FINDING
林 千晶 2019.06.03

#07 合宿のススメ
(ドーナツの穴 ー創造的な仕事のつくり方ー)

ロフトワークに欠かせない一大行事

あるときは、小豆島にて地域産業の課題に挑戦。あるときは、千葉県に赴いて廃校の活用アイデアを考える。またあるときは、台湾に飛んでクリエイティブサービスづくりに取り組む。

2004年、10名ほどの人数だったときから毎年、実施している全社員合宿。拠点が国内外4箇所に増え、社員が100名を超えた現在も、私たちにとって絶対に欠かせない行事の一つだ。

その実態を知る人には、「ロフトワークの合宿は、過酷だからなぁ〜!(笑)」と、苦笑いされる。

経営合宿でもない、かといって社員旅行ともまったく違う。大人たちが集い、クリエイティブに全力で取り組む、とにかくワクワクできる真剣勝負の場なのだ。

拠点や役割を超えたメンバーの交流

「全拠点」の「全社員」が集まって合宿を行うのには、一つの理由がある。通常のプロジェクトだけでは生まれないメンバー同士のつながりを生むため、だ。

社内でどんなに横断的なプロジェクトを組んでみても、もれなく全員がフラットに交流することは現実的に難しい。ましてや、拠点が東京、京都、台北、香港と、海を越えて増えた今ならなおさらだ。

拠点や普段の役割を超えてつくられる「合宿実行委員」。彼・彼女らがすべて手づくりでつくりあげる、企画や当日のプログラム。それらが、メンバー同士の新たな出会いが生まれたり、お互いへの理解が深まったりするきっかけになる。(実際に合宿がきっかけで仲良くなり、社内結婚したメンバーもいるのだとか!)

2014年、初めての海外合宿。FabCafe Taipeiやロフトワーク台北のメンバーも含め、クリエイティブサービスの提案に英語で挑戦した。>レポート

合宿から生まれたリアル・プロジェクト

合宿をきっかけに生まれた新たなご縁は、社内の交流だけにとどまらない。私たちが合宿で訪れるのは、そのときに可能性を感じる場所、気になる場所、ワクワクする場所。そんな場所とのつながりは、数々のリアルなプロジェクトに発展してきた。

京都や台湾での合宿はそれぞれ新たな拠点のお披露目もかねていたし、「株式会社飛騨の森で熊は踊る(通称:ヒダクマ)」設立のきっかけになったのは、2013年の合宿地・多摩だった。森の再生を目指す「株式会社トビムシ」と出会い、私は森の豊かさや、東京とは違う飛騨の文化にふれ「ぜひ携わりたい」と思うようになった。それから2年後、実際のプロジェクトが実を結んだのだ。

また、人との不思議なご縁も広がっている。2012年に訪れた小豆島でコーディネートしてくれた女性は、6年のときを経て、ヒダクマを支える仲間になってくれた。

合宿は、決して点で終わらない。その後のロフトワークの活動にゆるやかにつながり、それぞれが現在を編む糸の大切な1本になっている。

2013年、東京都奥多摩町での合宿。このときの林業や人々の出会いがのちのヒダクマ事業につながっていった。>レポート

2019年の合宿地は「別府」

そして今年も、また合宿の季節がやってきた。2019年の合宿地は、大分県・別府。実はひそかに、「次にロフトワークの拠点をつくるなら別府かな?」と思っていたりもする(笑)

全員が全力で取り組むプログラムも、「その後」の展開もワクワクするけれど、何より私が楽しみにしているのは、社員が一同に集まって盛大に行われる大宴会だったりもする。

「プレゼン終わったー!」「飲も飲も〜」「いただきます!」

これから先どんなにメンバーが増えたとしても、この大宴会の楽しみはゆずりたくない!

2018年の長野県諏訪市合宿での大宴会の様子。『101人の表現のひき出し』をテーマに開催した。>レポート

林 千晶

Author林 千晶(ロフトワーク共同創業者・相談役/株式会社Q0 代表取締役社長/株式会社 飛騨の森でクマは踊る 取締役会長)

早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒。花王を経て、2000年に株式会社ロフトワークを起業、2022年まで代表取締役・会長を務める。退任後、「地方と都市の新たな関係性をつくる」ことを目的とし、2022年9月9日に株式会社Q0を設立。秋田・富山などの地域を拠点において、地元企業や創造的なリーダーとのコラボレーションやプロジェクトを企画・実装し、時代を代表するような「継承される地域」のデザインの創造を目指す。主な経歴に、グッドデザイン賞審査委員、経済産業省 産業構造審議会、「産業競争力とデザインを考える研究会」など。森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す、株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称:ヒダクマ)取締役会長も務める。

Profile

Keywords

Next Contents

出雲路本制作所と考える、
ショップ・イン・ショップという
場の仕組みで“ずらす”ことの価値