最新動向や事例などを紹介。このイベントによって、サステナビリティへの関心度が高い層に向けてアワードの情報を届けました。

2つ目は、授賞式イベント「crQlr summit 2021」。審査員と受賞者をゲストに、応募されたプロジェクトへのフィードバックとディスカッションを実施。応募者間の相互学習や審査員陣と受賞者との繋がりを生み出す機会となりました。

Winners

受賞作品(一部)

アワードを通じて63もの幅広い領域のプロジェクトが受賞を果たし、多彩なサーキュラーデザインのアプローチが顕在化されました。また、企業による応募プロジェクトのなかには、既存の事業領域にとらわれない挑戦的なプロジェクトがいくつも見られました。

Looop Can(水が少ない地域でも生理用品を洗浄できる缶)|Waveee Design Studio
Green Road(プラスチック廃棄物のアップサイクルによる道路舗装​​)|ASIA GREENROAD COMPANY LIMITED
Consumer Cotton Project|武蔵野美術大学大学院 FABRIC TOKYO

Voice

アワード審査員からのメッセージ

crQlr Awards では、世界中から数多くの素晴らしいサーキュラーデザイン実践とアイデアが集まり、非常に価値のあるコレクションができたのではないかと思います。

今回集まった200を超える応募作品は、これから新たにサーキュラーデザインに取り組む人々にとってのインスピレーションとクリエイティビティの源泉となり、さらなる新しいアイデアの創出をもたらすと確信しています。また、本アワードへの応募または受賞を通じて多くの実践者の方々が自信と新たな仲間を手にしたことにも大きな価値があったと思います。

循環する未来の実現に向けた素晴らしいアワードに関わる機会をくださった関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

ハーチ株式会社 代表 加藤 佑

Outcome

アワードが終了した後も、ロフトワークとFabCafe Global、そしてアワードを通じて出会ったサーキュラーエコノミーの実践者たちは、「crQlr」を通じて精力的に交流やコラボレーションを続けています。

アワード受賞者は、地方自治体のスマートシティ構想をはじめとした、ロフトワークが関わるSDGs領域のさまざまなプロジェクトとの連携を検討し始めています。

また、「crQlr」の次なる取り組みも始動しています。その第1弾として、2021年9月に東京でサーキュラー分野に興味のある人同士を直接繋ぎ、具体的な課題解決に向けたアイディエーションを行うワークショップ「crQlr Design scramble」を開催しました。

2022年度以降は、オンラインのみならずオフラインでも交流機会を提供し、プレーヤー同士の「つながり」をより強めるフェーズへとその活動を移行しています。FabCafe Bangkokでは、2022年2月に「BANGKOK DESIGN WEEK 2022」関連プログラムとしてcrQlr award 2021の受賞者をゲストに「crQlr Design Scramble」とトークイベントを開催。タイで循環経済を推進する起業家たちと共にディスカッションとアイデアソンを行いました。

「crQlr」はこれからも、コミュニティ参加者同士の継続的な交流と共創を促進するグローバルなプラットフォームとして活動を続けていきます。

Member

諏訪 光洋

株式会社ロフトワーク
代表取締役社長

Profile

ケルシー・スチュワート

株式会社ロフトワーク
Sustainability Executive/FabCafe チーフコミュニティオフィサー(CCO)

Profile

棚橋 弘季

株式会社ロフトワーク
執行役員 兼 イノベーションメーカー

Profile

北島 識子

株式会社ロフトワーク
クリエイティブDiv. シニアディレクター / デザインエヴァンジェリスト

Profile

山田 麗音

株式会社ロフトワーク
Creative Executive/クリエイティブディレクター

Profile

工藤 梨央

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

松田 絵里

株式会社ロフトワーク
AWRD 編集長・キュレーター

Profile

鈴木 真理子

株式会社ロフトワーク
Public Relations/広報

Profile

関井 遼平

株式会社ロフトワーク
AWRD プロダクトマネージャー

Profile

松永 篤

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

川原田 昌徳

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

坂木 茜音

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

佐々木 ゆりか

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

Tim Wong

株式会社ロフトワーク
FabCafe Taipei / Loftwork Taiwan co-founder

Profile

Kalaya Kovidisith

Kalaya Kovidisith

FabCafe Bangkok
Founder

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AR技術で木材製造の遠隔プロトタイピング
バッファロー大学建築学科 × 飛騨の木材加工プログラム