#06 折り紙付き採用
(ドーナツの穴 ー創造的な仕事のつくり方ー)
活躍するメンバーと出会うきっかけって?
ロフトワークは、そのとき取り組んでいるプロジェクトや新たなチャレンジの内容によって、がらりと雰囲気が変わる会社だ。ただ、変化する中で軸としてあり続けるものがあるとしたら、「仲間を選ぶ目」かもしれない。
一緒に働いたとき、ワクワクするのはどんな人だろう? その問いを中心に据えて、創業以来、私たちはコンスタントに採用を行ってきた。光栄なことに、スタッフはマイペースに、でも着実に増え続けている。
中でも特徴的なのは、直近で採用したメンバーのうち2〜3割が「社員からの紹介」で入社し、活躍していることだ。この取り組みを、私たちは「折り紙付き採用」と呼んでいる。
「折り紙付き採用」は、社員のアイデアから
社員の紹介による採用。最近は「リファラル・リクルーティング」と呼ばれ、制度として導入している企業も増えているようだ。
私たちが「折り紙付き採用」として制度化したのは2013年のこと。当時のロフトワークでは、クライアントのプロジェクトとは別に、メンバーが職種やプロジェクトの枠を超えてグループにわかれ、テーマを決めて活動をする「班活動」が行われていた。
その中で「採用」をテーマとしたグループから生まれたアイデアが、社員紹介による採用を制度化することだった。
実は私たちマネジメントも、社員の紹介で採用したメンバーは、入社後に活躍する人が多い印象を持っていた。そのため、このアイデアは即採用され、「折り紙付き採用」として、その後、ロフトワークの採用形態の一つとして定着していった。
セレンディピティが起きる場
折り紙付き採用の場合、面接も通常とはまるで違う。なにせ、社員が推薦文を書いてすぐに、いきなり社長が会うのだから! 開始5分で採用が決まって、「このプロジェクトをどうやって広げようか?」と会話があれこれ弾むケースもある。
また信頼できるメンバーを介することで、私たちだけでは採用しなかった(できなかった)であろう人を会社に迎える機会にもたびたび恵まれた。
現在、「AWRD」を担当している金森香さんなどは、その好例だ。ファッション領域の有名なプレイヤーであった彼女とロフトワークをつないでくれたのは、私たちの活動を見守り続ける“キャプテン”、 福田敏也さんだった。(厳密にいうと「社員」ではないけれど)
「ファッション業界の人が、うちに転職!?」金森さんを紹介されたとき、誰よりも驚いたのは私たち自身だったと思う。
実はつい最近、彼女自身もカルチャーに造詣が深く、ロフトワークの取り組みに共感してくれていたことがわかったのだけど、当時はそんなこと思いもしなかった。
はじめて4人で会食したその場で、共同代表の諏訪くんが新規事業の企みを話した。彼女の返事は「ぜひやりたい!」。話はとんとん拍子に進み、金森さんは今、ロフトワークの原点ともいえるサービスの中核を担っている。
キャリアの“クリエイティブなジャンプ”
金森さんのように専門領域でキャリアを重ねている人は、当然ながらこれまでの経験、実績を振り返り、その延長で次の一歩を踏み出すことが多いと思う。
でも今回、「おもしろそう!」とお互いが感じられる出会いをきっかけに、まったく想像していなかった非連続のジャンプが一つ、起きた。人は何歳になっても、どんなにキャリアを重ねても、クリエイティブな挑戦ができる。そう感じるできごとだった。それを、敏也さんが見事にサポートしてくれた。
私は「折り紙付き採用」をきっかけに、思いがけない“クリエイティブなジャンプ”を経て、ロフトワークに参加するメンバーが増えてくれたらいいなぁと思っている。
想像を超えた出会いがいくつも起きれば起きるほど、会社の5年後、10年後を決める未知の選択肢が広がっていく。だって、ロフトワークはいつでもワクワクする可能性に満ちたクリエイティブ・カンパニーでありたいから。
【連載目次】「ドーナツの穴 ー創造的な仕事のつくり方ー」
- #00 はじめに
- #01 デザインとクリエイティブ
- #02 付箋と民主主義
- #03 デザインは、量より質?
- #04 「わからない」が面白い
- #05 場が働き方をつくる
- #06 折り紙付き採用
- #07 合宿のススメ
- #08 その人にしかできない仕事を
- #09 きっかけは他者にある
- #10 FabCafeのつくり方
- #11 FabCafe Globalの育て方
- #12 飛騨の森でクマは踊るか
- #13 2020年代を生きるということ
- #14 ロフトワークの未来、どうしていこう?
- #15 ダイバーシティとどう向き合う?
- #16 「プロジェクトマネジメント」の技術をどう伝える?
- #17 「人とのつながり」をどうつくる?
- #18 おわりに
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